10月第1週(9/30〜10/6)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「9月日銀短観、中小企業は悪化」 |
その他のテーマ: | 「小麦値上げ家計にジワリ」 |
「サブプライム問題、欧米の銀行、証券を直撃」 | |
「郵政・日通事業統合、宅配便3強時代」 |
(1) 小麦値上げ家計にジワリ(10/1) **
政府は10月から、製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を10%引き上げる。このため、製品の希望小売価格の値上げを決める食品メーカーが相次いでいる。小麦の世界的な需給は今後も逼迫する見込みで、家計にも影響が広がりそうだ。
小麦価格の上昇は、中国などの新興市場国の経済成長で、需要が急増していることが大きな要因だ。また、石油代替燃料としてトウモロコシなどから作るバイオエタノールが注目を集め、世界では小麦からトウモロコシに作付け転換する動きも活発になっている。小麦の輸出国の豪州で干ばつが起き、不作となっていることも価格を押し上げている。世界有数の穀物市場であるシカゴ商品取引所では、9月末の小麦の国際価格が1年前の2倍以上となっている。
日本は、小麦需要量の約9割を輸入小麦に依存する。輸入小麦は、商社を通じ政府が国際価格で全量を買い取っている。これまで、政府は、国内農家への助成金の財源分を上乗せした売り渡し価格を年末に決め、1年間同じ価格で製粉会社に売っていた。売り渡し価格が同じまま国際価格が急騰すると、助成金の財源が目減りする。このため、国際価格に柔軟に対応できるようにした。
食品価格の値上げは、多くは17年ぶりだ。食品メーカーによる値上げについては、農水省も、小麦価格の高騰を考えると合理的な範囲と容認する。
小麦の需給は、世界的に今後も逼迫する可能性が高い。新興市場国の需要増と供給量不足は、今後も続くと見られる。小麦の値上がりがさらに続けば、国内でも家計への影響が無視できなくなる。
(1)9月日銀短観、中小企業は悪化(10/2) ***
日本銀行が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(9月短観)は、大企業と中小企業の景況感格差が一段と広がっている現状を示した。大企業は景気の底堅さを感じる一方、中小企業は円高や原料価格の高騰などで経営マインドは改善していない。二極化する大企業と中小企業であるが、先行きについてはともに警戒感を強め、経営者の不安感はジワリと拡大しており、日銀の早期利上げシナリオは一段と後退しつつある。
今回の短観は、サブプライムローン問題や、これに伴う円高や株安が経営者の心理にどう影響を及ぼすか注目されていた。景気が良いと答えた企業の割合(%)から悪いと答えた企業の割合を引いて算出し、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業・製造業がプラス23と6月の調査と同水準で、DIの数値自体はバブル期以来の高水準を維持しており、サブプライム問題の影響は現状では、限定的だったといえる。大企業の景況感を支えているのは、アジアや欧州向けを中心とする輸出の好調さだ。そして、8月の鉱工業生産指数は過去最高を更新し、9月短観でも大企業の設備投資は計画が造成基調にあることが確認されている。輸出増→生産増→設備投資増という企業部門の好循環が続いていることをうかがわせる。
しかし、9月短観は、中小企業の立ち遅れも示した。業況判断は、製造業、非製造業とも従来以上に悪化し、07年度の経常利益計画はともに減益見通しだ。原油高などの原材料価格の高騰で、仕入れ価格は上昇しているのに、販売価格に転嫁できないため収益環境が悪化していることが要因だ。
大企業にしても、先行き懸念は高まっている。大企業・製造業の3ヵ月後の業況判断指数は、19と現状より4ポイント低かった。サブプライム問題の影響がどこまで拡大するかが重くのしかかっている模様だ。国内消費も力強さを欠いている。
日銀は、10〜11日の金融政策決定会合で再び利上げの是非を検討するが、世界経済の不確実性が高まっている状況が変わらない限り、追加利上げに踏み切ることは困難な情勢といえそうだ。
業況判断(DI) | |||
大企業 製造業 | 23 | (0) | |
非製造業 | 20 | (−2) | |
中小企業 製造業 | 1 | (−5) | |
非製造業 | −10 | (−3) | |
(カッコ内は、6月調査との比較) |
(1)サブプライム問題、欧米の銀行、証券を直撃(10/5) ***
欧米の大手銀行、証券会社が相次ぎ四半期決算の減益、赤字転落を発表し、サブプライムローンの焦げ付き問題がもたらした金融機関への影響が表面化し始めた。保有する証券化商品の損失が膨らんだことが大きな原因で、各社は事業の縮小や人員削減など合理化を始めた。傘下の投資ファンドや運用会社に新たな損失が出る懸念もあり、経営はこれから正念場である。
アメリカの銀行の最大手のシティグループは、7〜9月期決算の純利益が前年同期より6割減る見通しである。アメリカ大手証券でも、傘下のヘッジファンドが破綻したベア・スターンズの6〜8月期の純利益が同6割減となるなど、3社が減益決算を発表した。9月末には、サブプライムローンを手がけていた総資産25億ドルのネットバンクが会社更生法手続きの適用を申請し、アメリカでは14年ぶりの大きな金融破たんとなった。
欧州でも、スイスの大手金融UBSが、7〜9月期の税引き前利益が最大8億スイス・フラン(約790億円)の赤字に陥ると発表し、経営幹部が辞任に追い込まれた。
各社の業績悪化は、サブプライム債権を組み込んで高利回りを追求した債務担保証券(CDO)などの証券化商品を、自ら作ったり買ったりして保有し、多額の評価損を抱えたために起きた。格付け会社が、CDOなどの格付けを一斉に引き下げたことが響いた。損失覚悟で売却したくても買い手がつかず、傘下の投資ファンドなどに大量のCDOが塩漬けされている欧米の銀行や証券会社は多いと見られる。
アメリカのサブプライムローンは、一般に、最初の2年程度は金利を5〜6%と低く設定し、それ以降は一気に年7〜15%程度に跳ね上がる。アメリカのメディアによると、10月に金利が上昇するサブプライムローンの残高は、過去最高の318億ドルで、高金利で返済が苦しくなる人が増えると見られている。来年にかけ焦げ付きがさらに増えると、バーナンキFRB議長が見るのも、このためだ。サブプライム問題に伴う損失が、最大2,000億ドルに達する可能性があるとする試算もあるが、ローンの焦げ付きが拡大すれば、損失がさらに膨らむ可能性もある。
(1)郵政・日通事業統合、宅配便3強時代(10/6) **
日本郵政公社(シェア)8.4%)と日本通運(同10.7%)が、宅配便事業で統合したことにより、宅配便市場は、1位のヤマト運輸(同36.6%)、2位の佐川急便(同32.4%)を含めた3社で約9割のシェアを占める3強時代に突入する。人口減社会を迎え、経営環境は厳しくなることが予想され、顧客争奪戦が更なる再編を呼ぶ可能性もある。
日本郵政のゆうパックを含む郵便小包の06年の営業利益は、前年度比74%減の18億円と2年連続で悪化した。そして、日本郵政の郵便事業は、民営化後も全国一律のユニバーサルサービスを義務付けられ、拠点の統廃合には限界がある。加えて、政府が民営化の過程で掲げた雇用の確保という原則があり、人員削減も困難だ。打開策は、同業他社との統合しかなかった。日通とは、以前から提携を結んでいた。
一方、日通の宅配便は、06年度の取り扱い個数が微増したが、売上高は減少し、このままではジリ貧になる可能性があった。日通の川合社長は、「走る車両が一台で済む。経費削減効果は、相当なもの」と期待する。自社のブランドのペリカン便を日本郵政に事実上取り込まれる形になることについては、総会で重要議案を否決できる3分の1超の議決権を握り、一定のコントロール下に置く意向を示した。
国土交通省によると、宅配便・一般小包の取り扱い個数の伸びは、01年度以降に鈍化が顕著になり、06年度は1.0%まで落ちた。市場が成熟する中、宅配便は、物量が増えるほどサービスの品質が上がる事業となっている。3強時代の到来で、地方や中傷の会社は、上位3社のどこかと組むしかないとの見方も出ている。業界の勢力図が、さらに流動化する可能性もある。