9月第5週(9/23〜9/29) メインテーマ:「中国発、インフレの懸念」(最高3つの*)
その他のテーマ:「生き残りをかけた資本提携」
(1)生き残りをかけた資本提携(9/23) **
電機業界や家電量販店で、再編の動きが加速してきた。シャープとパイオニア、ビックカメラとベスト電器がそれぞれ、資本・業務提携することで合意した。流通、食品、薬品業界などでも、同様の動きが相次いでいる。各社のトップは、大再編時代を乗り切る手腕を問われることになる。
銀行業界は、3メガバンクを中心に再編された。海運、航空、鉄鋼業界なども、2〜3グループに集約された。
このような流れから外れ、多くの企業が乱立する業界では、再編が待ったなしだといわれ続けてきた。電機業界はその典型で、再編の動きがようやく本格化してきた。口火を切ったのは、7月の日本ビクターとケンウッドの経営統合だ。デジタル化に遅れたビクターを、中堅ながら音響製品で定評のあるケンウッドが事実上、飲み込む形となった。この統合がパイオニアの背中を押したようだ。パイオニアはプラズマテレビに社運をかけたが、他社との競争に押され業績不振に陥っていた。今回の提携で、中小型液晶テレビに参入し巻き返しを図る。シャープにとっても、液晶パネルの販路が拡大し、パイオニアの持つカーナビゲーションの分野での技術を導入できるメリットがある。
電機業界では、三洋電機が半導体や携帯電話事業の売却を進めたり、ソニーが半導体事業の売却で東芝と交渉を進めるなど、得意分野に特化する傾向も顕著だ。
家電量販店5位のビックカメラと7位のベスト電器の提携は、最大手のヤマダ電機を強く意識してのことだ。他社よりも少しでも安く販売するには、大量に仕入れて原価を安くしなければならない。会社の規模がものをいうのがこの業界だ。ビックは、すでに業界2位のエディオンと資本提携している。ベストを加えた3社で、ガリバーのヤマダに体力勝負を挑もうというわけだ。一方、ヤマダはベスト株を買い増す方針といわれ、事態は混沌としてきた。
こうなると、3位のヨドバシカメラと4位のコジマなども、傍観していられない。中堅企業を巻き込んだ次の再編が起きるのは必至だろう。
(1)中国発、インフレの懸念(9/23) ***
中国で、物価が大幅に上昇している。8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、食品などの高騰を主因に、前年同月比6.5%と、96年12月以来の高水準に達した。
人件費上昇や元切り上げを通じ、輸出品にも値上げの動きが広がる。数年前まで安価な製品により、世界にデフレを輸出していると評された中国だが、一転して中国のインフレが心配される事態となってきた。
2006年には前年比で1.5%と落ち着いていたCPIの上昇率は、今年3月に前年同月比3.3%と政府の年間目標(3.0%以内)を超え、8月には6.5%に加速した。上昇の原因は、食品だ。8月の食品価格は前年同月比18.2%も上昇し、中でも肉類は、49.0%と突出している。原因は、穀物相場の値上がりだ。原油価格が高止まりした結果、とうもろこしなどを原料とする石油代替エネルギーのバイオエタノール燃料の利用が進み、世界で穀物価格が高騰した。これが、家畜の飼料や食用油の価格を押し上げた。経済成長で原油高騰の原因を作った中国にとり、思わぬしっぺ返しが来た格好だ。
中国人民銀行は、上半期の「貨幣政策執行報告」で、インフレの本格化に強い警戒感を示している。
物価上昇のもう一つの原因が人件費の上昇だ。中国平均の人件費は06年に年間2万1,001元と、前年比14.4%も上昇した。収入が増え、消費が増えた結果、個人消費は1〜6月に前年同期比15.4%も伸びた。強い需要が物価上昇の下地を作っている。
輸出価格も上昇している。人民元の対ドルレートは、05年7月の切り上げ以前に比べ、2年余りで約9.5%上昇した。輸出企業にとり、人件費は毎年10%上がり、元高は進み、値上げせざるを得ない。野村金融経済研究所の試算では、5月の中国から日本への輸出価格は、平均で対前年同月比9.8%上昇した。中国国内の物価上昇や優遇税制の撤廃など、今後も価格高騰要因は多く、日本にインフレ圧力をかける可能性もある。