9月第4週(9/16〜9/22):メインテーマ「郵政民営化10・1スタート」(最高3つの*)
その他のテーマ: | 「マイクロソフト、抱合せ販売で敗訴」 |
「動き出す民営郵政」 | |
「民営郵政、民業と摩擦」 | |
「基準地価、商業地16年ぶり上昇」 |
(1)マイクロソフト、抱合せ販売で敗訴(9/18) **
ソフトウェア世界最大手のマイクロソフトが、抱合せ販売を巡る欧州での訴訟で敗訴し、今後の戦略に微妙な修正を迫られる可能性が出てきた。一方、ほぼ全面的に主張を認められた欧州委員会の影響力は大きくなりそうだ。
マイクロソフトの年間売上高は500億ドルで、4億9,720万ユーロという制裁金額そのものは、大きな経営負担とはいえない。しかし、グーグルやアップルとの激しい競争に直面し、OSに他のソフトの機能を組み合わせたことが独禁法違反とされたことは、圧倒的シェアのOSを土台に事業拡張を図るビジネスモデルに足かせとなりかねない。
欧州第一審裁判所の判断には、日本の公正取引委員会も注目していた。公取委は、04年7月にマクロソフトに不公正な取引方法で排除勧告を行っている。マイクロソフトは、日本のパソコンメーカーとOSの使用許諾契約を結ぶ際に、特許権侵害で自社を訴えないと制約させる条項を盛り込んでいた。マイクロソフトは勧告を拒否し、現在は公取委の審判中だ。
日本企業を含む他のグローバル企業にとり、欧州市場での戦略を練る際、欧州委の意向が今後ますます重要性を増すことになりそうだ。
(2)郵政民営化10・1スタート(9/18) ***
郵便局の投信の販売累計額は、8月末1兆500億円を超えた。販売開始以来、2年も経たずに、地方銀行トップの横浜銀行の約2倍に達した。郵政公社が抱える全国の郵便局は、2万4,523ある。このうち、1,552局・店舗が投信の販売拠点となっている。これは、三菱東京UFJ銀行の約2倍の規模になる。
投信は元本割れの危険がある商品だ。現に、郵便局で扱っている16本の投信のうち、9本は元本割れをしている。それでも販売が好調なのは、答申に政府保証があると思い込んでいる人もいることが背景にあるという。郵便局に対するこれまでの絶大な信頼こそ、暗黙の政府保証につながるともいえる。
民営化後は、一部の例外を除き、郵便貯金や簡易保険などに政府の払い戻し保証はつかない。しかし、政府の出資が残る間は、利用者が国の後ろ盾を感じて信頼を寄せるのではないかといえる。金融界には、民業圧迫との不満が渦巻く。政府出資のある間は新しい業務はやめてほしいと、地銀側は要望している。
郵貯銀行の貯金量は187兆円、かんぽ生命保険の総資産は112兆円でともに日本最大だ。一方、郵便局会社、郵便事業会社は、公益事業として全国津々浦々まで同水準のサービスを維持するように義務付けられた。さまざまな課題を抱えたまま、10月1日、民営郵政が動き出す。
(3)動き出す民営郵政(9/19) ***
渋谷の代々木郵便局で、局を真っ二つに分ける間仕切りが完成した。一方がゆうちょ銀行の直営店舗、他方が郵便局会社が運営する郵便局だ。銀行直営店舗は、投資信託などの金融商品を販売し、貯金の受け入れをする。一方の郵便局は、かんぽ生命保険や郵便事業会社から、簡易保険の販売や郵便窓口業務を受託する。
日本郵政の強みは、全国に約2万4000ある日本最大の拠点網だ。その窓口業務を担う郵便局会社は、他の3社からの業務受諾で発生する手数料収入が最大の収益源となる。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、2010年度、遅くとも11年度に上場を企画している。郵便局会社は、全国で均質なサービスを提供する義務を負い、局の維持などにかかる経費は高止まりが予想される。上場により、今後兄弟会社からの手数料が大幅に減少すれば、経営が行き詰まる可能性が高まる。民営化を機に、金融2社は経済合理性に基づく経営を最優先することになる。公益性を重んじる局会社はジリ貧になる傾向にある。さらに、郵便局は、一昔前の繁華街にあることが多く集客力に問題がある。金融2社は自前の直営店を構えたいと考えるだろう。
JR東京駅前に、5階建ての東京中央郵便局がある。郵政公社は、これを地上37階建ての高層ビルに建て替え、テナントの賃料収入を得る計画を進める。郵政公社から引き継ぐ不動産は3兆円で、これまでのように寝かせておくわけにはいかない。好立地の郵便局は、いずれも郵便局会社の所有資産として引き継がれることになった。そうでもしなければ、郵便局会社は慢性的な赤字体質になる恐れがある。
郵便局会社の経営安定は、所有資産の活用と、外部からの業務受託の活用にかかっている。
(4)民営郵政、民業と摩擦(9/22) ***
東京株式市場の21日の終値で、一部上場企業の株式時価総額は497兆円だ。一方、発足時のゆうちょ銀行の貯金量は187兆円、かんぽ生命保険の総資産は112兆円、合わせて約300兆円に上る。額だけを見れば、一部上場企業の全体の約60%の議決権を保有することができる規模だ。
ゆうちょ銀行は、新規事業として住宅ローン市場への参入を要望している。郵政グループにとっては、扱い額が大きいメガバンクと組む方が多くの手数料収入を見込める。一方、メガバンクは地方の店舗網が手薄で、郵便局を販売拠点として使う利点は大きい。民営郵政を、自行の商品を広く売り込む好機ととらえたとしても不思議はない。
ゆうちょ銀行の向かう先は住宅ローンやクレジットカード業務にとどまりそうもない。同行の新規業務を審査する郵政民営化委員会の田中直毅委員長は、3〜4年目の上場を目指すからには、収益基盤が必要であるとして、一定の条件の下に認めていく姿勢だ。
19日、日本銀行が利上げを見送った。金利が上昇に向かう局面をどの金融機関よりも恐れているのは、ゆうちょ銀行かもしれない。ゆうちょ銀行は、貯金量の約6割に当たる143兆円を国債で運用している。国債発行残高671兆円の2割を超える。金利が上昇すれば、貯金の金利も上昇する。一方、国債は満期所有のため受け取る金利は決まっている。預貸の利ざや縮小が、収益を直撃する恐れがある。
普通の銀行の運用担当部門は、金融商品を組み合わせることにより、損失を回避しつつ利回りの最大化を図る。民営化委員会はゆうちょ銀行の運用手法について多様化する方向を示しているが、具体論はこれからだ。ゆうちょ銀行も、保有資産に目を向ければ意外なほどの弱さが浮かび上がる。
(1)基準地価、商業地16年ぶり上昇(9/20) ***
国土交通省は、07年の基準地価(7月1日現在)を発表した。景気回復を受け、商業地全国平均は0.1%上昇し、バブル期の91年以来16年ぶりに上昇した。住宅地は16年連続で下落したものの、下落率は4年連続で縮小し0.7%とほぼ横ばいになった。3大都市圏の地価は2年連続で上昇し、福岡、札幌、仙台市の商業地は平均上昇率が10%を超えるなど、大都市から地方へ地価上昇が波及していることも確認された。
3大都市圏の上昇率は、住宅地で4.0%、商業地が10.4%で、昨年より上昇率は加速した。景気回復に伴うオフィス、マンション需要の増大や不動産投資の活発化が地価を押し上げた。
都道府県別の平均では、商業地で上昇したのは昨年の7都府県から12都府県に広がった。上昇率の上位10地点は名古屋市と福岡市が独占し、名古屋駅近くでは上昇率が40%を超える地点もあった。住宅地でも、昨年の東京、愛知に加え、新たに埼玉や千葉、大阪など8府県が上昇に転じ、10都府県が上昇に転じた。
地方圏では、一部の主要都市以外では過疎などを背景に下落に歯止めがかかっていない。地方での二極化も進んでいる。
住宅地 | 商業地 | |
全国平均 | −0.7% | 1.0% |
3大都市圏 | 4.0% | 10.4% |
地方圏 | −2.3% | −2.6% |