10月第4週(10/21〜10/27)(最高3つの*)

メインテーマ: 中国景気過熱収まらず」
その他のテーマ: 「買収で大もうけ許すな」
「国内金融機関、サブプライム損失相次ぐ」
「人民元先高感強まる」
「G7、政府系ファンド規制検討」

[M&A]

(1)「買収で大もうけ」許すな(10/22) **

 買収防衛策を導入していない企業が、敵対的買収者が現れて以降に導入・発動する事後型の防衛策のあり方について、企業の合併・買収(M&A)ルール作りを考える経済産業省の企業価値研究会が、今月末から検討を始める。既に運用の指針が定まっている「事前警告型」に対し、「事後型」のルールは明確ではなく、発動事例となったブルドックソースの防衛策には問題点も指摘されている。このケースを前例としないためにも、ルール作りを急ぐ考えだ。

 ブルドッグのケースでは、スティールの株式公開買い付け(TOB)に対抗するため、株主に新株予約権を交付し、スティール以外の株主には新株との交換に応じることで、スティールの持ち株比率を引き下げる仕組みだ。しかし、この際にブルドッグはスティールに交付した新株予約権を約21億円で買い取っており、スティールはTOB自体は失敗したものの、一定の経済的利益を得ることになった。このため、TOBが失敗しても利益が得られるならば、TOBのかけ得となるとの批判も出ていた。

 一方、ブルドッグが防衛策の導入を、株主総会で出席者の3分の2の同意が必要な特別決議で決めたことにも疑問が出ている。事前警告型の防衛策の指針では、過半数の賛成で意思を確認する普通決議を求めている。経産省は、事後型でも特別決議は必要はなく、過半数の賛成でよいという認識だ。欧米では、このような区別はない。特別決議の導入が主流になってしまうと、発動時に株主の同意を得るために、企業間の株式の持合を進めるなど、株式市場に悪影響を及ぼす可能性があると見ているためである。

 日本では、買収防衛策の導入済み企業は現在、上場企業の約1割に当たる約390社にとどまっている。経産省では、事前と事後で導入・発動の手続きがどう違うべきなのか、合意作りに取り組みたいとしており、新たな指針作りも視野に入れている。


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[金融市場]

(1)国内金融機関、サブプライム損失相次ぐ(10/27) ***

 サブプライムローン焦げ付き問題に関連し、日本の金融機関や機関投資家が抱える損失が相次ぎ表面化した。三井住友フィナンシャルグループは関連の投融資で約320億円、農林中央金庫は400億円、みずほ証券が260億円の損失を抱え、業績への影響も出ている。

 三井住友フィナンシャルグループは、本業の収益は好調であったが、こうした損失を反映して、07年9月中間期の連結業績予想を下方修正した。経常利益は当初見込みの4,000億円から3,530億円に、税引き後利益は2,200億円から1,700億円になる。農林中央金庫は、9月末現在で400億円前後の含み損を抱えているが、その他の収益が好調なため、通期の業績予想は変えない方針だ。


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[中国経済]

(1)人民元、先高感強まる(10/25) ***

 24日の上海外国為替市場の人民元相場は、1ドル=7.4926元で終了し、05年の人民元利上げ後、初めて7.4元台となった。人民元の為替レートは、05年7月に約2%切り上げられた後、累計で8%あまり上昇している。

 19日に開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の共同声明で、「人民元レート上昇を加速させることが必要」と名指しで指摘されるなど、元切り上げの国際的な圧力が強まっていた。市場では、この日の上昇をG7声明に応えたものと受け止められている。市場では、国家発展改革委員会が15〜20%に人民元切り上げを提案したという未確認情報も流れ、元の先高感が強まっている。


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(2)中国景気、過熱収まらず(10/26) ***

 中国の7〜9月期の国内総生産(GDP)は、伸び率が前年同期比11.5%と高い水準が続いた。当局による再三の金融引き締め策にかかわらず、依然加熱傾向が続いている。持続可能な発展に向け、中国政府は今後も難しい舵取りが迫られる。

 中国は、今年、銀行からの貸し出し、固定資産投資、貿易黒字を景気過熱につながる「三つの過剰」と位置づけた。最初の二つを抑制するため、今年に入り金利を5回、預金準備率を8回にわたり引き上げた。しかし、1〜9月の固定資産投資は前年同期比25.7%増と、旺盛な伸びが続いている。貿易黒字対策でも、輸出企業への優遇措置の撤廃などを打ち出しているが、1〜9月の貿易黒字は前年同期比で7割近い伸びを示している。

 一部では、資産バブルといえる現象も表れている。今年1〜9月のマンションの値上がり率は北京で10.1%となった。上海株式市場では、総合指数が年初に比べ2倍、2年前に比べ5倍に達した。投機目的の需要も不動産価格を押し上げている。資産バブルの原因は、輸出で大量のマネーが流れ込み、金余り現象となっていることだ。これが、不動産や株のほか、銀行貸し出しを通じて固定資産投資にも流れる。投資が中国の生産能力を増強させ、輸出がさらに拡大するという悪循環が続いている。

 党大会でも、投資・輸出牽引型の成長から、消費・投資・輸出牽引型にしていくとの方針が示された。しかし、個人消費の伸び率は1〜9月で15.9%と、固定資産投資の伸び率25.7%を下回る。設備投資で増える生産能力の受け皿には力不足だ。


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[世界経済]

(1)G7、政府系ファンド規制検討(10/21) ***

 ワシントンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、サブプライムローン問題を始め、中国・人民元の為替レートや、世界で存在感を増す政府系投資ファンド(SWF)のあり方など幅広い課題に取り組む姿勢を示した。週明け以降の金融市場の反応が注目される。

 G7は、豊富な資金で先進国への投資を進める産油国や新興国などのSWFについて、国際通貨基金と世界銀行、経済協力開発機構に規制のあり方などなどの検討を求めていくことで一致した。一方、中国やアラブ首長国連邦などSWFの運用国は、透明性の向上は大事だが民間ファンドと政府系を差別すべきではないとけん制した。

 アメリカ財務省の推計によると、産油国や新興国の政府が運用するSWFの運用総額は、1.5〜2.5兆ドルに及ぶ。約10年後には10兆ドルを超える見通しだ。企業などの買収も次々と仕掛けており、先進国では、自国企業が外国政府の支配下におかれることを警戒する声が強い。ただ、SWFは、中長期の投資を基本としており、投資先は株式が中心と見られ、市場の安定化に貢献しているとも指摘されている。

 ここに来てSWF脅威論が浮上したのは、アメリカの大統領選を控え、アメリカでは保護主義的な動きが活発化しており、現政権がSWFを標的にすることで支持を集めようとしているとの見方だ。このため、SWFの規制については各国とも一枚岩ではない。


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