10月第2週(10/7〜10/13)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「NY原油90ドル台、投機マネーが流入」 |
その他のテーマ: | 「独禁法改正基本方針、不当表示にも課徴金」 |
「社会保障費、給付と負担の現状維持困難」 | |
「サブプライム基金合意、金融市場正常化急ぐ」 |
(1)独禁法改正基本方針、不当表示にも課徴金(10/17) **
公正取引委員会は、来年の通常国会での法案提出を目指す独占禁止法の改正の基本方針を公表した。虚偽広告などの「不当表示」や、大企業が下請けに対して行う「優越的地位の乱用」を、新たに課徴金の対象とするのが大きな柱だ。一方、公取委による行政処分への不服を審判する制度への経済界からの反発も出ている。
独禁法が現在課徴金を課しているのは、カルテル、入札談合、株式取得や役員派遣により支配する支配型私的独占だけである。今回の改正では、不当な安売りにより他の事業者を排除したり、新規参入を妨害する排除型私的独占も対象に加える。また、不当表示も多発しているため新たに対象とする。優越的地位の乱用も、中小企業の経営を圧迫しているケースが目立つため対象に加える方針だ。
課徴金に関しては、違反行為を主導した事業者には、課徴金が加算できる制度を新設する。一方で、談合などの情報を自己申告した事業者に対する減額措置を拡充する。これまで3社に減額していたが、これを5〜6社程度に拡充する。これにより、違反行為の情報提供を促す。
改正をめぐる争点は、審判制度だ。これは、公取委が違反として出す排除措置命令などの処分を出したことについて、事業者が不服を申し立てた場合、公取委自身が審判を行う制度だ。公取委が取り締まりと裁判の両方を行うため、公正性を欠くとの批判が根強い。審査も審判も同じ組織がするのは国外では例がなく、現行の審判制度に理解を得るのは難しそうだ。
(1)社会保障費、給付と負担の現状維持困難(10/18) ***
内閣府が経済財政諮問会議に示した年金、医療、介護の社会保障3分野の将来試算で、高齢者への給付と現役世代の負担の両方を、現在の水準のまま維持できないことが明白になった。諮問会議は、社会保障制度のあり方と税制改革の議論を加速させ、財政再建路線を堅持したい考えだ。
少子高齢化の加速で、2025年の高齢者は現在より700万人増える一方、支え手の現役世代は900万人減る。給付水準を維持した場合、2025年度の国民全体の負担増は11〜12兆円程度になる。財政健全化のための利払い負担などを含めると、最大29兆円程度の増税が必要で、消費税率に換算すると12%の引き上げが必要になる。現役世代の1人当たり負担額は08年度より3割多くなる。
一方、現役世代の負担水準を維持した場合、高齢者1人に対する給付水準は医療費が2割強、介護費が4割強も削減される。給付が削減されれば、患者負担が増えるため高齢者の反発は必死だ。しかし、高齢者の痛みを伴う制度の見直しには、政府・与党とも抵抗が強い。来年4月に実施が決まっていた高齢者の医療費負担増は、与党が凍結する方針を固めている。
諮問会議が社会保障制度を取り上げるのは、将来の給付と負担の水準が決まっていないと、消費税を含めた税体系の抜本的改革の議論が進まないためだ。
(1)「サブプライム基金」合意、金融市場正常化急ぐ(10/17) ***
シティグループなどアメリカ大手銀行3行は、サブプライムローンにより損失が出た証券化商品を買い取るため、米財務省主導で機関投資家救済のための基金を創設することで合意した。その規模は、800億〜1,000億ドルとされ、日本の不良債権処理の公的資金にも匹敵する。ただ、基金の規模は足りないとの見方もあり、株式市場が発表後反落するなど、市場にも懐疑的な見方が残る。
基金は、短期証券を発行して、参加銀行から最大1,000億ドルを調達する。この資金で、金融機関の傘下の投資会社が所有する住宅ローン担保証券(RMBS)などの証券化商品を買い取る仕組みだ。買い取った後は、償還期限まで持ち続けるか、市況が回復するのを待って売却する。
米金融界が巨額の基金を拠出する背景には、金融市場の混乱を放置しては、世界経済に一層の悪影響を及ぼしかねないとの強い危機感がある。
ただ、投資家の自己責任を不問にしないため、買い取りの対象は格付けがよく、信用力が比較的高い証券に限られる。大きな損失を抱えた証券などは、親銀行などが自力で処理しなければならない。しかし、世界中の投資会社が抱える証券化商品は計4,000億ドルに達し、基金の規模が足りないとの指摘が出ている。
(1)NY原油90ドル台、投機マネーが流入(10/20) ***
19日のニューヨーク原油先物市場の時間外取引で、国際的な指標であるテキサス産軽質油(WTI)の価格が、一時1バレル=90.07ドルの史上最高値を記録し、前日に続き90ドルを突破した。1バレル=80ドルをつけてからわずか1ヶ月余りである。1ドル=100ドル時代の到来も現実味を帯びてきた。原油価格が急上昇している要因と今後の影響を探った。
70ドルから80ドルへと上がるのに約1年5ヶ月かかったのに比べ、上昇ペースは異常に早い。背景には、投機筋がサブプライムローン問題による金融市場の混乱を嫌い、資金を金融市場から原油市場に移している事情がある。米商品先物取引委員会(CFTC)の統計によると、アメリカの原油先物市場で投機筋が10月9日までの1週間に結んだ買い越し残高は、8月28日までの1週間の2.75倍に相当する約6万9,190枚(1枚=1,000バレル)に膨らんだ。利下げでドル安が進んでいることも原油市場へのマネー流入を促している。欧州経由で運用される中東のオイルマネーを含め、ユーロ圏の投資家にとり、ドル建て取引の原油先物は割安感が出ている。加えて、トルコがイラクのクルド人武装勢力を越境攻撃する可能性が出るなど中東情勢の緊迫化も重なり、原油高に歯止めがかからない。
国際エネルギー機関(IEA)は、07,08年とも世界の石油需要が前年実績を上回ると予想している。石油輸出国機構(OPEC)がどこまで増産に動くか不透明な中で、中期的な需給が逼迫気味で推移すると見られることも、原油高の背景にある。