11月第4週(11/18〜11/24)(最高3つの*)
メインテーマ: | 「大手銀行減益、成長戦略誤算続き」」 |
その他のテーマ: | 「地方分権改革をどうするか」 |
「金融危機10年、教訓を生かせ」 | |
「WTO年内妥結を断念」 | |
「温暖化対策に賛成したOPEC首脳会議」 | |
「EU競争法違反、ソニーなど罰金120億円」 |
(1)大手銀行減益、成長戦略誤算続き(11/22) ***
大手銀行の07年9月中間期は、連結税引き後利益が6グループすべてで大幅減益となった。サブプライムローン問題や改正貸金業法の影響で、各行が力を入れる証券・ノンバンク戦略で大きくつまずいた。
決算発表の記者会見に臨んだ銀行トップは、次々と見通しの甘さを口にした。サブプライム関連商品の格下げが相次ぎ、取引がほとんどなくなった。買い手不在の中で、関連商品の価格が暴落し、想定以上に損失が拡大した。一方、これは、株価下落を通じても銀行に打撃を与えた。今年3月末から9月にかけ、日経平均株価は約500円下がり、大手銀行の保有株式の含み益は約1兆1,800億円吹き飛んだ。来年3月末までに、株価が反転しなければ、含み益はさらに縮小していく。株価下落で、手数料収入の柱である投資信託の販売も鈍った。三菱UFJフィナンシャルグループで10月の販売額は、前年の7割程度、みずほで8割程度にとどまった。
市場の混乱で日本銀行の利上げが遅れ、貸出金利が上がらない。競争が激しく、利ざやが縮小したのも誤算だった。M&A仲介業務を行う投資銀行業務は、メガバンク体制を強化している主要分野だ。しかし、みずほグループでは投資銀行業務を担うみずほ証券は、サブプライム問題により下期だけで1,000億円の追加損失を見込む羽目になった。
各行が個人向け事業の柱と位置づける消費者金融や信販・クレジットカードなどノンバンクも収益の足を引っ張った。三菱UFJの連結税引き後利益は、前年同期のほぼ半分である。傘下の三菱UFJニコスが、1,100億円を超える大幅赤字になったことが響いた。上限金利の引き下げなどを盛り込んだ改正貸金業法が昨年12月に成立し、経営環境が厳しくなったことが最大の要因だ。
海外向け貸出は、各行とも好調だ。しかし、国内の貸し出しは伸び悩み、中小企業向け融資は、上半期だけで6グループ合計で2兆円前後も落ち込んだ。建築基準法の改正で、住宅着工は大幅に減り、収益性が高い住宅ローンは今後減っていく公算が大きい。
(1)地方分権改革をどうするか(11/20) **
地方分権改革推進委員会が、「中間的なとりまとめ」を決定した。医療、道路など17分野で、国と地方の役割を抜本的に見直すことが柱だ。来春以降に順次、具体的な勧告を行う。
地方分権は推進すべきで、自治体が大きな権限を手にして、行政に創意工夫を凝らせば、国の財政のばらまきに頼らずに、地域を活性化できるであろう。たとえば、一般国道は、現在4割の指定区間を国が、残りの区間を都道府県と政令指定都市が別々に管理している。推進委員会は、指定区間の維持・管理は都道府県などが行い、国の事務所や人員、財源などを地方に移譲するよう提言した。一本の道路は、本来同じ管理主体であることが望ましい。国と都道府県が管理する1級河川は、一つの県内だけを流れる場合は県が一元管理する。全国一律の診療報酬の決定には、地域医療の実態に応じて都道府県の意見を反映する仕組みを構築する。 こうした提言には、一定の合理性がある。しかし、権限を奪われる霞ヶ関の中央官庁は、反対している。実現には、福田首相らの政治力がカギとなる。
短期職業訓練では、独立行政法人「雇用・能力開発機構」と都道府県の重複が指摘された。地方に任せていい事務だろう。これは、独立法人改革との連携が必要だ。
公営住宅の「1戸の床面積は原則、19〜80平方メートル」、「59歳以下の入居には同居親族が必要」といった全国統一基準の義務付けを緩和すれば、地方の判断で弾力的な運用が可能となる。都市計画など国との協議が不要になれば、自治体の施策がより迅速に実施できる。
自治体の自由度を拡大するため、義務付けを総点検し、縮小・廃止する方向は基本的に正しい。作業は多いが、前向きに取り組むべきだ。
(1)WTO年内妥結を断念(11/24) ***
世界貿易機関(WTO)のラミー事務局長は、新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)について、「年末までに交渉の進展や公式な合意はない」と述べ、年内の交渉妥結を正式に断念した。交渉の遅れで、自由貿易交渉(FTA)を各国・地域が優先し、世界的な貿易自由化の流れを阻害する懸念もある。
ドーハ・ラウンドは、農業と鉱工業品の各交渉議長が7月に提示した合意案をたたき台に、9月から交渉が進められてきた。農業交渉の合意案は、アメリカに農業補助金を189億ドル(05年実績)から130〜164億ドルに削減することなどを求め、鉱工業製品の合意案は途上国に対し平均12%までの関税引き下げを求めた。しかし、途上国が「先進国が農業分野で大幅に譲歩しない限り、鉱工業製品の関税引き下げはありえない」などと強く主張し、10月に予定していた改訂版の提示も12月中旬以降にずれ込む見通しだ。
交渉の遅れで、各国は個別にFTA交渉を加速させると見られる。ただ、FTAは、協定を結んでいない国は差別的に扱われる。ドーハ・ラウンドの頓挫は、先進国と途上国の経済格差を広げ、日本にとり貿易拡大の好機を失うことになる。
(1)温暖化対策に賛成したOPEC首脳会議(11/20) **
石油輸出国機構(OPEC)の首脳会議が、地球温暖化への懸念の共有と、長期的な原油安定供給の約束などを盛り込んだリヤド宣言を発表した。
OPECは、温暖化対策に最も消極的なグループだ。石油消費量を減らされては屋台骨に響くとの経済的思惑を前面に出し、二酸化炭素(CO2)の排出削減に抵抗してきた。しかし、同宣言は、地球環境問題に対する国際社会の挑戦への支持を打ち出し、温暖化防止に賛成する姿勢を鮮明にした。議長国のサウジアラビアは、火力発電によるCO2を地中に封じ込める技術などの研究開発に、3億ドルの拠出を表明した。
温暖化が主に人為的な要因によるものということが明らかとなり、OPECとしてもこれ以上、消極的な態度をとるのは得策ではないと判断したのだろう。来年は、京都議定書の第一約束期間に入り、OPECの方針転換が規制による削減に反対するアメリカや中国の立場を一段と苦しくする可能性もある。
同宣言は、消費国の持続的な成長には石油の安定供給が不可欠と認識していることを強調した。しかし、1バレル=100ドルをうかがう石油への投機の勢いを弱める効果がある石油の増産は決定しなかった。産油国は原油高で十分な資金を手にしたが、増産による値下がりを恐れ、消極姿勢を貫いたままだ。同宣言が直接この問題に触れなかったのは残念だ。
(1)EU競争法違反、ソニーなど罰金120億円(11/21) **
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、ソニー、富士フィルムホールディングス、日立マクセルの3社が、ビデオテープの価格つり上げを狙ったカルテル行為を行い、EUの競争法に違反したとして、3社に総額7,479ユーロ(約120億円)の制裁金を科すと発表した。ソニーは、カルテルの証拠書類の隠滅をするなど調査の妨害を図ったとして、制裁金に30%を上乗せされた。
欧州委によると、3社は99年から02年にかけ定期的にテレビ局などが使う業務用ビデオテープの最低価格などを話し合っていた。欧州委が、02年5月各社の欧州支店などに抜き打ち調査を行い、発覚した。
富士フィルムは、調査に全面的に協力し制裁金の40%減額が認められた。