11月第3週(11/11〜11/17)(最高3つの*)

メインテーマ: 「GDP年2.6%増(7〜9月期)、不安山積の景気拡大」
その他のテーマ: 「上場企業中間決算、5年連続増収増益」
「金融危機10年、教訓を生かせ」
「サブプライム見通し甘く、みずほ1,000億円下方修正」

[景気動向]

(1)GDP年2.6%増(7〜9月期)、不安山積の景気拡大(11/14) ***

 7〜9月期の実質GDP成長率は、年率換算で2.6%と2四半期ぶりにプラス成長を確保した。しかし、原油価格の高騰やサブプライムローンの焦げ付き問題などをきっかけとするアメリカ経済の減速懸念など、今後の不安材料は山積している。02年2月から続く戦後最長の景気拡大に暗雲が漂い始めた。

 7〜9月期の個人消費は、前期比0.3%増と横ばい圏内にとどまった。消費が伸び悩んでいるのは食料品やガソリンなど生活に密着した品々の価格が上昇しているためだ。賃金の伸び悩みも、消費が振るわない一因だ。7〜9月期の雇用者報酬は、非正規社員の増加などを理由に前期より0.2%減った。冬のボーナスも前年より減少すると予想され、歳末商戦が活気付くか微妙だ。

 7〜9月期の実質GDPを0.5%押し上げた輸出も不透明だ。サブプライム問題が深刻化した今夏以降、アメリカ経済が減速の兆しを強めているからだ。アメリカの個人消費が低迷すれば、自動車や電機など国内の輸出企業も無傷ではいられない。輸出企業の多くは、アメリカ経済の動向に神経をとがらせている。

 7〜9月期の住宅投資は、前期比7.8%減と、97年4〜6月期以来の低水準となった。


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[企業部門]

(1)上場企業中間決算、5年連続増収増益(11/13) ***

 東京証券取引所第1部に上場する3月期決算企業の07年9月中間決算は、5年連続の増収増益となる見通しになった。中国やインドなど新興国の高成長や円安が好業績を支えた。しかし、下半期(10〜3月)は、急激な円高やアメリカ経済の減速の影響が懸念され、通期の収益の伸びは鈍化しそうだ。

 9日までに中間決算発表を終えた東証1部上場681社の合算の売上高は、前年同期と比べ9.1%増え、経常利益も8.8%増加した。税引き後利益も17.7%増加し、08年3月期の株主配当の総額は、前期より10.8%多い約6兆6千億円と5年連続で過去最高を更新する見通しだ。

 好業績の最大の要因は、好調な外需だ。ロシア、中東などの需要増をつかんで輸出を拡大した自動車は大手8社がすべて増収となり、7社は売上高が過去最高を記録した。上半期の円安により、8社の営業利益は合わせて約3,500億円押し上げられた。

 しかし、今後はアメリカ景気の減速や円高により、業績が鈍化する可能性があるとの見方が大勢だ。今秋以降、サブプライム問題、原料高、円高が深刻化すれば、通期の業績がさらに下ぶれし、企業は、設備等計画の修正を迫られる可能性もある。


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[金融市場]

(1)金融危機10年、教訓を生かせ(11/11) **

 金融機関が発表する損失が次第に膨れ上がる。隠れ損失のうわさが飛び交い、株価が下落する。それがまた金融不安をあおる。いつか見た光景だ。アメリカの金融市場では、サブプライムローン問題が収束の気配を見せない。ちょうど10年前、日本の金融システムが危機に陥ったころの市場の空気を彷彿させる。

 サブプライムローン関連証券のような証券化商品は、リスク分散を狙って開発された。それが、「誰がどのくらい損失を抱えているのか分からない」と、金融システムの混乱要因となっている。新たな金融商品が開発されれば、新しいリスクが生まれる。新手のリスクに対し備えを十分にするには、10年前の経験と教訓を生かす必要がある。

 何より問題だったのは、バブル崩壊で積み上がった不良債権の危険性に対し、金融関係者や日銀、旧大蔵省などの認識が甘かったことだ。初動対応が遅れて危機を増幅することになった。問題が生じたときに、全容を早めに開示し、処理を先送りしない。政策の説明責任を十分に果たす。そんな対応の重要性は、今も変わらない。

 97年当時、20行を数えた大手銀行は、再編を重ね、3メガバンクを中心とする6グループに集約された。不良債権処理が進み、3メガバンクは公的資金の返済も終えた。格付けも上がっている。

 しかし、収益力では欧米勢に大きく水をあけられている。不良債権処理に追われた10年の間に、先進的な金融技術の利用などで立ち遅れた。

 リスク管理能力を磨く一方、横並びの企業向け融資に頼るビジネスから脱し、独自のサービスで収益力を高める必要がある。銀行が真の実力をつけなければ金融システムは万全とはいえない。


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(2)サブプライム見通し甘く、みずほ1,000億円下方修正(11/15) ***

 サブプライムローンの焦げ付き問題の影響が、日本の金融機関にもジワリと広がっている。みずほフィナンシャルグループが、08年3月期決算の連結税引き後利益を1,000億円下方修正するなど、邦銀も影響はないという見通しの修正を迫られてきた。国内金融機関のサブプライム関連の損失計上額は、判明しただけで3,000億円を超えた。損失は、さらに拡大する恐れもある。

 邦銀は格付けの高い商品を中心に投資してきたが、高格付けのものであっても格下げが相次いだ。相対取引であるサブプライム関連商品では、ほとんど買い手がつかなくなり価格が暴落した。三井住友フィナンシャルグループも、9月中間期に約320億円の損失計上を迫られる。さらに被害は、地方銀行や信用金庫の一部、あいおい損害保険にまで波及している。

 海外では、アメリカのシティグループが2兆円近い損失を計上する見通しとなるなど、有力な欧米銀行・証券会社が相次いで巨額損失を計上している。アメリカの大手銀行と証券の9社で、判明した損失額は4兆5,000億円を超えている。

 欧米に比べれば、日本の銀行や証券会社への影響はまだ小さいといえる。福井日銀総裁は、「日本の金融システム全体として不安を考える必要はない」との考えを示した。しかし、市場の混乱はまだ続いており、価格が想定以上に下がらないという保証はない。9月中間決算で約50億円の損失計上にとどまる三菱UFJフィナンシャルグループも、9月末で200億円程度の含み損を抱える。現在の含み損はさらに増えていると見られ、拡大懸念はくすぶっている。


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