11月第2週(11/4〜11/10)(最高3つの*)

メインテーマ: 「日本・タイFTA発効、FTAに商機あり」
その他のテーマ: 「トヨタ世界一目前、北米市場に変調」
「郵政民営化、試行錯誤の1ヶ月」
「ブラウン管カルテル疑惑」
「アメリカ利下げ、インフレ抑止の重要性も増す」
「グーグル、携帯OS覇権狙う」

[FTA]]

(1)日本・タイFTA発効、FTAに商機あり(11/4) ***

 日本とタイの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)が、1日発効し、農産物をはじめ両国間の貿易・投資の拡大が期待されている。自動車、電機などの日本メーカーは、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の関税撤廃や、タイがインドや中国などと結んだFTAを活用するため、タイの拠点を拡充しており、こうした日本の戦略を補強することになる。日本は、FTA戦略が出遅れている中、日本企業は外国同士のFTAもしたたかに活用している。

 日本にとり、タイとのEPA発効は、アジアではシンガポール、マレーシアに次いで3カ国目である。他の地域を含めると5カ国目だ。日タイの貿易額は、06年に4兆6,000億円を超えており、5カ国の中で最も大きい。

 EPAの発効で、日タイの自動車部品の関税は5〜7年後に撤廃され、鉄鋼の関税も今後10年で全品目が撤廃される。幅広い分野で貿易・投資が促進しそうだ。例えば、農産物では、タイからの熱帯フルーツなどの輸入拡大に加え、日本からも現地の日系企業への部品などの供給や、タイが即時関税を撤廃したりんご、柿、ナシ、桃などの富裕層向け輸出が本格化すると見られる。貿易は20〜30%拡大すると見られる。

 一方、タイはインド、中国、豪州などとFTAを結んでいるほか、ASEAN地域内の関税も自由貿易地域(AFTA)によりほぼ撤廃されている。こうしたFTAネットワークを活用するため、日本メーカーはタイの輸出拠点を拡充している。昨年11月に日産自動車が、タイで生産した「ティーダ」の豪州向け輸出を開始した。ASEANを世界戦略上の輸出拠点と位置づけるトヨタ自動車も、1月にタイで3番目の工場を稼動させた。ホンダもタイに自動車の第2工場を建設中で、輸出拡大を目指す。また、松下電器産業が、05年に冷蔵庫や洗濯機の生産をマレーシアからタイに移している。日タイのEPA発効で、こうした現地拠点と日本との取引コストも下がるため、競争力の強化につながる。

 タイは、また、EPAで製品の修繕、補修など製造業の関連サービスや、小売業の一部について、日本企業の出資規制を緩和した。日本からタイへの投資分野がさらに広がる可能性もある。


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[自動車産業]

(1)トヨタ売上高世界一目前、北米市場に変調(11/8) **

 トヨタ自動車は、07年9月中間連結決算で過去最高の売上高、利益を記録し、改めてトヨタの強さを示した。低燃費のハイブリッド車を武器に、07年の生産、販売台数で世界一を視野に入れる。ただ、販売の3割以上を占めるアメリカでは、サブプライムローン問題の影響や、大統領選を控えた保護主義の台頭が懸念材料だ。

 トヨタの中間決算で目立つのは、北米市場の依存体質が改善したことだ。日本からの輸出による利益の北米依存度は、一時は7割以上に達していたが、07年9月中間決算では、5割程度にまで下がってきている。

 さらに、今年度の研究開発費を過去最高の9,400億円と見込む。ハイブリッド技術だけでなく、ディーゼルエンジンではいすゞ自動車と、自動車軽量化では炭素繊維大手の東レなどとの共同開発を進め環境対応を加速する。

 しかし、稼ぎ頭は、依然北米だ。その市場に変調が見えている。アメリカ市場の1〜10月の新車販売台数は、前年同月比2.5%減の1,357万台で、2年連続前年割れの見込みだ。トヨタは3.9%と健闘したが、市場の縮小の影響がトヨタに及ぶ懸念はある。

 トヨタの業績好調の裏には、アメリカメーカーのビッグ3が、これまで人件費や退職者向けの医療保険の負担で十分な設備投資や研究開発の余力を失っていたこともある。しかし、今年10月以降、全米自動車労組(UAW)に医療保険の運営を移管することで大筋合意し、追加的な費用が生じない財務体質への転換にめどをつけた。また、安い賃金で若年労働者を雇用できる労働協約でもUAWと合意しており、ビッグ3は反撃体制を整えたとの見方もある。


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[競争政策]

(1)郵政民営化,試行錯誤の1ヶ月(11/6) **

 日本郵政会社の西川社長は、定例記者会見で、10月1日の民営化後の約1ヶ月間を振り返り、システムトラブルや事務手続きミスが頻発したことを陳謝した。

 民営化後はシステムトラブルが相次いだ。ゆうちょ銀行では、10月1〜5日に「顧客情報管理システム」の不具合が発生したほか、15日には国家公務員共済連合会などへの年金受給者に、一時年金の振込みが行われなかった。西川社長は、「ピーク時の想定を誤り、システム設計に問題があった」と、対応への甘さを認めた。さらに、内容証明郵便などへの押印漏れや記載ミスが3万7,152件あり、総務省に再発防止を求められた。

 今年の年賀状の遅配の防止策として、年賀状を仕分けする区分機を07年の28台から104台へ増やし、輸送状況を細かく把握し、配達するアルバイトも増やす方針だ。 

 懸案だった宅配便事業の経営基盤を強化するため、10月5日、日本通運との事業統合を発表した。ヤマト運輸、佐川急便の2強を追撃する構えだ。

 ゆうちょ銀行は、準備預金制度による積み立てを10月16日から始めた。必要な準備額は、2兆5,000億円で、準備預金総額の3分の1に当たる。準備預金には金利がつかないため、金融機関は通常必要額ぎりぎりを積み、残りの資金を短期金融市場などで運用して利ざやを稼ぐ。旧日本郵政公社時代は、準備額を大幅に上回る無駄を放置してきた。西川社長は、「金利収益を得るためきめ細かく運用する」と述べており、今後金融市場での存在感が増すことは必至だ。


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(2)ブラウン管カルテル疑惑(11/10) **

 ブラウン管販売をめぐり国際的な価格カルテルが結ばれていた疑いで、公正取引委員会が、松下電器産業の子会社のMT映像ディスプレイを独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査した。世界的に縮小し始めたブラウン管市場は、価格競争になだれ込みやすいため、カルテルに動いたとの見方が業界では一般的だ。

 薄型の液晶やプラズマの台頭で、ブラウン管テレビの市場は、縮小しており、05年のテレビ市場構成比は82.9%だったが、07年は同55.6%と推計され台数、構成比とも、ここ数年は減少している。日本では、ブラウン管テレビの国内生産をほぼ休止している。生産、販売の中心を中国に移している。国内では、地上デジタル放送が受信できるチューナーを備えた液晶、プラズマが主流だ。

 ブラウン管はすでに完成された技術のため、品質で差が出にくく安売り競争になだれ込みやすい。原材料価格が高止まりする中で、値崩れを防ぐためカルテルを結んだとの見方が一般的だ。

 国際カルテルは、多国籍企業の増加やグローバル化を背景に多発し、摘発も増加している。その原動力となっているのが、各国が導入している課徴金減免制度だ。国際カルテルで摘発されると、複数国の競争当局から制裁金を科され、企業は多大な制裁金を科され支払わなければならない。減免制度を利用して、課徴金のリスクを減らそうとしている企業が増えていると見られる。


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[アメリカ経済]

(1)アメリカ利下げ、インフレ抑止の重要性も増す(11/4) ***

 金融不安の沈静化とインフレ防止の両立を目指すアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、一段と難しい金融政策の局面を迎えている。FRBは、短期金利の指標であるフェデラル・ファンド(FF)金利を0.25%引き下げ、年4.5%とし、9月に続く利下げを行った。

 サブプライムローン問題をきっかけとした金融市場の動揺が、長期化している。金融不安や住宅市場の冷え込みが、経済全体に影響を及ぼすのを防ぐには、利下げが必要との判断だ。しかし、その後も株価は不安定な動きが続き、更なる利下げを求めているようにも見える。

 一方で、商品市場では原油先物価格が一時、1バレル=96ドルを突破し、史上最高値を更新した。金の先物価格も、28年ぶりの高値をつけた。この急騰は、サブプライムローン問題で株式市場が混乱したのを嫌った投機資金が、商品市場へ流れ込んだためだ。FRBの金融緩和姿勢が、投機資金の膨張を許しているとの見方もある。FRBは、利下げ後の声明で、これまでの景気重視の姿勢から、景気減速とインフレの両方を警戒する中立姿勢に戻すと表明した。実体経済とマネーの双方に、きめ細かく注意を払った政策運営が求められよう。

 原油や農産物の国際価格の上昇は、日本国内の物価にも影響を強めている。消費者物価指数は、前年比マイナスだが、ガソリンや食品の値上げにより、むしろ「物価上昇」が生活実感に近い。

 原材料価格の上昇を製品価格に転嫁しにくい中小企業の業況悪化が、賃金伸び悩みの一因だ。物価が緩やかに上昇して中小企業の価格転嫁がしやすくなり、従業員の給料も上昇する。そんな好循環を実現できるかどうかがカギだろう。


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[IT産業]

(1)グーグル、携帯OS覇権狙う(11/7) **

 インターネット検索最大手のグーグルは、携帯電話事業に本格参入すると発表した。基本ソフト(OS)などの主要ソフト群「アンドロイド」を無償提供する。携帯電話端末の開発コストが下がり、端末の価格も下がり、消費者は複数の事業者のサービスを利用できる可能性がある。開発には、世界有数のIT・通信大手など33社が参画を決めており、世界の市場に影響を与えそうだ。

 グーグルは、自社のOSを利用する通信事業者を拡大することで、応用ソフトなどを通じた自社サイトの接続数を一気に増やし、広告収入などの収益増につなげる事業モデルと見られる。高機能携帯電話向けのOSは、英シンビアンが世界シェアの7割を占める。端末最大手のノキアが筆頭株主だ。これをマイクロソフトや無償OSのリナックスが追う構図となっている。

 グーグルは、ネット検索のシェアで6割を占める上、OSの開発にインテルやモトローラ、NTTドコモ、KDDIなどの参画を得て、先行組みを追撃する態勢を整えた。グーグルの戦略の背景には、IT機器の主戦場がパソコンから携帯電話に移りつつあることがある。携帯電話が高機能化し、パソコンとの技術的な垣根が低くなったからだ。世界出荷台数は、パソコンが07年の見込みが約2億5,000万台であるが、携帯電話機は約11億台で2桁増を続けている。

 携帯端末のメーカーにとっては、開発コストの節約につながる可能性が高い。アンドロイドが普及すれば、応用ソフトの大部分を共通化できる。これまでは、各事業者向けの応用ソフトを開発しなければならず、その費用は最大で100億円との声があるほど、経営の負担になっていた。

 一方、消費者にとり、端末の価格が安くなる利点のほか、OSが異なることで生じていた制限が小さくなりそうだ。各種サービスも、通信事業者を選ばずに利用できるになる。


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