5月第4週(5/20〜5/26)メインテーマ:「円、主要国通過で最弱に」(最高3つの*)
(1)円、主要国通貨で最弱に(5/23) **
外国為替市場で、円が弱い。アメリカ景気の軟着陸を見込んでドル安が進む一方、ユーロが台頭し、通貨調整の焦点は人民元に集まっている。日本は、マネーの流れの蚊帳の外になりつつあり、円は主要国通貨としての地位さえ微妙になっている。
円安を促すのは個人マネーの日本脱出だ。家計の外貨建て資産残高は昨年末で40兆円だが、外貨投資信託の設定額は、5月だけで2兆円に迫る。この流れは止まりそうにない。短期でも4〜5%の金利のつく米欧との金利差は大きい。中国株は年初から5割も上昇し、新興国はリスクも大きいが利回りも高い。成長や投資機会の格差が、資金の流れを通じ円を押し下げている。
しかし、当面、円安は、輸出増をもたらし、日本経済の追い風だ。06年度の実質成長率への外需寄与度は0.8%へと、05年度の0.5%に比べさらに高まった。
マネーの流れは、中国の人民元上昇を見込み流入している。中国のバブル懸念が強まり、アジア経済の安定の鍵を握るのは、日本から中国に移った。国際通貨基金(IMF)が予測する07年のドル建て名目国内総生産が、10年前に比べどれだけ伸びたかを見ると、日本0.9%、アメリカ65.8%、中国220.3%であった。米中に比べ、日本の足踏みが目立つ。
ユーロが第2の基軸通貨の地位を占めつつあるのを尻目に、円は売買高などで英ポンドに抜かれそうで、三極通過の地位を失いかねない。
円安は足元では企業収益を押し上げ、景気を支えている。しかし、長い目で見れば、海外との成長力格差という日本経済のもろさを反映している可能性がある。
(1)大手銀、利益は高水準だが本業伸び悩み(5/24) ***
大手銀行6グループ合計の07年3月期決算は、大幅減益となった。しかし、超低金利を背景に、利益水準はなお高い。公的資金返済で経営の自由度を増した3メガバンクは、現金自動預け払い機(ATM)手数料の無料化や大幅な増配など利益還元策を打ち出したが、独自性に乏しく横並びである。不良債権の重圧から抜け出した大手行が完全復活を遂げられるかは、この1年が正念場となりそうだ。
07年3月期の業績が伸び悩んだ最大の要因は、提携する消費者金融や信販会社の税引き後利益が巨額の赤字となったためである。三菱UFJフィナンシャル・グループは、アコムや三菱UFJニコスの業績不振により、約1,300億円分の利益が吹き飛び、三井住友フィナンシャル・グループもプロミスの赤字決算のあおりで約1,100億円が消えた。そして、債務超過となったオリエントコーポレーションへの金融支援に追われたみずほフィナンシャル・グループは、07年3月末の不良債権比率が1.65%と1年前の1.41%から上昇した。今後、貸し金業の規制強化が進めば、ノンバンクの高収益体質も期待できず、経営の不安定要素としてくすぶり続けそうだ。
最近の金利上昇局面で、大手銀行は利ざやが拡大すると期待した。しかし、預金金利の上昇率に比べ、貸出金利の上昇率は小幅にとどまり、利ざやが拡大したのはみずほと住友信託銀行だけであった。地方銀行や信用金庫も、低金利競争に参加しているためだ。
メガバンク各行は、07年3月期に続き08年3月期も大幅な増配に踏み切り、株主重視の姿勢を示した。ただ、増配額はそろって3,000円となるなど他行を意識した感が強い。利益の3〜4割を配当にまわす欧米の金融機関にも遠く及ばない。
(1) 物価、年末まで下落か(5/26) ***
4月の全国の消費者物価指数は、前年同月比0.1%下落と3ヶ月連続のマイナスであったが、3月より下落幅が縮小した。今後、物価の上昇要因は少なく、今年後半までは物価の上昇率はマイナスが続くとの見方が多い。
原油価格が上昇に向かうのは今年度後半で、11月、12月は横ばいで、来年1月にやっとプラスに転じると見られる。ガソリン以外では物価下押し圧力が強い。携帯電話は割安な通信料金プランの導入により、来年1月まで毎月0.08%程度、物価を押し下げる要因となる。デジタル家電やパソコンは激しい価格競争が続き、前年同月と比べた物価は下落を続けている。
このため、大田経済財政相は、全体的にデフレ脱却は視野に入っているが、まだ後戻りする可能性がないとはいえないとしている。引き続き状況を見守る姿勢で、デフレ脱却宣言も今年後半以降になりそうである。