5月第3週(5/13〜5/19)「07年1〜3月期GDP年2.4%増」(最高3つの*)
(1)経常収支黒字、初の20兆円超え、投資立国へ(5/15) ***
財務省によると、2006年度の国際収支で、海外子会社の収益や海外債券の利子などを示す所得収支の黒字が14兆2,390億円と、モノの取引を示す貿易収支の黒字10兆5,145億円を2年連続で上回った。日本が輸出中心の「貿易立国」から投資で稼ぐ「投資立国」へと移行しつつあることを示している。
海外とのモノとサービスの取引全体を示す経常収支の黒字は、4年連続で過去最高を更新し、初めて20兆円を超えた。
今後は、人件費の高さなどから国際競争力が相対的に低下し、貿易黒字が縮小する一方、積み上がった対外資産から得る所得収支の黒字は増えていく見通しで、いずれ貿易収支が赤字に転じる「成熟した債権国」に移行すると見られる。
今回、所得収支黒字が貿易黒字を引き離した背景には、原油価格の高騰による輸入額の増加が、貿易黒字を抑えた事情もある。
(1)07年1〜3月期GDP年2.4%増(5/18) ***
2007年1〜3月期のGDPの実質成長率は、年率換算2.4%と9四半期連続のプラス成長となり、戦後最長の景気回復の底堅さを示した。デフレ脱却宣言まで、あと一歩だ。個人消費が力強さを欠き、アメリカ経済の先行きも不透明な中で、賃金の上昇と個人消費の活性化が脱デフレ達成の鍵となりそうだ。
1〜3月期の個人消費は、前期比0.9%増と2四半期連続でプラスとなり、内需のけん引役であることが鮮明になった。これは、雇用者報酬が前期比0.2%しか伸びない中で、パートやアルバイトの雇用拡大や、今年から大量退職が始まった団塊世代の娯楽消費が消費全体の伸びにつながっているためだ。消費の力強い回復には、雇用者賃金の更なる上昇が必要だ。
一方、景気を引っ張ってきた設備投資は、前期比0.9%減と、5四半期ぶりにマイナスに転じた。デジタル家電の価格下落が続く中、電機・半導体メーカーが設備投資を抑制する動きが出始めている。ただ、設備投資を後押しする07年度改正をにらんで、多くの企業が新規投資を4月以降に先送りした可能性もある。設備投資の拡大基調は崩れていないとの見方は多い。
1〜3月期の成長に個人消費と並んで貢献したのが輸出だった。07年の営業利益が2兆円を突破したトヨタ自動車も、営業利益を大きく押し上げたのは輸出増だ。今後の輸出動向は、アメリカ経済の行方に大きく左右される。好調な中国などアジア向け輸出も、多くは中国などからアメリカへの最終製品の輸出増に支えられているからだ。
(2)デフレ脱却宣言、夏以降か(5/18) ***
2006年度の実質GDP成長率は1.9%、名目GDP成長率は1.3%と、9年連続で名目が実質を下回る名実逆転となり、06年度のデフレ脱却は実現できなかった。全国消費者物価指数がプラスに転じるのは、夏以降と見られ、政府がデフレ脱却宣言を宣言できるのは早くても今夏以降となりそうだ。
06年度の名目GDPは、約509兆8,000億円で97年度以来の水準に回復し。しかし、物価変動の影響を除いた06年度の実質GDPに比べ約41兆円も少ない。これは、物価水準が下落傾向にあることを示す。前年より多くのモノやサービスを生産しても、それに比例して売り上げは伸びず、賃金も上がりにくい。名実逆転が解消できれば緩やかなインフレになり、賃金も伸びやすくなると予想される。ただ、デジタル製品の技術革新による値下がりや、厳しい国際競争の中で賃金が上がりにくい状況が続いている。
日本経済が完全にデフレから抜け出すには、景気回復がさらに持続して労働力不足から企業が賃上げをせざるを得なくなることが必要となる。