3月第5週(3/25〜3/31)「原油安で2月の消費者物価0.1%下落」(最高3つの*)
(1)EU50周年首脳会議(3/26) ***
欧州連合の基礎となったローマ条約調印から50周年を記念するEU特別首脳会議が、24,25の両日ベルリンで開かれ、過去50年のEUの成果をうたいあげ、気候変動、テロ対策などで国際社会を主導する決意を示したベルリン宣言を採択した。
ベルリン宣言では、欧州が実現した長期間にわたる平和や、単一市場、共通通貨ユーロの導入による経済成長、高度の福祉を自賛した。さらに、エネルギー政策や温暖化防止においてともに主導すると明記し、気候変動、テロ、組織犯罪など地球規模の課題で世界をリードすることをうたっている。
また、09年の欧州議会選挙までに、EUを新たな共通の基礎の上に乗せることを目標とするとの文言を入れ、EU憲法の再生に向けたプロセスの第一歩を踏み出した。EU議長国のメルケル首相は、6月のEU首脳会議で09年までに憲法問題を解決するとの目標について、各国首脳の合意を取り付けたい考えだ。
しかし、EUの最大の課題は、政治統合をめぐる加盟国間の温度差で、EUの機構改革を定める憲法問題が停滞した一因もここにある。EUに懐疑的な世論を抱えるイギリス、ポーランド、チェコなどは、EU憲法の制定の目標期限をベルリン宣言に盛り込むことに反対した。このため、宣言は憲法の言葉を使うことを避け、新たな共通の基礎というあいまいな表現にとどめたのである。
(1)団塊退職、資産・人、空前の移動(3/28) ***
戦後の1947年から49年のベビーブームに生まれた団塊の世代は、今年から定年の60歳を迎える。団塊2007年問題は、日本経済や企業にとりチャンスなのか、ピンチなのか。
今後3年で53.4兆円。これは、団塊の世代が07年度から09年度までに受け取る退職金の総額だ。規模は、国の07年度予算の税収53.5兆円に肩を並べる。この巨額の団塊マネーが、どこに向かうかが問題だ。読売新聞が実施した主要企業アンケートで、団塊向けビジネスで有望な分野は、健康関連、旅行、金融・資産運用が上位になった。
一方、給料が高いシニア世代が大量に退職すると、企業の人件費負担が軽くなるというメリットもある。内閣府の試算によると、04年から14年までの10年間で、日本企業全体の賃金総額は5.7%減少する。これは、年間1兆円強の人件費削減に相当する。収益が改善し、新規投資など前向きな企業戦略の余地が生まれると期待される。
しかし、将来を見ると、マイナス面も浮かび上がる。その一つが労働力の減少だ。07年に定年を迎えた後も、企業の再雇用や別の会社への再雇用で働き続ける人は多い。しかし、団塊世代が65歳になれば仕事から完全に引退する人が増える。企業が生産性を上げないと、日本経済は成長できなくなる。
ニッセイ基礎研究所の推計では、高齢者の再雇用が進まないと、日本の労働力人口の減少数は07年の33万人から拡大し、12年と13年には46万人減のピークを迎える。人手不足による経済成長の鈍化を防ぐには、高齢者や女性を働き手として活用する必要がある。
消費も、団塊需要にわいた後、数年後には縮小に向かうとの見方がある。日本総合研究所は、消費に占める60歳以上の高齢者世帯の割合は、07年から急上昇を始め、06年の34%台から12年には39%超になると推計する。しかし、その後は一転して景気を押し下げる方向に作用する公算が大きいとする。
(1)2007年度予算成立(3/27) ***
07年度予算が成立した。懸案の財政再建に一歩踏み出す内容だが、まだ道は遠い。
07年度予算には、税収増の追い風が吹いた。国債発行額は、25.4兆円と、前年度に比べ4.5兆円減る。財政の健全度を示す基礎的財政収支(プライマリー・バランス)も、4.4兆円と前年度から大きく改善する。
政府は、国と地方を合わせた基礎的財政収支の赤字を2011年度に解消することを目指している。一般会計ベースですでに地方は黒字化し、国もかなり赤字が減ることもあり、国会の予算審議は緊張感に欠けていた。
基礎的財政収支の赤字を消したところで、巨額の国債発行は止まらない。現行の財政再建目標が適切かどうか、考え直すべきである。仮に、国の4.4兆円の基礎的財政収支の赤字が解消されたとしても、予算を組むには20兆円以上の国債が必要だ。これだけ国債を発行して、財政再建が実現したと言うわけにはいくまい。
そのため、国債発行残高は累増が不可避である。07年度末で547兆円となる国債発行残高は、手を打たなければ10年度末で605兆円、16年度末には715兆円に達すると試算されている。税収の大幅な伸びは今後期待できない。一方で、国債の元利払いや社会保障費などへの出費が増える。
毎年の国債発行額を抑え、国債残高を減らすことこそ、財政再建の目標とすべきだ。予算の財源は、消費税率の引き上げなど税制の抜本改革で賄うほかはない。歳出削減だけでは到底不可能だ。再建の新目標と財源確保の手法を示し、国民に問うのが政府・与党の責任である。
(1)原油安で2月の消費者物価0.1%下落(3/31) ***
総務省によると、2月の全国消費者物価指数(CPI)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.1%下落し、10ヶ月ぶりにマイナスとなった。石油製品の下落が主な要因だが、賃金の伸び悩みによる需要低迷など、構造的な要因も背景にある。市場では、CPIは今秋までゼロ%以下で推移するとの見方が多い。
2月の物価下落の主因は、これまで物価の押し上げ要因であった石油製品の価格が2年9ヶ月ぶりに前年比で下落したことである。その物価への寄与度は、1月のプラス0.13%から2月にはマイナス0.02%に転じた。石油情報センターによると、3月のレギュラーガソリン価格は平均で129円と、06年3月の131円から2円安くなった。携帯電話業界も競争が一段と激化し、2月の料金は2.3%下落し、物価への寄与度はマイナス0.05%となった。
しかし、物価下落の背景にあるのは、賃金の伸び悩みなどの構造的問題だ。2月の経済指標では、完全失業率4ヶ月連続で4.0%と足踏みし、現金給与総額は前年比0.7%減と3ヶ月連続で減少した。市場の見方は、失業率が3%台半ばまで改善し、労働力が不足する状態にならないと、賃金は上昇しないというものである。
また、2月の鉱工業生産指数は、前月比0.2%減と2ヶ月連続でマイナスとなった。アメリカ輸出の減少と、IT関連財の在庫増で生産調整が進んだためである。
大田経済財政相は、物価が持続的に下落する状況に戻ることはないとの見方であるが、市場では、CPIは今週までゼロ%以下で推移するとの見方が多い。