6月第4週(6/17〜6/23) メインテーマ:「WTO、G4決裂」(最高3つの*)


[経済政策]

(1)「骨太の方針」閣議決定、成長力強化を重視(6/20) ***

 政府は、臨時閣議で、安部政権として初めての経済財政改革の基本方針2007(骨太の方針)を決めた。少子高齢化社会で成長を維持するため、地方版の産業再生機構の検討など、日本経済の成長力を強化する方針を打ち出した。

 同方針は、年金の記録漏れ問題について、新たな年金記録管理システムの構築を図るとし、国民一人一人の医療や年金などの個人情報を一元的に管理する社会保障番号の導入を検討する方針を示した。

 成長力強化では、労働生産性の伸び率について、現在の平均1.6%から5年後には年2.4%へ5割増にする目標を掲げた。アメリカなどに比べ、生産性が低い流通や金融など非製造業での改善に重点を置き、規制緩和やITの活用を進める。

 財政再建の取り組みについては、08年度予算編成で歳出削減を最大限行うこととした。歳入面では、消費税を含む税制改革の議論を今秋から本格的に行うとし、これまでの表現にとどまった。

 また、デフレ経済からの脱却については、民間需要主導の持続的な成長と両立する安定的な物価上昇率を定着させるとする慎重な表現にとどめた。


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[金融政策]

(1)「適切な物価上昇率」日銀政策委員間で差(6/21) **

 日本銀行の政策委員の間で、物価安定についての考え方に差があることが、4月27日の金融政策決定会合の議事要旨で明らかになった。

 日銀は、物価安定の目安を0〜2%としているが、委員により0%台前半や1.5%程度など、適切と考える物価上昇の中心値は異なっていた。現在、消費者物価の上昇率がマイナス圏で推移する中で、今後の利上げ時期を決める際に、各委員の意見が鋭く対立することも予想される。

 9人の政策委員のうち、6人が1%を中心値とし、0%台後半と、1%よりゼロに近い低めに中心値を置いた委員が2人、1〜2%程度が適当と高めの数値を指示した委員が1人いた。高めの数値を支持したのは、2月の利上げに反対票を投じた岩田副総裁と見られる。

 日銀は、昨年3月、望ましい物価上昇率の目安を、「物価安定の理解」として公表することにした。日銀が想定する物価上昇率の見通しが、目安とする0〜2%を上回れば利上げ方向に、下回れば利下げ方向に動くと予想できるため、政策運営の透明性が高まると期待されている。

 日銀は、今後の物価上昇率を、07年度はプラス0.1%、08年度はプラス0.5%になると想定されている。直近の3ヶ月は前年同月比マイナスで推移しているが、日銀は、長い目で見ればプラス幅は拡大し、足元の物価が多少のマイナスでも利上げは可能だとして、追加利上げのタイミングを模索している。


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[WTO]

(1)WTO、G4決裂(6/23) ***

 世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)で、アメリカ、欧州連合(EU)、ブラジル、インドの主要4カ国・地域(G4)が開いていた閣僚会合が決裂したことで、7月末までの大枠合意だけでなく、年末の最終合意という大目標もきわめて困難になった。

 G4に日豪を加えた主要6カ国・地域(G6)の枠組みも当面動かないことが確定した。WTOの公式ルートとは別に、先進国と途上国、農産物輸出国と輸入国の代表が交渉を実質的に進める場となってきた主要国・地域による枠組みは、宙に浮いた形となった。

 年内合意が見送られた場合、早くとも09年1月のアメリカの次期政権発足までは再開はないと見られる。加盟国の間には、自由貿易協定(FTA)などの2国間での貿易自由化を目指す動きが加速することも予想される。WTOの存在意義が問われかねない危機的な状況になりかねない。

 日本にとっては、交渉に与える最大の場が消えてしまった。農業分野では、日本が最優先項目の一つに掲げる重要品目の全農業品目に占める割合は、欧米の水面下の合意で4〜5%が落としどころになるとの観測が強まっている。日本は、10〜15%を主張してきたが、こうした要求を主要国にのませる場がなくなった。一方、FTAもアメリカ、EUだけでなく、韓国やASEANなどにも大きく立ち遅れている。通商戦略の練り直しは必至だ。


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