7月第4週(7/22〜7/29) メインテーマ:「アメリカ住宅ローン不安拡大」(最高3つの*)


[中国経済]

(1)対ドル切り上げ2年、人民元の上昇加速(7/23) ***

 世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)で、農業交渉議長   

 05年7月に、人民元の対ドルレートが約2%切り上げられてから2年が経った。この間、ドルに対する人民元レートの上昇ベースは、徐々に加速しつつある。一方で、中国の貿易黒字は拡大を続けており、対中貿易の巨額の赤字に苦しむアメリカからは、いら立ちも見える。

 人民元は、7月20日は1ドル=7.5712元で、この1年間で約5.2%上昇した。その前の1年間で1.5%程度の上昇であり、上昇ペースは加速している。また、中国人民銀行(中央銀行)は、5月に1日の許容変動幅を基準値の上下0.3%から0.5%程度に広げた。アメリカを始めとする国際社会から為替制度の柔軟化を求められ、中国当局も対応を進めている。

 しかし、中国の貿易黒字は、人民元切り上げ後にむしろ急増している。中国の雇用は、繊維など膨大な雇用を抱える労働集約型の輸出産業に支えられている。そのため、中国人民銀行が人民元レートの大幅な上昇を抑えているとの見方が大勢だ。

 中国は資本の国内流入を厳しく制限している。しかし、最近は輸出代金に上乗せするなどの形で、海外から不法な投機資金が流入しているといわれる。これは、過剰流動性につながる。これに対して、一度にまとめて切り上げ、資金流入を断ち切ることもありえない選択肢ではない。ただ、中国政府は、これまで意表をつく事態は起きないとして、再度の切り上げを否定している。

 一方、アメリカは中国通のポールソン財務長官を全権大使として、中国に改革を促してきた。しかし、中国の動きは鈍く、同長官の手法に議会からは生ぬるいとの批判も出始めている。アメリカは大統領選が近づくと保護主義的な傾向を強めると見られ、巨額の貿易赤字を抱える中国への風当たりはますます強くなりそうだ。


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[アメリカ経済]

(1)アメリカ住宅ローン不安拡大(7/26) ***

 アメリカ金融市場で、住宅ローンの焦げ付き問題の不安が拡大している。低所得者向けのサブプライムローンだけでなく、信用力が比較的高いプライム層への融資にも返済遅延が広がったとの見方から、24日のダウ平均株価(工業株30種)は、今年3番目の下げ幅を記録し、ドル安が進んだ。

 住宅ローン問題の深刻な実態を印象付けたのは、サブプライムローン大手企業のアンジェロ・モジェロ最高経営者(CEO)の発言だった。モジェロCEOは、減収減益となった4〜6月期決算を発表した際、住宅ローンの返済遅延が、借り手の信用力がサブプライムより高い融資に拡大したことを明らかにした。また、住宅販売が回復するのは09年までかかるとの厳しい見通しも示したため不安が急速に市場に広がった。

 住宅ローン会社や銀行、証券会社は、不良債権を抱え込まないように、融資の債権を小口に分けて証券化し、世界中の年金基金や金融機関、ヘッジファンドなどに販売してきた。焦げ付きの急増で、こうした証券の価値は下落している。

 アメリカ金融機関などは、住宅ローン会社に貸した資金が回収できないうえ、保有する証券も含み損を抱えるダブルパンチに見舞われており、FRBのバーナンキ議長は、その損失額を最大1,000億ドル(12兆円)と推計した。

 アメリカ住宅ローンをめぐる不安の拡大を背景に、機関投資家が警戒感を強め、投資ファンドに投融資されてきた巨額の資金が先細りする恐れも出てきた。投資ファンドは株式市場にマネーを呼び込む誘い水の役目を果たしており、影響が長引けば事業会社の資金調達など実体経済にもマイナスに働きかねない。


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(2)アメリカ4〜6月期GDP3.4%増(7/28) ***

 アメリカ商務省によると、07年4〜6月期の実質GDP成長率(速報値)は、年率換算で前期比3.4%の伸びとなった。06年第1四半期以来の伸びで、アメリカ経済の再加速傾向を示した。焦点の住宅投資はマイナス9.3%の伸びとなり、6四半期連続の前期比割れとなり、住宅市場の冷え込みが続いていることを浮き彫りにした。

 輸出は好調で、前期比6.4%の伸びで、外需全体でGDPを1.18%押し上げた。そして、このところ低迷していた設備投資は、ソフトウェアなどで投資が増え始め、前期比8.1%の高い伸びとなった。

 一方、GDP全体の約3分の2を占める個人消費の伸び率は、ガソリン高が消費者心理に影響し1.3%の伸びにとどまった。


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[物価水準]

(1)物価、秋まで足踏みか(7/28) ***

 総務省によると、6月の全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)は前年同月より0.1%下落し、5ヶ月連続でマイナスになった。石油製品が物価を押し上げたが、技術革新による薄型テレビなどの価格下落の影響のほうが大きかったためだ。これからも物価は、秋ごろまでは足踏み状態が続くとの見方が強い。

 技術革新の影響は、薄型テレビなどを含む、教養娯楽用耐久財の指数に表れており、6月の下落率は前年同月比で17.9%に達し、物価全体の水準を押し下げた。携帯電話通話料金も値下げの影響で前年同月比4.1%下落した。石油製品を除いた総合指数では、6月は前年同月比0.3%下落し、前月より下げ幅を拡大している。

 本格的な物価の上昇には、景気回復による個人消費が拡大し、需要が増える必要がある。現金給与総額は6ヶ月連続で前年比減少している。賃金の上昇は個人消費の活性化とともに、人件費アップを通じ外食などサービス物価を上昇させる効果もあり、物価を占う意味でも今後の焦点となりそうだ。


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