7月第2週(7/8〜7/14) メインテーマ:「ゼロ金利解除1年、金利上昇じわり浸透」(最高3つの*)


[財政]

(1)自民・民主、財政見通し深刻さ欠く(7/11) **

 自民党と民主党の間で、参院選公約実現のための財源論が焦点に浮上している。消費税増税のイメージが選挙結果に響くことを懸念する自民・民主両党は、ともに増税に頼らない楽観的な財政見通しを強調しがちで、本格的な財政再建論議になりそうにない情勢だ。

 自民・民主両党は、ともに財政再建の目標として、2011年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を公約に掲げている。過去の借金の元利払いである国債費を除けば、新たな借金なしに政策経費をまかなえる状態を目指すという意味だ。

 09年度に、基礎年金の国庫負担割合が3分の1から2分の1に引き上げられる。新たに約2.5兆円の財源が必要になるため、財政再建の目標をどう実現するかの問題は財源論の核心となる。

 両党とも歳出削減で増税は不要と主張しているが、現実の財政状況から見れば楽観的な側面が強くない。政府は、昨年7月、11年度までの財政再建目標を達成するための財源不足額は16.5兆円とはじいた。このうち11.4兆円から14.3兆円を歳出削減で賄っても、残りの2.2兆円から5.1兆円の増税が避けられない見通しだった。その後、景気回復による自然増収もあり、内閣府はGDPが年3%の名目成長を続ければ、増税なしでも目標達成が可能だとの試算を発表している。しかし、この1〜3月期の名目成長率は2.1%に過ぎず、3%成長には程遠い。税収の自然増に頼る財政再建には危うさが漂っている。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[金融市場]

(1)ゼロ金利解除1年、金利上昇じわり浸透(7/12) ***

 日本銀行が5年以上続けたゼロ金利を昨年7月に解除してから、14日で丸1年になる。預金金利や住宅ローン金利、企業向け貸出金利など、さまざまな金利がじりじりと上昇し、家計や企業にも金利復活が浸透してきた。当初懸念された景気失速を回避したが、物価や景気の回復はなお万全とは言えず、ゼロ金利解除をめぐる評価は現在も分かれている。

 ゼロ金利解除は、異例の超低金利政策から脱し、金利の上げ下げで景気をコントロールする本来の金融政策を取り戻すことが狙いだった。日銀は、短期金利の誘導目標を昨年7月にほぼ0%から年0.25%にし、さらに今年2月に年0.5%まで引き上げた。

 解除から1年が経過し、預金やローンなど各種金利は次第に上昇し、代表的な長期金利である10年物国債の流通利回りは、4月末の1.6%強から現在は2%近くまで上昇している。解除直前の昨年7月に年0.001%だった普通預金の平均金利は、今年3月に0.196%まで上昇し、95年5月の水準を回復した。定期預金の金利も上昇しており、りそな銀行のスーパー定期では、1年物の金利は昨年7月の年0.08%から年0.35%へと大きく上昇した。

 家計には金利収入が増える反面、住宅ローンの金利上昇などで負担感もある。3大銀行の住宅ローン金利は、7月から一斉に引き上げられる。しかし、第一生命の試算では、全世帯の差し引きの恩恵は、12,000円の計算だが、実感が薄いのが実情だ。

 企業向け貸出金利も上昇傾向にあるが、2極化している。代表的な短期プライムレート(貸出期間1年未満)は、主要行の平均で見ると、昨年7月の年1.375%から年1.875%まで上昇した。ただ、輸出関連などで業績が好調な企業では、銀行間の奪い合いのため、1%未満で貸している銀行もある状況となっている。一方、業績不振が目立つ地方の零細企業には、3%を上回るケースもあり、金利の引き上げ交渉に応じない企業には銀行が融資を引き揚げることもあるという。

 日銀は2000年8月にもゼロ金利解除を断行したが、その後景気失速となり再びゼロ金利に戻すという失態を演じた。そのため、昨年の解除以降の景気への影響を最も懸念していた。しかし、緩やかな景気拡大を続けており、目立った懸念は出ていない。実質GDP成長率も、今年1〜3月期まで9四半期連続でプラスを維持するなど堅調だ。

 しかし、5月に4ヶ月連続で消費者物価指数が前年同期比でマイナスとなるなど、完全なデフレ脱却には至っていない。もう少し待てば物価も安定し景気回復もはっきりしたはずで、ゼロ金利解除は早すぎたとの批判もある。ゼロ金利解除の評価は今後の経済情勢にかかっているといえそうだ。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]