12月第3週(12/9〜12/15)(最高3つの*)

メインテーマ: 「12月の日銀短観、三つの不安、景気ぐらり」
その他のテーマ: 「与党税制改正大綱、消費税上げ時期示さず」
「欧米中銀資金供給へ、サブプライムの影払拭へ」

[景気動向]

(1)12月の日銀短観、三つの不安、景気ぐらり(12/15) ***

 日本銀行が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(12月短観)は、業況判断指数(DI)が大企業・製造業で3四半期ぶりに悪化するなど、景気の足元がぐらつき始めていることを示した。日本経済は、原油高、サブプライムローン問題、改正建築基準法というトリプルパンチに見舞われており、最近の景気指標でも景気の減速傾向が表れはじめた。

 大企業・製造業の業況判断DIが、05年9月以来となるプラス19まで落ち込んだ三つの要因のうち、最も大きいのは原油価格の高騰だ。12月短観の調査期間中(11/12〜12/13)、原油価格は一時1バレル=99ドル超まで上昇した。化学、運輸、電気・ガスなど幅広い業種で景況感が悪化した。高止まりする原油価格は、灯油やガソリン価格の上昇を通じ家計を直撃し始めている。今後、個人消費の減少などに波及すれば、小売り、飲食店・宿泊などのサービス産業にも拡大しかねない。

 建築確認審査を厳しくした改正建築基準法の施行の影響も深刻だ。不動産、建設、その関連産業の景況感は、軒並み悪化した。

 さらに追い討ちを掛けるのが、サブプライム問題だ。欧米の主要中央銀行が、異例の資金供給策を発表したが、市場では抜本改革につながらないとの見方が多い。アメリカへの実体経済への打撃を懸念する見方も出ている。アメリカ経済への減速懸念は、業績が好調な輸出関連業種の間で特に強まっている。これら業種の3ヵ月後の景況感は、大幅に悪化すると予想されている。

 一方で、日銀は、12月短観でも大企業の設備投資計画や収益計画、雇用などは引き続き堅調だったことから、緩やかな景気拡大が持続しているとの現状判断は変えていない。しかし、景況感が悪化している状況下では、利上げ判断は事実上不可能との判断が大勢である。


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[財政]

(1)与党税制改正大綱、消費税上げ時期示さず(12/14) **

 自民、公明両党の税制調査会が決定した08年度の税制改正大綱は、福田首相が08年度の消費税率引き上げを見送ったため、消費税を含む抜本的な財政改革がどうなるかが焦点となった。しかし、消費税を増え続ける社会保障費の主要な財源とすることは明記したが、肝心の引き上げ時期は明記しなかった。

 消費税は、景気が悪化すると税収が落ち込む法人税や所得税よりも税収が安定している。先進諸国の多くが社会保障費に充てており、欧州連合(EU)の加盟国は、消費税に当たる付加価値税の税率が軒並み15%以上だ。税率が1ケタの国は、日本やシンガポールやカナダなどわずかだ。本格的な社会保障の財源とするには、税率の大幅な引き上げは避けられない。09年度から基礎年金の負担割合を現行の3分の1強から2分の1に引き上げるには、消費税率で1%にあたる2.5兆円の財源が必要だ。

 保険料を40年間納めると、月額約6万6,000円支給される基礎年金は、国の負担割合を引き上げないと、年金支給の元手である積立金は2049年度に底をつく。このため、04年度に政府は、消費税など安定した財源を確保した上で、国庫負担を引き上げる方針を決めた。

 公明党は消費税を使わなくても国庫負担割合を2分の1に近づけられるとして、今年6月の個人住民税の定率減税廃止で増えた税収を、基礎年金に回すように主張した。自民党は国債の返済に充てるべきとして難色を示したが、結局は増収分の1,356億円を基礎年金に回し、国庫負担割合を現在の36.5%から37.3%にすることで折り合った。消費税率引き上げに抵抗感が強い公明党に配慮した決着だが、政府内では、引き上げには慎重になるべきだとする意見がますます強まりかねないと警戒する声が上がっている。


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[国際金融市場]

(1)欧米中銀資金供給へ、サブプライムの影払拭へ(12/13) **

 アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など欧米の5中央銀行が、協調して新たな資金供給策を打ち出したのは、サブプライムローンに端を発した国際金融市場の混乱を拡大させないとのメッセージを発信する狙いがある。11日のアメリカの利下げに失望売りを浴びせたニューヨーク株式市場も、資金供給策の電撃発表を好感してダウ平均株価は上昇に転じた。

 今回の資金供給策の最大の特徴は、通常各国の中央銀行が各国の実情に応じ行う市場調節を、大がかりに連携して実施する姿勢を打ち出したことだ。

 資金供給策は、サブプライム問題の影響で金融機関が短期金利市場で高い金利を払わないと資金を調達できなくなっている状態を解消する狙いだ。資金需要が高まる年末を控え、短期金融市場の金利が上昇傾向にあるため、アメリカではFRBが1ヶ月程度の期間の長い資金を幅広く提供できる措置を新たに導入した。

 欧州では、ドル資金の調達金利が上がっていることを考慮して、中央銀行同士が欧州通貨とドルを交換できる協定を結ぶという二段構えだ。

 FRBは11日に0.25%の利下げを行ったが、0.5%の引き下げを予想する見方が大勢だったことから、ニューヨーク株式市場で株価の急落となった。この0.25%ショックが、欧米中央銀行の協調行動につながったとの見方がある。 

 また、欧米金融機関が短期資金を調達しにくくなっている背景には、金融機関のサブプライム関連損失がどこまで拡大するか疑心暗鬼になっているため、資金の出し手の警戒感が強まっている事情がある。


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