8月第5週(8/26〜9/1) メインテーマ:「ASEANと経済協定合意」(最高3つの*)


[EPA]

(1)ASEANと経済協定合意(8/26) ***

 難航していた日本と東アジア諸国連合(ASEAN)との経済連携協定(EPA)交渉は、全分野で大筋合意に達し、11月にシンガポールで開く首脳会議での署名に道筋をつけた。中国や韓国に先を越されたASEANとの関係で、日本は巻き返しの糸口をようやくつかみ、政府の目指す東アジア地域全体のEPAに向かい一歩前進した。

 日本は、ASEAN主要6カ国との2国間EPAで署名や締結にこぎつけているが、今回は日本にとり初の多国間協定となる。この最大の恩恵は、日本とASEANが一つの自由貿易圏を構成することだ。経産省は、日本のGDPを2兆円押し上げる経済効果があると試算している。

 05年4月に始まった交渉は当初から難航した。ASEAN加盟国に自動車や鉄鋼の関税撤廃を迫りながら、農林水産品では市場開放を渋る日本に対し、ASEAN側に不信感が高まったためだ。結局、日本側は、輸入額の90%の品目で協定発効後直ちに関税を撤廃するという思い切った譲歩を示し、ようやく交渉がまとまった。

 日・ASEANのEPAは、日本が提唱した東アジアEPA構想への重要な布石となる。この構想は、日中韓、ASEAN,インド、豪州、ニュージーランドの16カ国でFTAを柱とするEPAを締結する内容だ。ASEANは、すでに中国、韓国とFTAを発効しているほか、インド、豪州、ニュージーランドとも交渉中で、東アジアEPAの扇の要となりつつある。これに加え、日本とインド、日本と豪州など横串となるEPAの締結も進めば、アジア地域の経済統合は進む。

 ただ、日本は、今回の交渉でも米、麦などの農産品を除外した。今後も同じ措置を続けることは、農産品輸出国である豪州などとのEPA交渉では難しくなっており、東アジアEPAへの障害ともなりかねない。日本が農業で大胆な政策転換ができなければ、東アジア経済統合の主導権を中国に握られる可能性も高まりそうだ。

[日本・ASEAN経済連携協定の骨子]
日本側の措置

・輸入額の90%以上の品目で関税を即時撤廃。5年以内に92%以上、10年以内に93%以上に撤廃品目を拡大

・輸入額の6%の品目は関税率を50%以下に削減

・米、麦、牛肉など輸入額の1%の品目は関税撤廃・削減の対象外に

・ASEAN地域の投資環境の整備を支援

・ASEAN地域内の知的財産権保護に協力、ASEAN統合の深化、格差是正を支援

ASEAN側の措置

・ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの6カ国は輸入額および品目数の90%以上で関税を10年以内に撤廃

・ベトナムは輸入額または品目数の90%以上で15年以内に関税撤廃。カンボジア、ラオス、ミャンマーは85%以上を18年以内に撤廃


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