8月第3週(8/12〜8/19) メインテーマ:「FRB、不安阻止へ電撃利下げ」(最高3つの*)
(1)勤続長いほど賃金に差(8/18) ***
経済財政白書は、パートなど非正規社員として働き続ける期間が長くなるほど、正社員との賃金格差が広がっていくと分析している。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査を下に、正社員と非正規社員の平均年収を勤続年数別に調べたところ、勤続4年以下では、正社員は非正規社員の1.4倍であった。勤続10〜14年では1.6倍、25〜29年では2.0倍と、勤続年数が長いほど拡大する。原因として白書は、非正規社員は正規社員より、同じ職場で働き続ける年数や時間が短く、仕事の熟練度が正社員ほど高まらない傾向にあると指摘した。
しかし、職務が正社員とほとんど同じパートがいるとする事業所が4割を超える。白書は、同じ仕事をしているのに処遇に差があると、労働意欲を損なうと懸念を示し、同一労働・同一賃金の確立や、非正社員への教育・研修制度の充実が必要と訴えている。
(1)景気一致指数、3ヶ月連続50%超え(8/7) ***
内閣府によると、6月の景気動向指数(速報値)は、景気の現状を示す一致指数が77.8%となり、景気判断の分かれ目となる50%を3ヶ月連続で上回った。企業の生産に関する指標が回復したためだ。内閣府は、このところ改善を示す水準にあるとの基調判断を示した。改善との表現は2ヶ月連続だ。一致指数は1〜3月に50%を割り込んでいたが、その後の持ち直しで景気回復が続いていることを示した。
一方、半年程度先の見通しを示す先行指数は、80.0%となり1年ぶりに50%を上回った。
(1)07年度経済財政白書(8/8) ***
2007年度の経済財政白書は、副題に「生産性上昇に向けた挑戦」とし、少子高齢 化の中で経済成長を続けるためには、企業が一層生産性を高める必要があると訴えた。 戦後最長の景気回復を続ける日本経済の現状については、企業部門から家計部門への波 及が緩やかになっていると懸念を示した。賃金伸び悩みの背景にある非正規社員の増加 と格差問題を分析している。
(a)M&A企業7割「検討」
上場企業を対象にしたアンケート調査では、生産性を上昇させるために合併・買収(M &A)を検討すると回答した企業が7割を超えた。収益性の高い企業ほどM&Aに積極 的である。一方、自社が敵対的買収の標的になることは、50.8%の企業が「弊害が 多いため避けたい」と考えていることが分かった。「上場企業であれば当然」と答えた企 業は、20.5%にとどまった。具体的な弊害は、「意図しない経営戦略の転換を余儀な くされる」(79.1%)、「長期的視点に立った経営戦略が困難になる」(68.2%) が、上位に挙がった。
(b)上がらない賃金
雇用は改善しているのに賃金が上がらない原因については、パートやアルバイトなど の非正規社員の増加などを列挙した。
まず、賃金の低い非正規社員の割合が増えているため、一人当たり賃金は、06年から四半期ごとに前年同期比で0.2%程度押し下げられていると試算した。また、高賃金の団塊の世代の大量退職では、60歳以降に働かない場合、全労働者の賃金を06年7〜9月期から四半期ごとに前年同期比で0.2%強、押し下げる要因になる。民間に比べ高かった地方公務員の賃金引下げも、全体の賃金伸び悩みの原因と指摘した。
また、景気回復が輸出主導であることも目を向けた。輸出が国内の雇用を生み出す効果は、消費や民間・公共投資に比べ低い。このため、企業収益が好調でも、賃金に波及しないと分析した。
デフレからの脱却が遅れていることも、賃金が伸び悩む一因であるとした。日本で消費者物価が上がらないのは、サービス価格の横ばいが続いているためだとした。サービス業で賃金が上がれば、人件費コストが上昇してサービス価格に波及し経済全体として安定的に物価が上昇するとした。
(c)格差の是正
白書は、各国の格差是正の取り組みとして、課税などによる所得の再分配効果を挙げた。各国とも、税収を年金や医療、生活保護などの社会保障給付に振り向けている。この再分配の割合が高いほど、格差是正に効果が出ているとされる。
高福祉・高負担の北欧諸国は、再分配率が30%を超え、市場経済型のアメリカは16.7%(2000年)で、日本は02年の統計で23.5%だった。海外の事例を参考に、社会保障給付と所得税の税額控除(納税額から一定額を差し引いて税金の額を軽減)の組み合わせにより、低所得層の労働意欲を高める政策を日本でも検討すべきだと提言した。