8月第2週(8/5〜8/11) メインテーマ:「07年度の労働経済白書」(最高3つの*)


[雇用情勢]

(1)07年度の労働経済白書(8/6) **

 今年の労働経済白書は、「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)と雇用システム」について特集し、政労使が緊密に連携し、実現に向け積極的に取り組むことが望まれる。しかし、仕事も仕事以外の時間も充実させたいと願っても、雇用が安定し、時間や家計に余裕ができなければ実現は難しい。そして、深刻な格差問題を抜きに論じても、説得力はない。白書も、こうした点を踏まえ、様々な課題を挙げている。

 若者の間では、パートなど不安定な就労を繰り返す人が増えている。25歳から34歳の間でも、正社員は、この10年で約9割から7割台半ばまで低下した。正社員の賃金は50歳代前半まで上昇するが、非正社員は長く勤続してもあまり変わらない。これでは将来展望も描けず、仕事と生活の調和も実感のしようがない。

 男性の正社員を中心に、35歳から49歳までの層で週60時間以上の長時間労働をする人の割合が増えている。白書は、これでは育児などで夫の協力は難しく、女性の就労も進まないと指摘する。また、私生活が犠牲になったり心身に響いたりするほどの長時間労働は、早急に改めていくべきだ。

 90年代後半からの景気低迷で、行政も労働団体も雇用の維持や創出に目が向き、非正社員や労働時間の問題を置き去りにしてきた。企業の営業利益のうち、賃金に回る労働分配率も02年から低下傾向にあり、消費にマイナスの影響を与えている。

 政府は、ワークライフバランスを推進するための憲章と行動指針を年内に策定する方針だ。今春闘でも、その必要性が労使双方から提起された。景気の拡大が続く今が、その好機である。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[景気動向]

(1)景気一致指数、3ヶ月連続50%超え(8/7) ***

 内閣府によると、6月の景気動向指数(速報値)は、景気の現状を示す一致指数が77.8%となり、景気判断の分かれ目となる50%を3ヶ月連続で上回った。企業の生産に関する指標が回復したためだ。内閣府は、このところ改善を示す水準にあるとの基調判断を示した。改善との表現は2ヶ月連続だ。一致指数は1〜3月に50%を割り込んでいたが、その後の持ち直しで景気回復が続いていることを示した。

 一方、半年程度先の見通しを示す先行指数は、80.0%となり1年ぶりに50%を上回った。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[総合]

(1)07年度経済財政白書(8/8) ***

 2007年度の経済財政白書は、副題に「生産性上昇に向けた挑戦」とし、少子高齢 化の中で経済成長を続けるためには、企業が一層生産性を高める必要があると訴えた。 戦後最長の景気回復を続ける日本経済の現状については、企業部門から家計部門への波 及が緩やかになっていると懸念を示した。賃金伸び悩みの背景にある非正規社員の増加 と格差問題を分析している。

(a)M&A企業7割「検討」

 上場企業を対象にしたアンケート調査では、生産性を上昇させるために合併・買収(M &A)を検討すると回答した企業が7割を超えた。収益性の高い企業ほどM&Aに積極 的である。一方、自社が敵対的買収の標的になることは、50.8%の企業が「弊害が 多いため避けたい」と考えていることが分かった。「上場企業であれば当然」と答えた企 業は、20.5%にとどまった。具体的な弊害は、「意図しない経営戦略の転換を余儀な くされる」(79.1%)、「長期的視点に立った経営戦略が困難になる」(68.2%) が、上位に挙がった。

(b)上がらない賃金

 雇用は改善しているのに賃金が上がらない原因については、パートやアルバイトなど の非正規社員の増加などを列挙した。 

 まず、賃金の低い非正規社員の割合が増えているため、一人当たり賃金は、06年から四半期ごとに前年同期比で0.2%程度押し下げられていると試算した。また、高賃金の団塊の世代の大量退職では、60歳以降に働かない場合、全労働者の賃金を06年7〜9月期から四半期ごとに前年同期比で0.2%強、押し下げる要因になる。民間に比べ高かった地方公務員の賃金引下げも、全体の賃金伸び悩みの原因と指摘した。

 また、景気回復が輸出主導であることも目を向けた。輸出が国内の雇用を生み出す効果は、消費や民間・公共投資に比べ低い。このため、企業収益が好調でも、賃金に波及しないと分析した。

 デフレからの脱却が遅れていることも、賃金が伸び悩む一因であるとした。日本で消費者物価が上がらないのは、サービス価格の横ばいが続いているためだとした。サービス業で賃金が上がれば、人件費コストが上昇してサービス価格に波及し経済全体として安定的に物価が上昇するとした。

(c)格差の是正

 白書は、各国の格差是正の取り組みとして、課税などによる所得の再分配効果を挙げた。各国とも、税収を年金や医療、生活保護などの社会保障給付に振り向けている。この再分配の割合が高いほど、格差是正に効果が出ているとされる。

 高福祉・高負担の北欧諸国は、再分配率が30%を超え、市場経済型のアメリカは16.7%(2000年)で、日本は02年の統計で23.5%だった。海外の事例を参考に、社会保障給付と所得税の税額控除(納税額から一定額を差し引いて税金の額を軽減)の組み合わせにより、低所得層の労働意欲を高める政策を日本でも検討すべきだと提言した。     


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]