4月第3週(4/15〜4/21)「日本のFTAの世界戦略急務、中韓に大きく出遅れ」(最高3つの*)


[景気動向]

(1)GDP推計法見直しへ(4/18) **

 大田経済財政相は、内閣府が発表するGDPの推計方法を見直す方針を明らかにした。成長率などを示すGDP統計は、四半期ごとに速報値と改定値を、年末に確報値を発表しているが、速報値などの大幅な修正が行われ、政府内でも問題視されてきた。内閣府は、有識者検討委員会を開き、速報値の精度を高める方策を論議する。早ければ、8月発表の4〜6月期GDP速報値から反映させる。

 今回、推計方法の見直しを決めたのは、昨年12月に発表した05年度の実質GDP成長率の確報値が2.4%と、同11月に発表した速報値3.3%から0.9%も大幅に下方修正されたのがきっかけだ。景気認識の変更は、企業の設備投資や個人消費の行方、さらには日銀の追加利上げの判断にも影響を及ぼすだけに、大田経済財政相は「見過ごせない乖離だ」として、見直しを指示した。

 速報値と確報値が違った数字になるのは、異なる統計データを使っているためだ。たとえば、速報値では主な生産側の統計として、毎月発表の生産動態統計を90品目に分類して使っているのに対し、確報値では年次統計の工業統計表などから約2,000品目を基礎データにしている。また、速報値の1ヵ月後に新データを追加して算出される改定値では、06年7〜9月期の実質GDP成長率が0.3%も下方修正された。法人企業統計など振れの大きい追加データが影響している。

 今後は、速報値や改定値の推計の際、別の統計データを採用したり、追加するなどして、精度を高めることが課題となる。ただ、利用できるデータは限られており、大規模な見直しは難しいとの見方もある。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[為替レート]

(1)円急落、対ユーロ162円台(4/17) **

 16日の東京外国為替市場では、G7が現在の円安傾向を追認したとの観測から、円相場が急落した。一方、株式市場は、世界経済の順調さを確認したG7声明を好感して大幅に反発し、1万7,600円台を回復した。

 円の対ユーロ相場は、一時1ユーロ=162円43銭まで下落し、99年の導入以来の円の最安値を更新した。円は、対ドルでも反落し、一時世界同時株安が発生した2月末以来の円安水準となる1ドル=119円72銭まで売られた。G7声明に円安をけん制する文言が盛り込まれず、低金利で調達した円を高金利の外貨に換えて投資する「円キャリー取引」が再び活発化し、円売りが加速するとの見方が強まった。

 東京株式市場では、円安で収益拡大が見込める自動車や電機、精密機器など輸出関連株を中心に全面高となり、日経平均の上げ幅は一時330円を超えた。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[FTA]

(1)日本のFTAの世界戦略急務、中韓に大きく出遅れ(4/19) ***

 日本が東南アジア諸国連合(ASEAN)と経済連携協定(EPA)締結で大枠合意したことは、アジアに展開する日本企業の利益拡大につながるとともに、政府が目指す「東アジアEPA構想」に向け、大きな前進となった。しかし、韓国はすでにASEANと自由貿易協定(FTA)を一部締結しているほか、アメリカとの協定にも合意しており、日本はFTA・EPAにおいて大きく出遅れている。

 自動車部品や薄型テレビなどは、日本と東南アジア諸国での分業が進んでいる。そして、部品や製品が移動するたびに関税がかかる。EPAを結ぶと、これらの関税が撤廃され日本企業はASEAN域内での分業がやりやすくなる。 さらに、日・ASEANのEPAは、日本が提唱する東アジアEPA構想に向けたステップとされる。東アジアEPA構想は、日中韓とASEAN10カ国、インド、豪州、ニュージーランドの計16カ国がFTAを柱とするEPAを締結するものだ。しかし、FTA・EPAの構築では、日本は中国や韓国に遅れをとっている。 韓国は、経済大国とのFTA締結を戦略的に進め、今月2日にはアメリカとの大筋合意にこぎつけた。5月には、EUとのFTA締結に向けた第1回交渉をソウルで開く。EUは、自動車で10%、薄型テレビで14%と一部の工業品に高関税をかけているため、EUと韓国のFTAが実現すれば、日本製品が欧州で競争力を失う可能性もある。

 中国もすでにASEANと物品のFTAを発効し、サウジアラビアなど中東6カ国の湾岸協力会議やオーストラリアなど資源国とのFTA提携に戦略的に取り組んでいる。  この出遅れた背景には、世界貿易機関(WTO)中心の自由貿易体制づくりを中心としてきたため、日本に世界全体を見渡したFTA戦略が欠けていたとの見方がある。日本は、東南アジア以外の国とのEPA網戦略の構築には至っていないとの見方がある。

 ただ、日本の農業の貿易自由化ができなければ、世界戦略も画餅に帰す恐れがある。その試金石が、23日から始まる日豪交渉だ。ここで、国内農業の構造改革に着手できれば、農業大国アメリカや中国とのFTAも視野に入ってくる。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[世界経済]

(1)G7声明、世界経済の楽観論に潜むリスク(4/15) ***

 ワシントンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、「世界経済はリスクは残るが、過去30年超でもっとも力強く拡大している」とする共同声明を採択した。

 アメリカは持続可能な成長に緩やかに減速し堅調だとし、日本は景気回復が軌道に乗って継続すると分析し、欧州も健全に上昇すると明記した。今のところは、世界経済は順調に推移しているという認識だ。

 市場に潜むリスクに警鐘をならした前回2月のG7声明直後に、上海市場の株価下落をきっかけに世界同時株安が起きた。現在は、日米などの株価は、同時株安前の水準に戻っている。G7各国は、市場がリスクを認識して自立的に調整したと評価する。

 一方で、世界の株式市場が再び混乱する恐れは消えていない。リスクへの警戒は怠れないとしている。

 最大の懸念材料は、減速気味のアメリカ経済だ。アメリカでは、住宅バブルが弾け、サブプライムという信用力が低い個人を対象にした住宅ローンの焦げ付きが急増している。ローンを扱う金融専門会社の経営破たんも相次いでいる。影響は限定的ではないかとの見方もあるが、まだ断定はできない。日本経済についても、最近企業の景況感にはやや陰りが見られる。楽観論のとおりに世界経済が拡大するのか。各国の政策の舵取りが問われる。

 為替相場に関しては、1ユーロ=161円台と対ユーロで最安値が続く円安の是正には触れなかった。市場は、現行水準の追認と受け止めるだろう。一段の円安加速に注意したい。

 声明は国を名指ししなかったが、内需の強化にも触れた。日本は円安に伴う過度な輸出増に依存せず、内需主導による景気回復を実現する必要がある。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[WTO]

(1)WTO輸出国グループ「日米欧、農業分野解放を」(4/19) **

 豪州、ブラジルなど農産物輸出国19カ国でつくるケアンズ・グループは、閣僚会合後に、世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンドの年内妥結に向け、日米欧を名指しして、農業分野の市場開放を促す共同声明を発表した。

 交渉の成否の鍵を握る農業分野で、農業補助金の大幅削減に抵抗し交渉を停滞させたアメリカが譲歩の構えを見せ、対立していた欧州連合(EU)も歩み寄りを見せ始めている。ただ、アメリカは自ら農業補助金を削減しても、有力途上国の市場開放が不十分な内容に終わることを警戒している。そのため、途上国代表のインドやブラジルの取り込みを図っている。

 日本は、これを日本外しの動きと警戒する。5月下旬の東京での主要6カ国・地域(G6)の閣僚会合では、日本はEUやインドを見方にして巻き返しを図る構えだ。しかし、共催相手の豪州は、全農産品に課す関税を一定以下に抑える上限関税の設定を求めるケアンズ・グループのリーダーで、日本と反対の立場だ。日本は、農産物輸出国などの関心事に配慮しつつ、自らの主張も通すという役回りをこなすという必要に迫られている。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]