11月第1週(10/29〜11/4) メインテーマ:「早期利上げ観測再燃」(最高3つの*)


[競争政策]

(1)改正独禁法、見直し本格化(10/31) **

 今年1月に施行した改正独占禁止法の見直し論議が早くも本格化してきた。公正取引委員会が、独禁法違反に対する処分の是非を自ら判断する「審判」制度は必要か、公取委が課す「課徴金」と刑事罰である罰金が並存してよいかなどが主な論点である。この2点については、日本経団連と公取委が鋭く対立している。

 改正の際に、公取委が盛り込んだ課徴金増額などに対し、経団連が強硬に抵抗したため、付則で2年以内の見直しを確約することになった。これを受け、昨年9月から見直しの協議が内閣府で進められていた。来年6月末をメドに報告書をとりまとめ、公取委は08年通常国会に独禁法改正案を提出する予定だ。

 論点の一つは、現在の審判制度は、公取委が検察官と裁判官の一人二役を兼ねるのと同じで、公正な審査・審判が行なわれているのかどうか不信感がぬぐえないと、経団連は主張する。審判を廃止して、不服申し立ては裁判手続きに委ねるべきであるとする。一方、公取委は、審査官と審判官が、専門分野に対する豊富な知見があり、現行法を見直す必要性はないと現状維持を主張している。審判官7人のうち、法曹関係者が3人含まれ、独立・中立性が保たれているとする。

 ただ、アメリカでは、連邦取引委員会(FTC)の処分に対する不服申し立ては裁判所で処理される。イギリス、フランス、ドイツなども同様だ。経済産業省も、経団連と同じく審判制度の廃止を主張しており、公取委の旗色は悪い。

 論点の二つ目は、違反企業に課徴金を加え、刑事罰の罰金を科す「二重処罰」が必要かどうかだ。経団連は、課徴金への一本化を求めている。国際的に並存が例外的である上、憲法で禁止する「二重処罰の恐れがある」

 欧州連合では課徴金制度、アメリカは刑事罰を採用するなど、一本化が世界の潮流であるが、100億円以上の課徴金や罰金、さらに実刑判決もあり、独禁法違反への制裁は重い。日本では、課徴金は最高で約24億円にとどまり、制裁としては力不足という指摘も、公取委が課徴金と罰金の並存を主張する根拠となっている。


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[金融政策]

(1)早期利上げ観測再燃(11/1) ***

 日本銀行が発表した「経済・物価情勢の展望」は、経済・物価の両面で追加利上げの環境が整いつつあることを明示し、福井総裁も「日本経済は着実に前進していけると確信している」と強気の認識を繰り返した。追加利上げの地ならしとも取れる発言により、早期利上げ観測が再燃し始めた。

 今回のリポートで目を引くのは、7月のゼロ金利解除後も、日銀は、日本経済の拡大基調に自信を深めている点である。金融政策のカギを握る消費者物価指数の伸び率についても、基準改定により下方修正したが、前年比のプラス幅は次第に拡大するとの見方を堅持した。

 市場では、最近の生産、消費統計やアメリカ経済指標などを材料に追加利上げ観測が後退していただけに、「12月か1月の金融政策決定会合での利上げもあり得る」という声も出始めた。

 しかし、日銀が追加利上げに踏み切るのは簡単ではない。好調な企業部門の収益が家計部門に波及するかどうかは日銀内部にも疑問視する声がある。消費者物価指数が順調にプラス幅を拡大することに懐疑的なエコノミストも少なくない。安倍首相も、景気を腰折れさせかねない利上げに難色を示すのは必至だ。


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(2)「新生足銀」へ8条件(11/3) **

 金融庁は、03年末に経営破たんして国有化されている足利銀行の受け皿候補の公募を始めた。足利銀行は、預金、貸出とも栃木県内での市場占有率が44%と最も高い。 募集要領で示した8条件は、地域のしらがみにとらわれない質の高い経営管理体制や財務の健全性、地域経済への貢献など、買収金額だけでなく、多角的な観点から受け皿を選定する方針が示された。最終決定は、来年夏になる見込みである。山本金融相は、地元に抵抗感がある外資も含め、幅広く応募を受ける考えを示した。

 金融庁にとり、公的資金による負担をいかに減らすかも重要な課題である。公募要領にも「足利銀行の企業価値の適正評価」が、盛り込まれた。足利銀行の債務超過額はピーク時に7,000億円近かったが、今年3月末で3,800億円まで減少した。金融庁は、公的資金の投入に加え、受け皿が用意した資金で債務超過を埋めることを狙っている。さらに、銀行経営の健全性を示す自己資本比率を6〜8%程度まで引上げることが必要で、そのためには、受け皿には3,000〜4,000億円の資金が必要とされる。有力候補はいずれも資金調達にはメドをつけつつあり、足利銀行の価値について、どのような評価を示すかが注目される。

自己資本比率については、「重要30用語」参照)


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