10月第4週(10/22〜10/28) メインテーマ:「中国投資過熱続く」(最高3つの*)
(1)りそな業績予想上積み、主因は繰り延べ税金資産(10/27) **
りそなホールディングスは、06年9月中間期決算の業績予想を上方修正し、5月時点の予想から2,850億円多い4,500億円に引上げると発表した。業績の回復を受け、繰り延べ税金資産の計上計画を、従来の1年分から他の大手行並の5年分に拡大できるようになったことが主因である。
会計ルールでは、銀行が不良債権処理のために貸し倒れ引当金を積んでも、損失処理が確定するまで税務上の損金と認められない。このルールだけでは、不良債権処理が進めにくい。このため、損失額の確定により税金の前払い分が戻ってくると想定し、この繰り延べ税金資産を自己資本に組み入れられる仕組みとなっている。ただ、計上できる範囲は、銀行の健全性に応じ差がある。りそなの場合、経営が悪化した03年に、監査法人が繰り延べ税金資産の計上額が過大と指摘、自己資本不足に陥り国有化につながった。
りそなは、リストラを進めるなどして、経営健全化を進めた結果、06年3月期連結決算では2期連続の黒字となる3,832億円の税引き後利益を計上し、約5年半ぶりの復配を果たした。これを受け、監査法人が他行並みの計上を認めたため、07年3月期の繰り延べ税金資産が2,500億円を超える見込みとなった。 ただ、大手行が軒並み公的資産を完済する中で、りそなは2兆9,000億円の公的資金を抱えたままだ。今後は、返済の道筋を早期に示すことが求められそうだ。
注.繰り延べ税金資産:貸し倒れ引当金は、融資先が倒産し損失が確定した時点で課税所得から控除できる。このように、将来戻ってくる税金を資本に上乗せできる。この上乗せ分が、繰り延べ税金資産である。ただし、今後5年間に見込まれる納税額が上限である。
(1)金利据え置き、FRBは「緩やかに拡大」(10/27) **
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利の据え置きを決めた後の声明に「今後は緩やかなペースで拡大するだろう」との表現を加え、アメリカ経済の軟着陸に自信をみせた。当面は金利据え置きの見方で市場は一致しているが、その後は利上げ説と利下げ説が並存している。FRBの次の一手が、大きな意味を持ちそうである。
FRBは、景気認識で、年間を通して引き続き、成長は景気減速してきたとの見方を示したが、9月に比べ減速観は弱まっているとのニュアンスを打ち出した。さらに、今後は「緩やかに拡大するだろう」と付け加えた。この背景には、9月の住宅着工件数が年率換算で前月比5.9%増と、4ヶ月ぶりに前月水準を上回るなど、部分的に持ち直しとも読みとれる統計が出始めていることがある。ただ、7〜9月期の実質GDP成長率は、前期比の年率で2%程度の低成長と予測されており。楽観的な見通しばかりではない。
市場では、当面の金利据え置き後の政策に関しては、見方が大きく分かれている。これは、アメリカ景気が分岐点を向かえているとの見解を示している。
(1)中国投資過熱続く(10/24) ***
中国の7〜9月期の実質GDP成長率は、前年同期比で10.4%と、4〜6月期の同11.3%よりは減速した。しかし、固定資産投資や輸出の勢いは依然として強く、政府目標の8%を大きく上回る高成長が続いている。経済のソフトランディング(軟着陸)を図るため、中国は今後も微妙な経済運営を迫られる。
1〜9月の固定資産投資は、同27.3%増と1〜6月の29.8%増よりはやや減速した。特に、都市部の不動産開発など固定資産投資が鈍化した。
中国は4〜8月にかけ、2度金融引締め政策を実施し、成長の勢いは抑制され始めたといえる。また、中国政府は、8月に、総投資額1億円以上の大型プロジェクトの全面的な見直しを求める通知を出した。自動車、電力などは、300万元以上のプロジェクトに拡大し新規投資を制限した。また、地方政府による土地使用権売却などを厳しく制限するなど、投資抑制を狙った行政指導を次々と打ち出している。行政指導が行なわれるのは、法定貸出金利が2度の引上げ後も6.12%に留まり、投資抑制の効果がほとんどないと見られるためである。
しかし、地方政府の幹部が、自らの実績作りのために中央の意向を無視して積極的な開発を進めているとの事情もある。投資が伸びやすい状況にあり、投資抑制策も「焼け石に水」との見方もある。
このまま投資の過熱傾向が続けば、不動産バブルと過剰な設備投資が崩壊し、景気が急失速する可能性も指摘される。