10月第2週(10/8〜10/14)メインテーマ:「3大銀行、公的資金近く返済、攻めに転換」(最高3つの*)


[雇用情勢]

(1)格差拡大、若者層に絞り対策急げー三浦展氏(10/11) **

 過去20年間、所得税の累進性を弱め、高額所得者の税金を安くしたので所得格差が広がった。格差問題が認識された後も、小泉政権は何もしなかった。しかし、安倍政権の格差を安定化させない再チャレンジ政策は、対策を若年層に絞った点は評価したい。30年前から若年者雇用が問題化している欧州各国に比べ、日本の若者対策は遅れている。フリーターを増やさないための職業教育なども足りない。

 30年前に比べ、30歳での所得格差は明らかに広がった。30歳で年収が1,000万円の人が結構いる一方で、100万円以下のフリーターもいる。将来、もっと開いていくだろう。若いうちに格差が広がると、盛り返そうというやる気が失われる。だから、若い人を対象にした対策が望ましい。

 子供がいるのに会社の倒産やリストラで困っているような人の所得対策はすぐに必要である。とにかく正社員になりたいという人は、できるだけ早く正社員にしてあげて、将来給料が上がる見通しが立つようにすることが大切である。しかし、独身で親に面倒を見てもらっているパラサイトで生活しているフリーターへの対策は少し中期的でもよいだろう。

 また、教育機会の格差が是正されないと、格差が親子間で受け継がれ、固定化、再生産される。そのため、教育予算を増やし、公立小中学校をレベルアップすることが必要である。

 安倍首相はフリーターを2割削減する公約を掲げている。景気が良くなり企業も雇用を増やしているから、フリーターは2割くらい自然に減るだろう。5割減を目指すべきである。団塊世代が大量に退職する2010年くらいまでの、あと4年がフリーターなどを正規雇用に切り替えるチャンスである。


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[金融市場]

(1)3大銀行、公的資金近く返済、攻めに転換(10/12) ***

 三井住友フィナンシャルグループが、11日に1,950億円の公的資金を返済し、残る500億円も近く完済する見通しとなった。これにより、計6兆6,500億円にのぼる巨額の公的資金を投入された3大メガバンクのすべてが、国からの経営管理状態を脱することになる。各グループとも、攻めの経営を目指して海外事業の展開などを目指している。

 三井住友は、公的資金の事実上の完済を受け、収益性の高い投資銀行業務をアメリカで本格展開するため、アメリカ金融持ち株会社(FHC)の免許取得の検討に入った。日系企業が、アメリカで発行する社債などの引き受け業務を獲得する狙いである。完済済みの三菱UFJフィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループも、FHC免許の取得の検討を進めている。将来、アメリカ証券会社の買収や、提携に発展する可能性もある。邦銀は、バブル期などに買収した米銀を不良債権処理などのために売却するなど、アメリカでの事業縮小を余儀なくされてきただけに、邦銀復活を印象づけそうである。

 みずほの前田社長は、今後グループの総合収益力の強化に取り組むと強調したが、こうした意識は他のグループにも共通している。ただ、各グループとも、法人部門では貸出競争が激しく、利ざや収入は伸び悩んでいる。このため、M&A(企業の合併・買収)の仲介など、投資銀行業務からの手数料収入をはじめとした収益の多様化が迫られている。

 個人向けでは、住宅ローンでの競争が激化している。三井住友銀行は、3大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)と診断されたらローン残高がゼロになる「三大疾病保障付住宅ローン」を大手行で初めて扱い、販売開始1年で残高は約2,000億円に達するヒット商品になった。

 さて、資本増強のために投入された公的資金の大半は、金融システム不安下の98年から02年にかけ国が優先株(議決権はないが配当が高い株式)を引受ける形で注入された。注入総額は12兆3,689億円にのぼるが、11日までの返済総額は約8兆500億円となった。国が得た優先株の売却益は1兆円に達した。

 三井住友フィナンシャル・グループの返済が完了すれば、大手行で公的資金が残るのは、三井トラストホールディングス(約4,000億円)と、りそなホールディングス(約2兆9,000億円)だけになるが、両グループとも3、4年で完済できそうである。株価も注入時より大きく値上がりしており、国の売却益はさらに増えると見られる。


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