11月第2週(11/5〜11/11)メインテーマ:「65歳以上の労働力人口、増加基調に」(最高3つの*)


[雇用情勢]

(1)65歳以上の労働力人口、増加基調に(11/6) ***

 総務省によると、65歳以上の労働力人口は9月に551万人と、過去最高になった。景気回復により、企業が高齢者の雇用に取り組み始めたためである。少子化で労働者の減少が進むのは必至で、厚生労働省は、労働力人口の減少を緩和するように、高齢者雇用を一層後押しする方針である。

 企業は、「団塊の世代」が大量退職する07年を目前に控え、高齢者を積極的に雇用し始めた。景気回復で新卒採用の競争が激しくなったためである。

 大企業もリストラ一辺倒から高齢者雇用の拡大へ方針を転換し、制度を整備している。川崎重工業など多くの大企業が定年年齢を延長している。苫小牧信用金庫は、定年退職者が70歳まで働ける制度をつくった。日本マクドナルドは、60歳定年制を廃止し、会社が働く意欲があると認めた社員は、年齢に関係なく働き続けられる仕組みになった。

 65歳以上の労働力化率(人口に占める労働力人口の割合)も、9月は20.9%と05年平均の19.8%を上回った。これまでは、高齢者の人口が増える中で、高齢者が多い農家や自営業者が減り、比率は低下しつづけてきた。しかし、こうした傾向に歯止めがかかりつつある。

 企業に65歳までの従業員への就労機会の提供を義務付ける改正高年齢者雇用安定法が4月に施行した。企業の制度整備に追い風である。また、厚生労働省は、失業手当や職業訓練の場を提供する雇用保険は65歳以上の人でも新規加入できるよう制度見直しに着手している。そして、老齢基礎年金の受給開始年齢を遅らせることで、年金の受給額が増える制度を用意した。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[自由貿易協定]

(1)米、東アジア統合を警戒(11/8) **

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳宣言案で、「アジア太平洋自由貿易地域」(ETAAP)を検討する方針が示されたのは、アメリカが宣言案に盛り込むよう強く主張したためである。アメリカは、東南アジア諸国連合(ASEAN)を軸に加速する東アジアの経済統合に警戒感を強めており、APECを活用してアジアへの関与を強めたい考えである。これに対し、中国やASEANの反発も予想される。

 アメリカが東アジアの通商戦略でAPECを重視するのは、中国がASEANとの自由貿易協定(FTA)などを通じてアジア地域での経済的な影響力を強めており、今のままでは、東アジアでアメリカ抜きの地域的な経済ブロックが形成されてしまうと懸念しているためだ。

 ASEANへの経済的な影響力を強めている中国は、アメリカの関与に反発を強めている。中国は、既にASEANと日中韓に絞った「東アジア自由貿易地域構想」を04年に提唱し、アメリカの動きに対し、APEC全体のFTAより先にASEANプラス3の自由化を進めるべきだと主張している。

 発展段階や自由化の度合いが大きく異なるAPEC加盟の21ヶ国・地域が、経済統合を進めるのは、相当の困難が予想される。

 APECは「緩やかな協議体」が特徴であり、条約ではない。しかし、アメリカが一部に拘束力を持たせるよう提案してきた。今後も、アメリカがAPECの機能を強化する動きを強めれば、APEC内の不協和音が強まる懸念も指摘される。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[競争政策]

(1)橋梁23社に罰金64億円(11/10) **

 旧日本道路公団(JH)などが発注した橋梁を巡る談合事件で、独占禁止法の不当な取引制限の罪に問われた橋梁メーカー23社への判決が、10日東京高裁で開かれた。裁判長は、「わが国を代表する大企業も多数含み、社会に与えた損害も甚大だ」として、23社に罰金6億4千万〜1億6千万、総額64億8千万円を言い渡した。罰金額は、これまで1億3千万円が最高であり、すべての社がこれを上回った。02年施行の独禁法改正で、罰金の上限が1億円から5億円に引上げられた。罰金額は起訴事実事に加算され、5億円を超える金額となった。元JH理事など8被告は、執行猶予つきの有罪判決とした。  

 裁判長は、「鋼橋業界の根深い談合体質に由来しており、長期間に渡り継続されたもので常習性が顕著だ」と非難した。高落札率で社会が受けた損害金については、「少なくとも落札価格の5%と見るのが相当」として、起訴された03、04年度の合計で約93億円とした。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]

[所得分配]

(1)格差拡大(11/11) ***

 帝国データバンクが10月下旬に実施した調査で、今回の景気拡大がいざなぎ景気を超える実感はないと答えた企業は、解答企業の77%に当たる7,584社に達した。企業からは、回復は一部の大手企業だけなどの声も多く寄せられた。

 今回の景気拡大は、個人消費の二極化も特徴である。高級腕時計や高額の日本画や工芸品の売れ行きがいい一方で、100円ショップも好調である。これは、個人の所得が二極化したため、それを反映し消費も二極化しているためと見られる。

 国税庁によると、年収300万円以下の民間給与所得者は、今回の景気拡大が始まった02年は1,559万人だったが、パートなど非正規雇用の増加で05年は1,692万人に増えた。そして、2,000万円超の高額給与所得者は17万人から21万人に増えた。非正規雇用は、02年から毎年約60万人のペースで増え、今年は働く人の約3分の1を占める。非正社員は低収入なうえに定期昇給もほとんどない。国内需要の拡大には、皆が安定した所得である必要がある。

 企業業績、消費、所得と、各分野で広がった格差は、景気回復の手応えを奪っている。


[先頭] [Home] [今週のトピック目次]