6月第3週(6/11〜6/17)「ゼネコン落札価格低下、独禁法改正が効果」(最高3つの*)


[財政]

(1)財政再建、不足17兆円どう埋める(6/13) **

 政府・与党が、政府の財政再建目標である2011年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化に向けた財源不足額を17兆円程度(その後医療制度改革法の成立により16.5兆円へと削減)と見込むことで合意し、今後は歳出削減と増税の組み合わせの具体策について議論が本格化する。ただ、16.5兆円を埋める歳出削減や増税には、与党議員らの反発が強く議論が難航しそうである。

 内閣府は、当初財源不足額を20兆円と見込んでいたが、16.5兆円に圧縮されたのは、景気回復による税収増を考慮すべきであるとする自民党の中川政調会長の思惑が強く反映されたためである。不足額は将来の消費税の引き上げに密接にかかわる。このため、増税額を抑えたい中川氏が不足額縮小にこだわった。政府・与党は、16.5兆円の半分以上を歳出削減で賄い、残りを増税額として示す方針である。

 これまでの政府・与党の削減論議では、公共事業費を今後5年間、毎年3%ずつカットし、計5.7兆円の削減で合意している。さらに、削減額を積み上げ、削減規模を最大で計13兆円程度まで拡大したい考えである。しかし、来年に統一地方選や参議院選を控える自民党議員の反発は強い。

 今回の議論がプライマリーバランスの黒字化だけに絞られていることを、問題視する声もある。債務残高の抑制にも配慮する必要がある。プライマリーバランスをわずかに黒字にしても、その後の長期金利が名目成長率を上回った場合、債務の利払い費が膨らみ、債務残高が増加するためである。財政難の抜本的解決の視点も望まれるといえよう。


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(2)医療制度改革法成立、入院から在宅中心へ(6/15) ***

 14日に成立した医療制度改革関連法には、少子高齢化に対応するための様々な医療費抑制策が盛り込まれている。

 その一つは、入院中心の医療から在宅中心の医療への転換である。日本の平均入院日数は36.4日で、アメリカの6.5日、イギリスの7.6日、フランスの13.4日などと比べ際立って長く、医療費の増加の要因とされる。政府は、2012年度までに長期療養の高齢者が入院する療養病床を現在の38万床から15万床に削減するとしている。70歳以上の入院中の食料や光熱費を自己負担にすることも、同関連法に盛り込んだ。ただ、参院厚生労働委員会では、療養病床の代わりとなる老人保健施設への適切な支援策、高齢者への負担増への配慮を求める付帯決議が可決された。

 一方、出産育児一時金は、10月から30万円が35万円に増額される。産休中の出産手当金も07年度から、現行の1日当たり賃金の6割相当から、ボーナスを含めた賃金の3分の2相当へと支給額が増えるなど、少子化への配慮も盛り込まれている。


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[競争政策]

(1)ゼネコン落札価格低下、独禁法改正が効果(6/14) ***

 1月の改正独占禁止法施行後、国土交通省の発注工事で、鹿島などゼネコン大手4社の落札率(予定価格に対する落札価格の割合)が低下している。昨年は平均97%であったが、今年1〜3月は79%に急落した。罰則を強化する改正独禁法の施行により、価格競争が起きている可能性が高い。落札率の低下は、公共事業費を削減できる。

 1〜4月の大手4社の落札額合計は、約657億円で、前年並みの落札率が続いた場合と比べ、発注者は140億円程度節約できた計算になる。


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[EU経済]

(1)EU憲法メド立たず、今日から首脳会議(6/15) **

 欧州連合(EU)の新基本条約であるEU憲法は、発効の可能性がほとんどない状況である。15日から開催されるEU首脳会議は、憲法後をにらんだ一歩になる可能性がある。

 憲法は、EUが25ヶ国体制に膨張し、そのための機構改革を柱とする基本条約である。最高意思決定機関の首脳会議(欧州理事会)に任期2年半の常任議長(EU大統領)を新設してEUの顔とするほか、EU外相も新設する。

 バローゾ欧州委員会委員長は、「現行の条文のまま憲法が発効すると考えるのは現実的ではない」との本音を表明した。昨年フランス、オランダが批准に失敗してから1年の熟慮期間を経て、ようやく欧州の将来に視線を向け、模索が始まったところといえよう。


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