7月第5週(7/23〜7/29) メインテーマ:「WTOのドーハ・ラウンド交渉凍結」(最高3つの*)
(1)WTOのドーハ・ラウンド交渉凍結へ(7/25) ***
世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉のドーハ・ラウンドで、主要6ヶ国・地域が参加した閣僚会合は、24日、歩み寄りが見られず事実上決裂した。WTOのパスカル・ラミー事務局長は、24日午後、全加盟国による首席代表者会合を開き、ラウンド交渉全体の凍結を事実上宣言する。
アメリカは、11月の中間選挙を控え、国内農業補助金の削減に関する新たな提案を打ち出せず、EUや日本も関税削減率に関する新たな譲歩案を示せなかった。29日から予定された集中討議も廃止し、当面の取組みを中止した。
アメリカで大統領に与えられている一括交渉権は来年6月に失効するため、年内に交渉が再開されてもアメリカが合意に参加できるかどうかは不透明で、凍結期間は2〜3年に及ぶ可能性が高い。
(2)先進国はFTA加速へ(7/26) ***
ドーハ・ラウンドが決裂し、今年末の最終合意を事実上断念した。各国の対立は解消されず、交渉は再開時期も未定のまま、凍結に追い込まれた。
WTOの加盟国・地域は現在150に達する。ラウンド交渉は、原則全会一致の合意が必要で、合意形成は極めて難しくなっている。交渉凍結で、今後、加盟国は、有望な貿易相手国との自由貿易協定(FTA)の交渉に軸足を移すと見られる。既に、欧米諸国はFTAの締結を加速させている。一方、WTO体制を重視する日本は出遅れており、新ラウンドが進まない過程では、FTAの推進も重要となる。ただ、途上国は、二国間のFTAと、多国間のWTOの双方からの枠組みから取り残され、世界的な貿易体制の恩恵を受けられなくなる懸念が強まる。
《日本のFTAの締結相手》 シンガポール、メキシコ、マレーシア、フィリピン(大筋合意)、タイ(大筋合意)
(1)GDP2.5%,アメリカ経済急ブレーキ(7/29) ***
商務省による発表で、06年4〜6月期の実質GDP成長率が前期比2.5%(年率換算)の低い伸びに留まった。市場では、8月8日の連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会での利上げ見送りの観測が高まりそうである。
成長率は、事前の市場予想の3.2%を大幅に下回った。特に、数年に渡りバブル相場であった住宅投資が、前期比6.3%減の大幅なマイナスで、これで3四半期連続の前期比マイナスである。この背景には、FRBの17回連続の利上げによる住宅ローン金利の上昇がある。また、GDPの減速には、ガソリンの値上がりなどで個人消費全般にブレーキがかかっていることも響いている。