7月第4週(7/16〜7/22) メインテーマ:「7月経済報告、デフレ認識を削除」(最高3つの*)


[景気動向]

(1)7月経済報告、デフレ認識を削除(7/20) ***

 7月の月例経済報告は、日本経済が「デフレ状況にある」との表現を5年5ヶ月ぶりに削除した。消費者物価指数のプラス基調を判断して、足元はデフレではないと判断したためである。現状は、政府のデフレの定義である物価の持続的な下落には当たらないと判断した。しかし、デフレに逆戻りする可能性もあるため、デフレ脱却の正式な判断は先送りした。与謝野経済財政相は、小泉首相が9月の任期末までに脱却宣言を行なう可能性も示唆している。


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[金融政策]

(1)金利復活、銀行に追い風、恩返しのとき(7/16) **

 ゼロ金利が解除された14日、与謝野金融相は「ゼロ金利であったので、銀行はそれなりの利益を上げられた。ゼロ金利は実は銀行を相当助けた」と指摘した。ゼロ金利の狙いの一つは、金融システム不安の解消にあったというわけだ。与謝野金融相の試算によると、バブル崩壊後、金融機関が処理した不良債権96兆円のうち、公的資金を使って処理したのが12兆円、金融機関が資産を処分して処理したのが12兆円、残りの72兆円は金融機関の上げた利益で処理したという。

 全国銀行の不良債権比率(貸出残高に占める不良債権の比率)は、02年3月末に8%を超えたが、06年3月末は3%まで低下し、処理は山を越えた。銀行はただ同然の金利で預金者から資金を集め、貸し出しや資金運用に回す。それで稼いだ利益を不良債権の処理に向けてきた。こうした銀行救済のメカニズムにより、銀行の収益は飛躍的に伸びた。06年3月期の全国銀行126行の純利益の合算は4兆円を超え、過去最高となった。三菱UFJグループやみずほグループは、公的資金を完済した。

 しかし、銀行の復活は預金者の犠牲のもとに成り立っていることを忘れてはならない。日銀の試算によると、家計の受け取る利子は、91年当時の水準が04年まで続いたと仮定すると、累計304兆円も少なかった。

 そして、今後の金利上昇は、銀行の収益にさらに追い風となる。貸出金利の引き上げや資金運用益の増加などのプラス要因が、預金金利引き上げへの負担増を上回ると予想されるからだ。アナリストによっては、1%の金利上昇が銀行の本業の設けである業務純益を約20%押し上げると試算する。一方で、負の側面もあり、銀行の保有する国債価格の下落(長期金利は上昇)で含み損が発生することである。金利が1%上昇すると、地方銀行64行が被る含み損は1.6兆円に達する。大手行に比べ国債投資への依存度が高い一部の地銀にとり、金利上昇が経営の足かせになりかねない。

 金融システムが健全化したのは、ゼロ金利政策や公的資金投入という、預金者や国民の負担があったからである。今後、顧客サービス重視の経営が求められる。


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(2)ゼロ金利解除から1週間(1/22) ***

 ゼロ金利解除から、21日で1週間が経過した。解除後、無担保コールレートが急上昇する局面もあったが、日銀は大量の資金供給をして、上昇圧力を押さえ込み、21日には誘導目標である年0.25%付近まで低下した。

 解除後初の本格的な取引となった18日、加重平均で0.30%と誘導目標の0.25%を上回り、最高で0.45%まで跳ね上がった。金利の先高感が強まり、金融機関が資金の確保を急いだためと見られる。金利上昇圧力を抑えるため、日銀が緊急に資金を放出する即日オペを4営業日連続で実施し、供給された資金は総額で5兆4,000億円に達した。この結果、短期金利は徐々に低下した。

 一方、長期金利(新発10年もの国債の利回り)は、解除後1.8%台で推移し、1.9%台後半に上昇した解除前より低下している。


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