12月第3週(12/10〜12/16)「12月短観、景況感改善」(最高3つの*)


[金融市場]

(1)年内利上げ難しさ増す(12/12) **

 日銀による年内利上げが難しさを増している。7〜9月期のGDP改定値などの経済指標が予想を下回り、11日の金融市場で長短金利が低下したためだ。

 11日の市場では、長期金利の代表的指標である新発十年もの国債利回りが前週末比0.04%低い1.65%に下がったほか、5年物国債利回りも低下した。短期市場でも先物金利などが軒並み低下した。外為市場でも、年内利上げ観測の後退で、円相場の終値が1ドル=116円63銭と、前週末比1円26銭の大幅な円安・ドル高となった。

 ただ、15日に日銀が重視する12月の企業短期経済観測調査(短観)の公表を控えており、短観次第で、金利が再び上昇する可能性もある。


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[景気動向]

(1)12月短観、景況感改善(12/16) ***

 日本銀行が発表した12月の企業短期経済観測調査(12月短観)は、企業の景況感の底固さを示す一方、消費関連業種の不振をうかがわせるまだら模様の内容となっている。短観を受け、日銀は年内最後の金融政策決定会合での利上げを見送る見通しである。一方、市場でも、短観が示した消費不振などの負の側面を材料に追加利上げが遠のいたとの観測が広がっている。

 12月短観では、大企業、中小企業とも、9月調査より景況感が改善した。最大の要因は円安と原油価格の低下だ.7月中旬には、米テキサス産軽質油で1ドル=70ドル台であったが、11月中旬には55ドル前後となった。これにより、自動車などの輸出関連業種や素材関連、電機・ガス、運輸関連などの業種で、景況感が改善した。

 また、06年度の全規模・全産業の設備投資計画は、前年度比で10.5%伸び企業の投資意欲が衰えていないことも示された。7〜9月期のGDP改定値では、設備投資が大幅に下方修正されていた。一方、消費不振を間接的に示すシグナルもある。個人消費に直結する小売り、旅行やレジャー関連の対個人サービスの業種では、景況感が悪化した。

 短期の雇用関連指標は、前回調査よりも人手不足感が鮮明となった。しかし、企業は賃金コストの増加には慎重である。政府も、11月の月例経済報告では消費不振を理由に基調判断を下方修正している。


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[経済成長]

(1)公正と効率、市場で実現―香西泰氏(12/12) ***

 成長を巡って様々な議論が展開されている。それは、経済的自由主義や市場主義、政府の役割などに関して、どんな立場をとるかの問いかけでもある。いまなぜ成長が問われるのか。

 日本での失われた15年という大停滞が終わったと思ったら、人口が減少し始めた。一方で、グローバル化も加速している。こうした与件の変化の中で、どう成長していくかは、これからの日本の軸をどこに置くべきかという議論に通じる。

 もう一つは、財政の問題だ。90年代の低成長の中で豊かさを維持しようとして、財政赤字という次世代への負担が増加した。成長して税収が増えないと、今の仕組みはとても維持できない。英米などの10年超の景気回復を実現しており、日本も不可能ではない。

 グローバル化は、先進国と途上国との貧富の差を縮小するだろう。戦後の日本の復興も、自由貿易体制だからこそ実現可能だった。また、いまやITのハード生産はトップが中国、ソフトはインドで、いずれも途上国がトップだ。

 成長を目指すとき、市場原理はどういう位置付けになるか。資本主義は権力による経済支配を脱し、市場原理を拡大していく歴史でもあった。20世紀には、共産主義による計画経済などの実験があった。しかし、政治家や官僚などなどが配分する領域をできるだけ小さくした方が、社会にとって良いということが分かって来た。市場原理は、社会を構成する普通の人々に資源配分や意思決定を委ねる。普通の人々の力を最大限引き出そうとする点では、草の根の力を高く評価する枠組みである。市場に代わる全知全能の神がいるわけではない。


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[アメリカ経済]

(1)米金利据え置き、景気軟着陸へ正念場(12/14) ***

 アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、4回連続で政策金利の据え置きを決めた連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、住宅市場を前回の「冷え込み」から「大幅な冷え込み」に緩めた。住宅市場以外の経済指標を見ても強弱入り混じっており、経済は軟着陸に向けて正念場を迎えている。

 10月の住宅着工件数(年率換算)は前月比14.6%減の148万6,000戸と、2000年7月以来の低水準となっている。年末商戦の出足を示す11月の主要小売業の既存店売上高も前年同月比2.1%増に留まり、昨年11月の伸び率の3.8%を下回った。一方、11月の雇用統計は前月より13万2,000人増え、事前の予想の11万人程度を大幅に上回った。7〜9月の実質GDP成長率の改定値も、速報値から0.6%程度上方修正され前期比2.2%となった。いずれも、雇用、景気の底固さを示している。

 アメリカ政府は、住宅市場は調整課程にあるが、雇用などの分野が堅調であり、景気は力強いとし、軟着陸への強気な姿勢を崩していない。しかし、市場の景気見通しは定まっておらず、発表される景気指標の強弱により、一喜一憂しているのが現状である。


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