8月第3週(8/13〜8/19) メインテーマ:「格差を生む不安定な若者の就労」(最高3つの*)
(1)ゼロ金利解除1ヶ月(8/15) **
7月14日に日銀のゼロ金利の解除が行なわれてから、1ヶ月が経った。この間、金融機関の預金金利が上昇し、預金者への還元がわずかながら進み出した。一方で、今後の金利上昇を見込んで、長期固定型の住宅ローンに人気が集まっている。
日銀のまとめでは、国内金融機関の普通預金金利は、0.001%から、7月末〜8月上旬の平均値では、0.093%に上昇した。しかし、100万円を1年預けた金利が10円から1,000円になっただけで、預金者還元が大きく進んだという実感はわかない。定期預金も金利引上げが相次いだが、今後の利上げをにらんで、長い期間の定期預金に預ける顧客は減っている。
住宅ローンは、金利上昇のリスクがある変動型はを避け、同じ金利が長期間適用される長期固定型を選択する人が増えている。住宅金融公庫が7月中旬に行なったアンケート調査では、住宅ローン利用予定者のうちの7割が、全期間固定型を選ぶと答えた。
大企業では、長期固定の金利による資金調達を事前に進めており、大きな影響はないが、経済産業省による調査では、中小企業の72%が将来マイナスの影響があるとしている。
(2)日銀政策決定会合議事要旨、攻防の末、ゼロ金利解除(8/17) **
日本銀行は、ゼロ金利解除を決めた7月13、14日の政策委員会・金融政策決定委員会の議事要旨を公表した。それによると、政府側が、急ぐ必要はないと7月解除に慎重論を唱える中で、日銀は解除に踏み切っていた。追加利上げについても、政府側は、追加利上げを意図していないことを明確にするよう何度もクギを刺すなど、金融政策の歴史的転換を巡り、激しい攻防が繰り広げられていた。
9人の政策委員は、ゼロ金利を維持すれば経済・物価が大きく変動する可能性があり、ゼロ金利解除は長い目で見て物価の安定・持続的成長につながるとの見方で一致した。そのため、経済が正常に戻りつつある中で、異例のゼロ金利を続ける必要性は乏しいなどとする意見が相次いだ。そして、無担保コール翌日物金利の誘導目標は0.25%に引上げられた。
しかし、政府側は、インフレ懸念が見られない中で解除を急ぐ必要はないと主張した。その上で、仮に解除される場合には、利上げが連続的なものではないとのメッセージを出して欲しいと突きつけた。この政府側の強い要請に応じる形で、会合後の会見で福井総裁が「連続利上げを意図しているわけではない」と述べたのであった。
(1)格差を生む不安定な若者の就労―06年労働経済白書(8/17) ***
パートやアルバイト、派遣労働など、非正規雇用の若者の増加傾向が止まらない。今年の労働経済白書は、この若者の雇用問題に焦点を当てた。
定職を持たないフリーターの増加とそれが引き起こす諸問題は既に指摘されているが、事態が改善に向かったとはいえないようである。若者の労働力人口は90年代半ばから減少しており、今後も減っていく。白書が強調しているのも、若者が正規雇用につけるように支援していくことの重要性である。
90年代前半までは1割強程度であった若者の非正規雇用率は、上昇の一途で、今年は、15〜24歳で48%、25〜34歳でも26%に上る。サービスだけでなく製造業でも増えている。不安定な仕事に就いていれば、年をとっても職業能力を高められず、賃金の上昇も見込めない。今は親の支援があっても、独立したときに所得格差が顕在化してこよう。当然、このような若者の間に、社会保険の未加入者が増えている。そして、将来、生活保護費などの負担につながる恐れが強い。
このような状況は、社会の安定化や活力を損ない、国際競争力にも響く問題である。白書は、景気が回復局面にある今こそ、若者の雇用改善の好機と随所で述べている。若者には無論、職業的に自立するという意欲が必要である。企業も長期的な視点に立ち、採用と人事の在り方を見直してもらいたい。