インフォーメーション・サービ96:2006年度対策 経済史・経済事情 連載第9回「アメリカ経済」


\ アメリカ経済

1 1991年4月からの約10年の最長の景気拡大

 近年は、IT関連製品が成長を押し上げた。また、民間投資と個人消費の伸びによるところも大きかった。

2 2000年も4.1%の実質GDP成長率

(1)2000年も需要は力強く伸び、2000年2月に、91年4月からの景気拡大が107ヶ月となり、最長の景気拡大となった。 (2)失業率も4.0%にまで低下した。しかし、インフレ懸念が高まり、金融引締政策が行われ、公定歩合も99年8月から2000年6月まで5回引き上げられ、6.0%となった。

3 2000年後半からの景気減速

(1)IT関連製品の需要の減退により、後半からの減速は世界景気の減速を誘発するものであった。

(2)2001年に入り、アメリカ経済は3四半期連続マイナス成長となり、10年ぶりの景気後退となった。2001年の実質GDP成長率は、0.8%と大きく落ち込んだ。そして、失業率も4.8%へと急上昇した。

(3)2001年9月の同時多発テロによりさらに落ち込んだ景気は、アフガニスタンの軍事行動が早く収束したこと、財政金融政策の効果、そして原油価格の安定などにより、2001年10〜12月期には早くも回復へと向かった。

(4)2002年は、回復基調にあり、個人消費が景気をけん引し、実質GDP成長率は1.9%であった。一方で民間投資は大きく減少し、失業率も5.8%へと上昇した。

(5)イラク情勢による緊迫化により、2003年前半まで回復力は弱まったが、FRBによる利下げや原油価格の下落、イラクの大規模戦争の終結により、2003年後半には、戦争などによる下押し圧力はほぼなくなった。5月からの減税が個人消費を伸ばし、設備投資、住宅投資も増加し、7〜9月期は19年ぶりとなる8.2%の高い実質GDP成長率となり、力強い回復を示した。そして、2003年の実質GDP成長率は3.0%となった。一方、失業率は2003年6月には6.3%まで上昇したが、景気回復を背景に、同年後半からは下落傾向にある。

(6)2004年は、前年の景気拡大が続き、実質GDP成長率は前年比4.4%増となり、99年の4.5%以来の5年ぶりの高い成長率であった。2005年に入っても堅調に成長を続け、2005年10月の失業率は、5.0%となり、2001年9月の5.0%以来の水準に改善した。

4 財政収支の状況

(1)80年代に、アメリカの財政赤字は一貫して増加してきた。

(2)クリントン政権下では、歳出の抑制や削減策が図られた。そして、大統領と議会が2002年までに財政を均衡させることで合意し、97年度の予算教書で示された。

(3)98年度には、景気拡大による税収の大幅増と政府支出抑制により、29年振りに約692億ドルの黒字に転じた。99〜2001年度も1,000億ドルを超える黒字が続き、特に、2000年度は約2,370億ドルの大幅な黒字であった。

(4)2001年6月に、ブッシュ大統領は、財政黒字を家計に還元する大型減税を決定した。また、9月の同時多発テロのための緊急歳出や国防費の膨張、航空業界への支援策、そして税収の減少もあり、2002年度には財政収支は1,578億ドルの赤字になった。97年度以来の財政赤字であった。

(5)2003年度の財政赤字は、当初800億ドルと見込まれていたが、イラク戦費の累増により、3,742億ドルに膨れ上がった。

(6)2004年度も、イラク戦争の出費により過去最大の4,123億ドル(GDP比3.6%)を超える財政赤字となった。しかし、景気拡大の持続による税収増により、04年2月時点での見通しである5,210億ドルをかなり下回った。

5 経常収支赤字

(1)経常収支赤字は、ドル安などにより88年以降減少したが、92年以降反転し拡大傾向にある。

(2)2001年は景気後退により減少したが、前年の2000年の経常収支赤字は4,447億ドルと過去最大であった。貿易赤字が主な要因で、輸入が輸出以上に増加したためである。輸入の増加は、好景気による。

(3)2002年の経常収支赤字は、景気回復による輸入の増加により拡大し、5,034億ドルと過去最大となり、対GDP比で4.8%となった。

(4)2003年は、後半に景気が力強いものとなり、輸入がさらに拡大し、経常収支赤字は5,418億ドルとなった。

(5)2004年も、景気拡大の持続を背景に経常収支赤字の拡大が続き、6,659億ドル(GDP比5.7%)と過去最高になった。財政赤字と経常収支の双子の赤字により、ドルは減価傾向で推移した。

(6)巨額の経常収支赤字は、世界からの証券投資などによりファイナンスされていて、経済成長を支えている。

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