インフォーメーション・サービ90:2006年度対策 経済史・経済事情 連載第5回
X わが国の国際収支
1 最近の経常収支黒字の状況
2 貿易相手国(1)2000年の経常収支黒字は、微増の12兆6207億円であった。円高により、貿易収支黒字は10.2%減少した。しかし、サービス収支が、円高により支払いが減ったことや特許の使用料収入の増加により、赤字が約1兆円縮小した。一方、所得収支は前年比8.9%増となった。このため、貿易収支黒字が相当減少したが、経常収支黒字は増加したのであった。
(2)2001年の経常収支黒字は、前年比17.3%減の10兆6523億円であった。これは、貿易収支黒字が、前年比32.1%減と約4.1兆円減少したためである。貿易収支黒字の減少は、輸入の伸びが若干低迷した一方で、世界経済の減速により輸出が大きく減少したためである。
(3)2002年の経常収支黒字は2年ぶりに増加し、33.8%増の14兆2,484億円であった。円安や世界景気の回復により貿易収支黒字が37.5%増加したためである。 (4)2003年も、経常収支黒字は増加し、11.6%増の15兆7,853億円と、98年以来、過去最大の黒字を記録した。世界的な景気の回復で輸出が伸び貿易収支黒字が膨らむ一方で、イラク戦争やSARSの影響で海外旅行が減少したことが主な要因である。
(5)2004年の経常収支黒字は、前年比17.9%増の18兆5,908億円となり、2年連続で過去最高を更新した。世界的な景気回復からアジア向けを中心に輸出が大幅に伸び,貿易黒字が16.7%増の14兆3,108億円となったことや、債券や株式など対外資産からの利子や配当による所得収支が、12.0%増の9兆2,733億円と過去最大となった。輸出入の額は、ともに2年連続で過去最高であった。サービス収支は、前年のイラク戦争による出国者数の減少の反動で、出国者数が3割近く増加したため、6.4%増の4兆1,54億円となった。貿易・所得収支の大幅黒字が、サービス収支の赤字増加を吸収し、過去最大の経常収支黒字となった。
3 我が国の資本収支(1)2004年の輸出入合計の上位10カ国を見ると、7ヶ国はアジア諸国である。これは、90年代に中国、NIEs諸国(韓国、台湾、シンガポール)、ASEAN諸国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど)が経済成長を遂げ、これらの国々との貿易が盛んになったためである。
(2)特に、中国からの輸入が急増しており、2002年からはアメリカを超え第一位となり、2004年の中国の輸入シェアは、20.7%である。中国向け輸出も、アメリカに次ぎ第二位である。
(3)中国の輸出入額は増加が著しく、2004年には対中国の輸出と輸入を合わせた貿易額(香港を含む)は22兆1,999億円となり、アメリカを抜き日本の最大の貿易相手国となった。日本企業が賃金などコストが安い中国に生産拠点を移し、日中の国際分業化が進んだことが大きな要因である。
(1)経常収支黒字が拡大すると、資本の流出は増え、資本収支赤字は増加する。海外との貿易で得た資金を、海外に投資しているのである。
(2)2002年の資本収支赤字は、経常収支黒字を反映し、前年比28.8%増で7兆9,784億円の黒字であった。このほとんどが、直接投資や証券投資などの赤字を含む投資収支赤字であった。
(3)2003年の資本収支は、経常収支黒字が増加したにもかかわらず、8兆1,320億円の黒字(流入超過)であった。資本収支が黒字であったのは34年振りであり、海外からの我が国への株式投資(証券投資に含まれる)が、急増したことが主な要因であった。
(4)2004年も、資本収支は1兆4,915億円の黒字で、前年に続き黒字となった。前年と同様に、わが国への株式投資などによる投資収支の1兆9,882億円の黒字が主な要因であった。