インフォーメーション・サービ86:2006年度対策 経済史・経済事情 連載第1回


T 日本経済の動向

1 バブル経済とバブル崩壊

(1) 1980年代後半の株価・地価などの資産価格の大幅な上昇

理由 a.企業収益の急激な上昇、オフィス需要の増加、金利の低下

   b.投機的需要の拡大によるバブルの発生

株価・・・89年末に、3万8915円のピークに達した。

地価・・・83年ごろに東京都心の商業地より上昇し始めた。87年に大阪、名古屋、89年に地方圏へと地価上昇が波及していった。

(2) 金利上昇によるバブル崩壊

株価・・・90年に入ると急落し、イラクのクウェート侵攻による湾岸危機もあり、10月にはピーク時の約半分の2万円近くまで、下落した。

地価・・・91年に本格的に低下し始めた。これは、金利の上昇、土地関連の税制の見直し、土地関連融資の総量規制などによる。

2 90年代の日本経済の低迷

 90年代は、「失われた10年」ともいわれ、実質GDP成長率も、0%台や1%台 の年度が多かった。その背景には、バブル崩壊による資産価格の下落による倒産、銀 行の不良債権の累積が挙げられる。90年代の例外としては、96年の3.4%成長 である。これは、97年の消費税引き上げ(3%から5%)の駆け込み需要が、大き く働いたのが主な要因であった。

3 最近の日本経済

(1) 2000年11月からの景気後退とデフレ

 2000年11月からの景気後退は、2000年後半からのアメリカ経済の景気減速やIT不況による。景気動向指数の一致指数も、2000年後半から50%を割る月が出始め、2001年からは50%割れの月が続いた。輸出が減少し、設備投資や住宅投資が大幅に減少した。2001年度は、実質GDP成長率が−1.2%と戦後3回目のマイナス成長となった。また、名目GDP成長率が−2.4%と、99年以来のデフレの進行が明白となっている。デフレは、企業の債務を増加させ、銀行の不良債権を増やし、経済活動の足を引っ張るという大きなマイナス面があるのである。

(2) 2002年1月からの景気拡大

 2002年に入り、アメリカを初めとした世界経済の回復により、日本経済も景気後退から脱し、回復基調にあった。2002年2月から、景気動向指数の一致指数も50%超の月が続いている。

 2003年は、99年秋以降続いているデフレの終息の見込みが立たないことや、年後半の円高の進行に先行きの景気が懸念されたが、2003年末からの個人消費の回復や、企業の設備投資の回復により、10〜12月期の実質GDP成長率が年率換算で欧米を上回る3.8%の高成長となった。さらに、2004年1月の鉱工業生産指数が予想を上回る伸びとなり、景気拡大の弾みがついている。そして、2004年1〜3月期も実質GDP成長率は、6.8%の高い伸びとなった。その結果、2003年度の実質GDP成長率が2.0%となった。  2004年4〜6月期以降は、2四半期連続で成長率はマイナスとなり、成長率 が急速に低下しており、先行きの景気が懸念された。しかし、2004年10〜 12月期以降は、4四半期連続でプラス成長となった。

 政府は、昨年からの景気は踊り場を脱しているとし、8月に景気の足踏みを意味する踊り場からの脱却を宣言した。輸出が持ち直し、雇用や消費の改善が進んだためで、日銀の福井総裁も、踊り場をほぼ脱却したと判断し得るとの認識を示した。

 政府は、輸出が持ち直し、情報通信関連の調整も終了に近づいており、雇用も改善が続き消費も持ち直し、企業部門に比べ遅れていた好循環が家計部門にも波及していると述べた。一方、日銀も、デジタル家電など情報技術分野の在庫調整が終わりつつあるほか、業績好調な企業の設備投資が増加し、夏のボーナスなど雇用者所得が増えていることにも注目し、8月の金融経済月報で景気の総括判断を2ヶ月連続で上方修正した。

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