インフォーメーション・サービス84
(1)若者を社会に生かす道は?(2005/1/10) ***
今年成人式を迎える若者は、昨年より2万人少ない150万人で、総人口に占める割合は1.18%で、1968年以降では2番目に低い。若者達への期待は大きいが、少子高齢化が進み人口減少社会に向かう日本の懸念事項が、「ニート」に象徴される社会参加意欲に乏しい若い世代が急増している現象である。
就学・就職意欲がない無業者を意味する15〜34歳のニート層は、一昨年で52万人にのぼる。また、正規の就職をしないでアルバイトを繰り返すフリーターは、1980年代の後半に登場したが、現在417万人に上るという。このような状況は、若者が将来の夢を描けないだけでなく、税収や社会保障制度などの国の活力を脅かす危うい状況である。
ニートで突出しているのは、学卒後の19歳と23歳の層だという。希望する就職先などが見つからず、そのまま社会への参加意欲を低下させてしまうケースが少なくないと見られる。夢を抱いた若者が社会参加へ挑戦し挫折した場合、日本は再挑戦の仕組みが少ない社会といわれる。職業教育の再構築とあわせて、失敗を乗り越えてやり直しができる仕組みの構築が不可欠である。
若者本人の意欲とともに、希望を育てる社会の責任が問われる。
2005年上半期 日本経済10大トピック
(2)中国、日本の最大の貿易相手国に(2005/1/27) ***
財務省の2004年の貿易統計によると、対中国の輸出と輸入を合計した貿易額が22兆2,005億円となり、アメリカを抜き日本の最大の貿易相手国となった。対中貿易は、昨年までの5年間で2.2倍に膨らんだ。中国のWTO加盟で、日本から生産拠点を移す動きが加速し、日本から部品を輸出し中国で製品を組み立て、再び輸入する国際分業体制が定着し、輸出と輸入に相乗効果が起きている。昨年の対中貿易は、輸出が輸入を上回り、1兆4,500億円の日本の黒字であった。
ただ、中国から見た2004年の対日貿易額は、EU、アメリカに抜かれ3位に転落し、中国の貿易相手国としての日本の地位は低下している。
(3)デジタル景気ブレーキ(2005/2/1) ***
日本の景気回復をけん引してきたデジタル景気に急ブレーキがかかってきた。電気・半 導体各社の2004年10〜12月期連結決算は、需要の伸びの一服や過当競争による価格下落を背景に、軒並み大幅減益となった。
一方で、キャノンは高付加価値の一眼レフのデジタルカメラなどにシフトし、04年決算で5年連続の増収増益となった。沖電気工業も、パソコンや汎用半導体を見切り、携帯電話の着信半導体や液晶部品など高付加価値品に特化し、10〜12月期は前年同期比増収増益であり、選択と集中の成果が出たといえる。
(4)経常黒字2年連続最高(2005/2/15) ***
財務省の2004年の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス全体の取引状況を示す経常収支の黒字は、前年比17.9%増の18兆5,908億円であった。2年連続で過去最高を更新した。世界的な景気回復で、アジア向けを中心に輸出が大幅に伸びたほか、海外で運用している債券や株式など対外資産からの利子や配当による収益が膨らんだ。
昨年の貿易黒字は、前年比16.7%増の14兆3,108億円で、3年連続で前年を上回った。配当や利子など対外資産からの収益である所得収支黒字は、12.0%増の9兆2,733億円で過去最大であった。サービス収支の赤字は、4兆1,542億円で、6.4%増えた。前年のイラク戦争の影響の反動で、日本人の出国者数が3割近く増えるなど海外旅行が堅調に増加したことを反映した。
貿易・所得収支の大幅黒字増加が、サービス収支の赤字増加を吸収し、過去最大の経常黒字となった。
(5)膨大「国の借金」財政再建は?(2005/3/12) ***
国の借金は、2005年度末で538兆円に上る見込みであり、地方の借金を加えれば800兆円に近いところまで来ている。この国の将来が不安である主な要因は、この気の遠くなるような膨大な公債残高、すなわち公の借金であろう。先進国最悪の財政状況であり、財政再建は尻に火がついている状況である。
財政再建は、歳入、歳出、経済成長の3つで考える必要がある。歳入では、消費税率を上げることに活路を見い出さざるを得ない。歳出では、20兆円となった社会保障費の抑制となる。しかし、消費税に手をつける前に、行政改革という無駄の排除に真剣にならなければ、税率引き上げは出来ない相談である。しかし、政治はいつも行政改革といいながら、官僚の抵抗に合って挫折している。また、社会保障費の今後の伸びをある程度抑えたとしても、財政健全化にどれほどの効果あるだろうか。
結局、公債を目に見える形で減らすには、経済成長による税収増しか手はない。まずは、景気対策である。
(6)国の借金、最高の751兆円(2005/3/26) ***
財務省は、国の借金である国債、借入金、政府短期証券(FB)などの政府債務残高が、昨年12月時点で、過去最高の751兆1,065億円に達したと発表した。これは、日本のGDPの約1.5倍に当たり、国民一人当たり約588万円の借金を抱えている計算となり、財政再建が喫緊の課題であることを裏付けている。
また、特殊法人等が発行する債券の返済を国が保証していることから、隠れ借金とも言われる政府保証債務の残高は57兆5,524億円となった。
地方自治体の借金の総額は、2004年度末で約203兆円になると見込まれていることから、国と地方の借金の総額は1,000兆円を超える見通しとなった。
国の借金残高の大半は、財投債を含めた国債が占め、04年12月末時点での残高は606兆357億円と、同年9月末時点より19兆3,727億円増加した。政府は国債発行を抑制していく方針だが、借換え債の発行は今後も増え続け、ピークを迎える2008年度には118兆円を超える見通しである。
(7)2004年度の倒産、13年ぶり1万4,000件割れ(2005/4/15) ***
調査機関の帝国データバンクによると、2004年度の全国企業倒産集計(負債総額1,000万円以上)によると、倒産件数は前年度比15.9%減の1万3,276件と3年連続で減少し、1991年度以来13年ぶりに1万4,000件を下回った。減少幅は、戦後5番目に大きく、同社は、景気回復を背景に倒産の沈静化が一層鮮明になったとしている。
一方、負債総額は、34.1%減の7兆428億円と4年連続で減少し、10年ぶりに8兆円を下回った。また、上場企業の倒産も8件と5年ぶりに1けたとなり、大型倒産の減少も目立っている。
(8)独禁法、課徴金10%に上げ(2005/4/21) ***
談合やカルテルへの制裁金強化を盛り込んだ改正独占禁止法が、20日成立した。制裁金を大幅に増やすと共に、公正取引委員会の調査権限を強める。公取委は、3年がかりの作業で、28年ぶりの抜本改正にこぎ着けた。
改正法の柱は、課徴金引上げである。談合やカルテルなどで不正に得た利益を没収する制度で、製造業や総合建設会社(ゼネコン)の場合、大企業の課徴金を違反対象の製品売上高の6%(現行)から10%に引上げる。中小企業は、経営への影響に配慮し、4%(現行3%)に留める。また、公取委が違反調査を始めた日から数えて、過去10年間に課徴金を払った実績がある再犯企業は、さらに5割増にする。
産業界では、談合が減るかどうかは分からないという冷めた見方もある。このため、公取委は、談合を自主的に申し出た企業の課徴金を減免する制度を導入する。立ち入り検査前に、最初に申告した企業は課徴金を全額免除し、3番目まで割り引く。
また、談合を繰り返す悪質な企業には、公取委の職員が裁判所の令状を持って、強制的に立ち入り検査ができるようになる。
(9)2005年3月期決算、業績絶好調(2005/5/22) ***
東証一部上場企業の05年3月期決算は、連結ベースで3年連続の増収増益を達成し、経常利益は2年連続で史上最高を更新することが確実である。新光総合研究所によると、
20日までに発表を終えた金融を除く947社の決算は、売上高が前年度比6.4%増、経常利益が23.9%増、税引き後利益が35.6%増となっている。好決算の原動力は、鉄鋼など商品相場の上昇や、輸出の増加で、売上高が大きく伸びたためである。また、厳しいリストラで、製造・販売コストが引下げられたことも大きい。
好決算を受け、2社に1社が増・復配に踏み切る見通しである。3月期決算の全上場企業が払う配当の総額は、前年度より約7000億円増え、3兆7000億円に達するという。これは、個人投資家の拡大や、敵対的買収への対応に効果を発揮するだろう。
(10)新規国債、2年連続1兆1,000億円減(2005/6/21) ***
財務省は、2004年度一般会計の新規国債発行額を、当初予算より約1兆1,000億円減らし、35兆5,000億円とする方針を固めた。景気回復で、一般会計の税収が当初見込みより3兆円以上多い45兆円台になることが確実となったためである。この規模の減額は、2年連続である。
国債発行の減額により、6月に発行予定の新規国債のうち、04年度に充てる予定であった1兆1000億円は、05年度分の前倒し発行という扱いとする。