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2005年上半期 世界経済10大トピック

2005年上半期の世界経済のトピックで、特に重要なものを10件ピックアップしました。これは、週間トピックからの抜粋です。


(1)ドイツ、2004年は2年ぶりプラス成長(2005/1/15) ***

 ドイツの2004年の実質GDP成長率は、1.7%であった。世界経済の回復による輸出の伸びなどに支えられ、2年ぶりにプラス成長となった。しかし、ドイツを中心とする欧州経済は、ユーロ高や原油高など先行きへの懸念材料も残っており、景気が順調に回復するかどうかは予断を許さない。

 ドイツの成長率は、2001年以降、0.8%、0.1%、マイナス0.1%と低迷を続けてきたが、4年ぶりに1%を超える伸びとなった。成長への外需の寄与度は1.2%となり、今回の景気回復が、輸出による外需主導であることが裏付けられた。内需は、GDPの6割を占める個人消費が前年比0.3%減と低迷したが、設備投資は同1.2%増と4年ぶりにプラスに転じ、企業の投資意欲の高まりが示された

 しかし、ユーロの対ドル相場や原油先物相場は、急激な上昇には歯止めがかかったものの、依然として高い水準にある。失業率も10%台で高止まりしており、個人消費の足を引っ張っている。人件費の安い東欧へ生産を移管する動きが今後も続くと見られ、当面、雇用状況の改善は見られそうにない。

 ドイツと合わせてユーロ圏のGDPの約7割を占めるフランスとイタリアの景気も伸び悩んでいる。欧州経済は、この主要3カ国の回復の足取りが重いことが、先行き楽観し出来ない要因となっている。


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(2)2004年中国実質GDP9.5%増(2005/1/25) ***

 中国の2004年の国内総生産(GDP)は、約170兆6,400億円で、実質伸び率は前年比9.5%増となった。これは、1996年の同9.6%増以降、最も高い伸びとなった。民間設備投資や公共投資などを合算した固定資産投資の伸び率は同25.8%増と、前年の伸び(27.7%増)をやや下回ったが、政府の投資抑制策にもかかわらず、高水準を維持した。一方、消費者物価は、同3.9%増と前年の伸び(同1.2%増)を上回り、インフレ圧力が高まった。中国政府は、景気の軟着陸に向け、今年も投資抑制などの引き締め策を継続する方針である。


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(3)2004年10〜12月期のアメリカGDP減速、通年では高成長(2005/1/30)

 アメリカ商務省によると、2004年10〜12月期の実質GDP成長率は、年率換算で前期比3.1%増であった。前期の伸びを0.9ポイント下回り、7四半期ぶりの低い伸びとなった。輸出が減少し、住宅投資が3年ぶりの低い伸びとなったのが、響いた。 個人消費は前期比4.6%増、設備投資は10.3%増であった。

 しかし、2004年通年の成長率は、前年比4.4%増となり、99年の4.5%増以来5年ぶりの高成長となった。


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(4)2004年の米貿易赤字6,177億ドル(2005/2/11) ***

 アメリカ商務省によると、2004年のアメリカの貿易赤字は、前年比で24.4%増の6,177億ドルと急増した。6,000億ドル台は初めてであり、3年連続で過去最大を記録した。原油高や活発な内需に加え、昨秋以降のドル安で輸入額が増え、赤字が膨らんだ。

 アメリカの財政赤字は、04年度に過去最大の4,000億ドルを突破しており、貿易赤字とあわせた双子の赤字は、1兆ドルを超える計算である。このため、ドル不安が再燃する可能性がある。

 貿易赤字の4分の1超を中国が占め、対米輸出増の要因とされる固定的な人民元制度への批判が高まりそうである。


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(5)温暖化防止へ京都議定書発効(2005/2/17) ***

 地球温暖化防止のための京都議定書が、16日発効した。これにより、先進各国に課されたCO2など温室効果ガスの削減目標は、国際公約となり、法的拘束力が生じた。日本政府には、今後、削減目標の達成という高いハードルが待ち構えている。

 日本に課された2008〜2012年の温室効果ガス排出量の削減目標は、90年比で6%である。しかし、2003年の排出量は、90年比で逆に8%増えており、実際は14%削減しなければならない。削減目標が達成できない場合、2013年以降の新たな枠組みの中で、ぺナルティが課される見込みである。政府は、5月頃までに、目標達成計画を閣議決定する方針である。


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(6)ドイツの労働条件、時間延長に加え休日削減の危機(2005/2/23) **

 実質6週間の年次有給休暇と平均週37時間余の短い労働時間で高賃金を得てきたドイツの労働者が、労働時間延長と休日の放棄を迫られている。フランスでも最近、労働時間延長が決まったが、超過労働分の対価が認められている。ドイツの時間延長は、対価が伴わない実質賃下げで、労働条件改悪は深刻である。ドイツでは昨夏、ダイムラー・クライスラーなどの大企業で、週40時間労働が復活し、時短の流れに終止符が打たれた。時間延長の動きは、その後、建設、運輸など他業種にも波及したが、延長だけでは不十分で、休暇にもメスを入れざるをえない状況となっている。

 労働者側が「時長」という実質賃下げに応じたのは。工場などが賃金の安い東欧へ移る「職の流出」を防ぐ手段が他になかったからである。ドイツにおける労働条件改悪は、EU拡大に伴う域内賃金の平準化の一歩と言える。


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(7)EU、赤字3%枠の財政協定要件緩和(2005/3/22) ***

 EUの臨時財政相会議が、ブリュッセルで開かれ、ユーロ参加国に義務付けられた財政協定の見直しで基本合意した。

 各国の財政赤字の上限を対GDP比で3%以内に抑えるという現行基準は変えなかったが、年金改革に伴う財政支出や、国際的な支援活動や研究開発費、ドイツの東西ドイツ統一にかかる費用などを赤字の対象から外した。また、3%を超えても「小幅かつ一時的」な場合、経済成長がマイナスであれば過剰財政赤字とはみなさないとし、協定を実質的に緩和する内容となっている。一方で、赤字の拡大を未然に防ぐため、各国の財政状況の監視を強化することも盛り込んだ。


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(8)ベトナム経済飛躍期に(2005/4/25) ***

 ベトナム戦争が終結してから30年、ベトナム経済が飛躍期を迎えている。2000年以降、GDP成長率は平均7%超を持続しており、市場開放や海外在住ベトナム人による投資などが成長に寄与している。

 海外からベトナムへの直接投資は、1999年に22億ドルだったが、2004年には2倍の42億ドルに拡大した。主に、進出企業の追加投資が増えている。中国での反日運動もあり、投資を中国本土からベトナムに移す企業も増えている。

 ベトナムの経済成長を支えるもう一つの要因は、海外に約270万人いるベトナム人からの送金である。昨年、政府が海外のベトナム人からの送金に対し、所得税免除を打ち出したことで送金額が急増し、昨年一年で30億ドルを超えた。これは、今年のベトナムへの政府開発援助(ODA)予定総額に匹敵する。送金は、国内消費を刺激し、小売業販売額は2001年から4年連続で2桁増である。 一方、国営企業改革の遅れは、発展の懸念材料である。政府計画では約五千社の国営企業のうち、二千八百社のリストラを予定していたが、達成率は三分の一程度に留まっている。


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(9)危うしEU憲法、オランダも拒否(2005/6/3) ***

 EUの新基本条約であるEU憲法は、1日のオランダ国民投票がフランス国民投票よりさらに大差で拒否を突きつけたことで、脳死状態に陥った。欧州統合の中枢であったフランスとオランダによる拒否は、統合の利益が自明であった時代が終わったことを意味する。

 EU憲法は、東方拡大を踏まえEUを効率的に運営する規則をもたらすはずであった。しかし、両国の否認は、東方拡大を事後的に否認し、さらなる加盟国増加に疑義を呈した意味をもっている。フランス国民は、東方拡大で自国の影響力が低下し、さらにフランス企業の東欧移転と東欧からの労働力流入で、自分達の雇用が奪われることを恐れた。

 EU内では、これ以上の拡大は避けようという立場が強まりかねない。イスラム国で あるトルコと、今年10月に予定しているEU加盟交渉が吹き飛びかねない気配である。

 注:EU拡大・・・ 2004年5月に、中東欧諸国など計10カ国がEUに加盟した。今年4月には、ルーマニア、ブルガ二アと加盟条約を結び、2年後には27ヶ国体制となる予定である。クロアチア、トルコは、加盟候補国となっている。バルカン諸国やウクライナも加盟意欲を持っている。


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(10)進むドル高1ドル=110円台、資金はドルへ(2005/6/30) ***

 アメリカの利上げを背景に、外国為替市場でドル相場が上昇している。19日の東京市場で、円相場は1ドル=110円37銭と昨年10月上旬以来の円安・ドル高水準に下落した。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続けるとの見方が、ドルへの資金移動を促している。

 アメリカが利上げを続ける背景には、経済の底固い成長に加え住宅市場の過熱がある。また、原油高によるインフレ懸念もあり、FRBは利上げ継続の姿勢を崩していない。


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