2018年 年頭所見「賃上げによる消費の増加が急務」
 原山広之先生


昨今、いわれる経済政策の課題は、投資、消費が伸び悩む中で、賃上げによる消費の増加が最も有効であるといわれる。というのも、企業の利益が家計に回らず、消費の伸びが抑えられているのが現状だからである。そのため、賃上げによる消費の増加が、最も有効で現実的な政策ということになる。

企業が先行き不安からためた内部留保がこの4年間で約300兆円から約400兆円へと100兆円余り増えた一方、家計の分け前となる賃金は伸び悩んでいる。

現在、内部留保に当たる利益剰余金は約406兆円に達し、12年度から3割以上膨らんだ。これに対し、従業員の給与などを合算した16年度の人件費は約202兆円でこの間に約5兆円の増加、設備投資も約43兆円で約8兆円の伸びにとどまっている。

このように、人件費の抑制による消費の伸びの停滞、そして、先行き不透明の中での設備投資の低い伸びの中で、即効性があり、効果が大きいのが賃上げによる消費の増加である。

既述の過去4年間で内部留保が100兆円余り増えたならば、このうち50兆円が賃上げに当てられたとしよう。限界消費性向が0.6であるとすると、消費は50兆円×0.6=30兆円増加する。これは、国内総生産(GDP)成長率を5〜6%程度上昇させるのである。このように賃上げの成長率への寄与は非常に大きい。これは限界消費性向が0.6近辺という高い値にあるからである。内部留保の増加に対する設備投資の増加の割合は0.1に満たないであろう。したがって、賃上げが行われずに、企業の設備投資を待つだけでは成長は期待できない。

以上のように、アメリカ経済のような高成長を達成するには、賃上げによる労働分配率の引き上げが急務なのである。