インフォーメーション・サービ160:
2015年年頭所見 原山広之先生


「増税と財政再建」

昨年4月に消費税が引き上げられ8%となった。これは、当然GDPの2倍以上の財政の累積債務や今後増大する社会保障費に対処するためのものであった。

しかし、この増税により、消費が低迷し、GDPの伸び(実質)が低下し始め景気動向に懸念が生じ始めた。景気後退になれば、増税をしても税収が減少し元も子もないのである。ただ、増税は景気を低迷させることは、経済学の教科書にも書いてあることであり、なんら不思議なことではない。

それでは、なぜ消費税引き上げという増税をしたのであろうか。この答えは、経済を考察する上で考慮すべき「短期」と「長期」という区分である。増税をすれば、国民の可処分所得が減って消費が減少し、他の条件が一定であれば、GDPは減少する。しかし、これは短期的効果であり、1〜2年の効果であろう。長期的には、景気循環の波があり、好況のときもあれば不況のときもあるのである。このような長期で考えれば、増税による税収増の効果は十分有効といえる。

増税は、短期的には景気を低迷させ、税収増どころか税収減をももたらすのであるが、長期的には税収増となる可能性が高いのである。

こうして、経済は、短期と長期という複眼の目でみると、分かってくることが多いのである(筆者は有名大学で長年マクロ経済学を担当)。