インフォーメーション・サービ153:2009年度対策 経済事情X(ロシア経済)


X ロシア経済

要約:ロシアは、1998年に構造問題が外資に嫌われ、ロシア金融危機が発生した。このため、市場経済移行後初めてプラス成長となった前年から、再びマイナス成長となった。しかし、原油など一次産品の国際価格上昇により、99〜2007年は高成長が続いている。2008年は、先進国の景気後退や世界的な金融危機などにより、成長は減速している。

1 市場経済移行後のロシア経済

 91年末に、ソ連は崩壊し、ロシアは市場経済化路線をとった。しかし、90年代のロシア経済は、この路線が成功したとはいえない。90年代の実質GDP成長率は、平均で−5.0%であり、消費者物価上昇率も平均で481.1%であった。

 移行後、初めてプラス成長になったのは、97年であった。97年は、ロシアの恵まれたエネルギー部門などへの外資の受け入れにより、工業生産が伸び、プラス成長となった。

2 98年のロシア金融危機

 98年に、金融危機が発生し、実質GDP成長率は再びマイナスとなり、−4.6%となった。当時、ロシアの高利の短期国債に外資が流入していたが、アジア通貨危機を契機に、外資がロシアの構造問題に懐疑的となり流出した。株価は急落し、短期国債の利回りは急上昇し、金融危機が発生した。ルーブルの売り圧力は強く、1998年9月に固定相場制から変動相場制へ移行した。

ロシアの構造問題

a.資本の国外流出が進み、犯罪などの地下経済が拡大し、徴税率は低く、歳出の削減が進まず、構造的財政赤字であった。この財政赤字を高利の短期国債の大量発行で賄っていた。

b.石油、天然ガスなどの一次産品に依存した貿易・経済構造である。

3 高成長が続くロシア経済

 ロシア経済は、原油価格などのエネルギー品目の輸出品の国際価格上昇により、9 9年から2007年まで高成長が続いた。

 内需の個人消費、投資とも好調であった。固定投資も、輸出産業の設備投資や政府 投資により、前年比10.5%増と2桁の伸びが続いた。  消費者物価上昇率は、07年も9.0%増で依然として高水準である。この背景には、輸出収入の急増がマネーサプライの増加をもたらしていることや、消費財の供給制約のため、インフレ圧力が存在していることである。

 失業率は、景気拡大を反映し、99年以降低下傾向にあり、07年は6.1%に低下した。

 輸出増加による景気拡大のため、経常収支も、財政収支も黒字である。07年の経常収支は762億ドル(GDP比5.9%)であった。財政収支も、02年から6年連続黒字であり、07年度予算は783億ドルの黒字(対GDP比6.1%)であった。

 このように、ロシア経済は非常に好調であるが、ユーコス事件に見られるようにプーチン政権の独裁的・強権的政治姿勢に、一部で企業マインドが悪化しており、内外の企業に投資抑制の動きが出ているのは、懸念材料である。

4 08年のロシア経済

 08年前半は、原油価格の高騰などの交易条件の改善に支えられて、年率8%程度と堅調な成長であった。個人消費は、実質賃金などの高い伸びにより二桁の拡大を示した。設備投資も高い水準を維持した。

 しかし、08年後半には、グルジア紛争を契機に外国資本が流出したことや、世界的な金融危機と先進国の同時景気後退などから、ロシア経済も大きく減速した。建設投資は、多くのプロジェクトが中断し、伸びが大きく低下した。資源の国際価格の下落により、原油、天然ガスなどの鉱業部門が停滞し、製造業は全体的に減速傾向を示し、、11月の鉱工業生産は前年同月比で−7.8%と大幅な減少となった。

 消費者物価上昇率は、08年後半には15%程度へと上昇し政府の目標値の11.8%をさらに大きく上回る水準となった。物価高騰の要因は、強い内需と、資源輸出に伴う代金の流入増、中央銀行のルーブル安誘導によるものであった。しかし、国際資源価格の下落と資本の国外流出により、hbh物価上昇圧力は弱まっている。    

5 ロシア、10年ぶり財政赤字(1/26)

 ロシアの2009年の財政収支が、黒字見通しから一転10年ぶりの赤字に転落する模様だ。原油価格の下落により、歳入が大幅に減少するためだ。下落が止まらない通貨ルーブル防衛のため外貨準備高も急減している。金融危機は、資源国として潤ったロシアの経済を大きく揺さぶっており、今年の国内総生産伸び率は、11年ぶりにマイナスとなる可能性が高まっている。

 プーチン首相は、執行が始まっている09年予算を全面的に見直すように指示した。原油価格の下落のためだ。現行予算は1バレル95ドルを前提にしているため、現実的ではなく、同41ドルで予算の再編成を求めた。歳入のうち約4割を石油・ガス輸出に依存するといわれている。

 赤字幅は、GDP比で5%超(約2兆1千億円)となる見込みで、赤字分は石油輸出代金の一部を積み立ててきた「準備預金」(残高4兆ルーブル強)を取り崩して穴埋めすることが決まった。

 GDPも下方修正が不可避だ。先行きも不透明感が強まり、ルーブルの対ドル相場は昨年7月の高値から4割強も下落した。危機感を強めた中央銀行は、今後2ヶ月間は事実上約10%のルーブル安しか容認しない姿勢を示した上で、ドル売り介入する意向も表明した。