インフォーメーション・サービ148:世界経済事情T(世界経済の動向)


T 世界経済の動向

 要約:2000年末から、アメリカ経済は減速し、2001年にはアメリカを初め主要国の多くが景気後退となった。2001年9月の同時多発テロにより、世界同時不況のリスクが高まった。しかし、2002年には、様々な要因により、世界経済は 回復した。特に、2003年後半以降、世界経済は力強い回復となっている。

 しかし、アメリカのサブプライムローン問題による世界的金融危機により、世界経済は07年末から景気後退となっている。

1 2001年からの世界景気の後退

 2001年は、世界同時減速により、ほとんどの国が景気後退となった。ITバブル崩壊により、アメリカが2000年後半から景気減速となり、アメリカへの輸出を中心に各国の外需が減少した。これが、各国の景気後退の大きな要因となった。

2 世界景気の回復

 しかし、2003年後半からは、アメリカ経済にけん引され、世界経済は着実に回復した。アメリカ経済は、減税などのマクロ経済政策に支えられ、2003年後半には力強い景気回復となった。

 ヨーロッパも世界的な景気回復が波及し、景気回復局面に入った。アジアでは、中国が10%近い高成長を達成し、この効果が他のアジア諸国・地域にも波及している。

3 世界金融危機

 07年後半から、アメリカのサブプライムローン問題、すなわち低所得者の住宅ローンの返済の滞りが融資をした世界中の有力銀行の不良債権を発生させ、世界金融危機となった。

 そのため、欧米六中央銀行(表参照)は、08年10月8日協調して緊急利下げに踏み切ると発表した。同時株安など金融・資本市場の混乱を抑えるのが狙いだ。政策金利をそれぞれ0.5%下げた。中国など新興国も協調に加わり、欧米とあわせ10カ国・地域による異例の世界同時利下げとなった。日銀は協調利下げには加わらないが、市場への資金供給拡充などで協力する。

 協調利下げを発表した国・地域の六中銀は、表のとおりである。このほか、中国、アラブ首長国連邦 も同時間に利下げを発表した。香港、クウェートも、同日その前に発表した。米欧協調下げは同時テロが起きた01年9月以来だが、これだけ広範な中央銀行が一斉利下げに踏み切るのは前例がない。各国の政策新金利と下げ幅は表のとおりだ。主要中央銀行の政策金利の変更は通常0.25%刻みだが、各国とも異例の大幅利下げとなった。

 米欧六中銀と日銀は「金融危機の高まりで成長へのリスクが高まっており、グローバルな金融環境をある程度緩和することが正当化される」との共同声明を発表した。日銀は歓迎の声明を出し、「わが国では、政策金利の水準はきわめて低く、緩和的な金融環境が維持されている」として、切り下げに加わらなかった理由を説明した。日欧米の主要中銀は、9月に総額65兆円規模のドル資金を自国市場に供給する協調策を打ち出したが、短期金融市場では米欧金融機関が資金を調達しにくいマヒ状態が続いていた。アメリカでは金融機関の不良資産を買い取る金融安定家法が成立したが、金融機関の信用不安は収まっていない。

[8日に利下げを実施・発表した国・地域]
国・地域 政策金利
アメリカ 1.5(0.5)
ユーロ圏 3.75(0.5)
イギリス 4.5(0.5)
カナダ 2.5 (0.5)
スウェーデン 4.25(0.5)
スイス 2.5(0.5)

中国 6.93(0.27)
アラブ首長国連邦 1.5(0.5)

香港 2.5(1.0)
クウェート 4.5(1.25)
 (単位%、カッコ内は下げ幅)

4 公的資金注入でG7協調

 七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、08年10月10日公的資金による資本増強など5項目の異例の行動計画を発表し、閉幕した。主要金融機関の破綻回避へあらゆる手段を活用することで一致した。また、金融機関の流動性確保へ、必要な手段をとることでも一致した。金融危機の克服へ各国が協調して全力を挙げる姿勢を明確にした。

 行動計画は、冒頭で、例外的な行動が必要とし、各国が大胆な政策をためらわないことで合意した。アメリカの公的資金注入については「必要に応じ、公的資金、民間資金の双方により資本を増強することができるよう確保する」として、アメリカを含めて公的資金注入を検討することを確認した。中川財務相は、「日本も万一に備えて公的資金注入の検討を始めたと報告した」と述べた。

 市場の金融不安に対しては、金融システム危機に直結する重要な金融機関については「破綻を避けるため、断固たる措置をとり、あらゆる手段を活用する」と強調し、主要金融機関は破綻させない意思を明確にさせた。