インフォーメーション・サービ147:2009年度対策 経済事情Y(雇用情勢)


Y 雇用情勢

 要約:2002年からの回復局面では、企業のリストラが峠を越え、2003年始めから完全失業率は低下傾向にある。一方、企業の賃上げへの慎重姿勢やパートタイム労働者比率の上昇により、賃金は低下傾向であったが、05年には上昇に転じた。

 しかし、07年11月からの景気後退により、有効求人倍率は1倍を割り低下傾向にあり、賃金は低下し、完全失業率は昨年末に急上昇した。

1 雇用の状況 

(1) 企業の労働需要の増加のため、労働需給は引き締まっており、雇用者数も次第に増加している。03年以降、雇用者数は緩やかに増加しているが、05年度は前年比65万人増と増加ペースが高くなっている。依然として、医療、福祉、卸・小売り、情報通信業という第三次産業の雇用者数の伸びが大きいが、05年度はこれまで減少を続けてきた製造業も雇用者数が増加に転じた。

(2)そのため、有効求人倍率(ハローワークで職を求めている人一人当たりに何件の求人があるかを示す)は、06年10月時点で1.06倍と1992年以来の高水準である。正規雇用者の倍率は0.6倍程度であるが、パートタイマーの倍率は2倍を超えた。

(3)2005年に入ってからは、正規雇用者も前年比で増加に転じており、これまでの正規雇用の減少とパートタイマー(非正規雇用者)の増加という動きに対して変化が見られる。国内全体の雇用者数に占めるパートなどの非正規雇用の比率は、90年代からほぼ一貫して上昇してし、07年には33.5%にまで高まったが、今後はこれが頭打ちになるとの見方も出てきた。

(4)厚生労働省によると、08年12月の有効求人倍率は0.7倍と前月を0.3ポイント下回った。同倍率が一倍割れした都道府県は、東京、愛知、香川を除く44にのぼった。正規社員に限った有効求人倍率は、前月比0.03ポイント低下の0.47倍となり過去最低を更新した。 景気の先行指標である新規求人数は、前年同月比12%減だ。医療・福祉分野などで前年同月比プラスに転じたが、製造業は43.7%減とマイナス幅を拡大した。

 厚生労働省は08年12月も「現下の雇用情勢は厳しさを増している」と2ヶ月連続で雇用情勢に関する基調判断を下方修正した。

2 パートタイム労働者比率の増加

 パートタイム労働者比率は、上昇しており、92年に13.8%であったが、2007年には33.5%に上昇している。

 上昇の理由

(1) 一般の労働者に比べ、人件費が半分程度である。

(2) 特定時間の労働投入が可能であることである。

(3) 景気変動に応じた労働投入の調整が可能であることである。

3 現金給与総額の変化

(1)98年に戦後初めて現金給与総額が減少した。これは、所定外給与(残業手当)や特別給与(ボーナス)が大幅に減少したためである。そして、パートタイム労働者の増加も平均給与の低下に寄与している。

(2)現金給与総額は、98年〜04年までマイナスであった。しかし、05年に入り新卒採用の増加とともにフルタイム労働者が7年ぶりに前年比増加に転じ、賃金にプラスの影響を与え、定期給与やボーナスも増加した。

(3)07年末からの世界的景気後退により、雇用状況は悪化し、07年度の現金給与総額は前年比で0.3%減少した。

 4 完全失業率の変化

(1)2003年からの完全失業率の低下

 完全失業率(15歳以上の働く意思のある人のうち、職についていない人の割合を示す指標)は、91年以降長期的に上昇傾向にあり、特に98年以降は急上昇しており、2002年は5.4%であった。完全失業者数も、2002年は359万人であった。自発的失業者も多かったが、リストラによる非自発的失業者がそれ以上に増加していた。

 しかし、2003年初めから完全失業率は低下し、失業率は最高の5.5%から07年7月の3.6%まで低下し、完全失業者も大幅に減少した。

 雇用の伸びが低い中で、完全失業率が低下傾向にある要因としては、次の要因 が挙げられる。

a.景気回復の中で、企業のリストラがピークを過ぎ、新たな失業者が減少して いる。

b.非労働者である主婦等が、就職しようとして、非労状態から失業者へ移行する人数が減少している。

(2)08年12月失業率4.3%へ上昇

 世界的な景気後退で、国内の生産活動や雇用情勢の悪化が加速している。総務省によると、08年12月の完全失業率は4.3%と前月比0.3%悪化した。企業の減産や工場閉鎖などが相次ぎ、非正規労働者を中心に職を失う人が増えている。物価の上昇には歯止めがかかってきたが、デフレ懸念も生じている。

 企業のリストラによる失業が急増し、雇用削減の動きが非正規社員から正社員へと波及してきている。

 完全失業者は、前年同月比39万人増え、270万人となった。また、総務省が発表した08年平均の完全失業率は、前年より0.2ポイント高い4.0%と6年ぶりに悪化した。

5 フリーターとニート

 2005年の成人式を迎える若者は、昨年より2万人少ない150万人で、総人口に占める割合は1.18%で、1968年以降では2番目に低い。少子高齢化が進み人口減少社会に向かう日本の懸念事項が、「ニート」に象徴される社会参加意欲に乏しい若い世代が急増している現象である。

 学校に行かず、働かず、職業訓練にも参加しない無業者を意味する15〜34歳のニート層は、2002年で85万人にのぼる。また、正規の就職をしないでアルバイトを繰り返すフリーターは、1980年代の後半に登場したが、2005年現在201万人に上るという。このような状況は、若者が将来の夢を描けないだけでなく、税収や社会保障制度などの国の活力を脅かす危うい状況である。

 ニートで突出しているのは、学卒後の19歳と23歳の層である。希望する就職先などが見つからず、そのまま社会への参加意欲を低下させてしまうケースが少なくないと見られる。夢を抱いた若者が社会参加へ挑戦し挫折した場合、日本は再挑戦の仕組みが少ない社会といわれる。職業教育の再構築とあわせて、失敗を乗り越えてやり直しができる仕組みの構築が不可欠である。