インフォーメーション・サービ144:2009年度対策 経済事情W(我が国の国際収支)


W 我が国の国際収支

 要約:2002〜2004年には、円安や世界景気の拡大等により、経常収支黒字は増加し、特に、2003年と2004年は、2年連続過去最大の黒字となった。2005年は、原油価格高騰による輸入増のため経常収支黒字は若干減少した。2006,07年は貿易収支の伸びや所得収支の伸びにより、経常収支黒字は拡大した。しかし、2008年は、世界景気の後退による貿易収支黒字の急減のため、経常収支黒字は大幅に減少した。

 資本収支は、恒常的に赤字であるが、2003年には、海外からの株式投資が急増し、資本収支は34年ぶりに黒字となり、2004年も同様に黒字となった。2005年は、アメリカの金利上昇のため海外への債券投資が急増し、再び大幅な赤字となった。05年以降も、資本収支の大幅な赤字が続いている。

1 最近の経常収支黒字の状況

(1)貿易立国から投資立国へ

 2005年の経常収支黒字は、前年比3.1%減の18兆479億円の黒字で、4年ぶりに黒字が減少した。主に、貿易収支黒字の減少による。輸出入とも増加したが、原油価格の高騰で輸入の伸びが輸出の伸びを大幅に上回り、貿易収支は同25.5%減の10兆3,502億円の黒字で、4年ぶりに減少した。

 一方、所得収支黒字は、同22.5%増の11兆3,595億円で、貿易収支黒字を初めて上回った。日本の経済構造が、輸出に頼る貿易立国から海外投資でも収益を得る投資立国へ変化していることが明らかとなったといえる。所得収支黒字のうち、約8割は外国債券などの証券投資である。金利が高い欧米へ積極的な証券投資を続けたためである。そして、約2割が経営目的をもった直接投資による収益である。

(2)08年貿易黒字大幅減少

 財務省の2008年の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出マイナス輸入の貿易収支の黒字額は、前年比67.3%減の2兆1,575億円と急減した。世界的な景気減速で、自動車などの主要品目の輸出に急ブレーキがかかったことが背景にある。外需頼みの成長の道筋が見えなくなっている。

 08年の輸出額は前年比3.4%減の81兆492億円で、輸出が減少するのは7年ぶりだ。地域別には、アメリカ向けが15.8%減と過去最大の下落率を記録した。欧州連合(EU)向けも7.8%減少し、アジア向けの1.0%減少した。08年の輸入額は原油など資源価格が上昇したのを受け、前年比7.9%増の78兆8,917億円膨らんだ。

 輸出環境は厳しさを増している。併せて発表された08年12月の貿易収支は、3,207億円の赤字だ。輸入額は原油価格の下落で前年同月比21.5%減少したが、輸出額は35.0%減で、比較可能な80年以来で最大の下落率だ。赤字は3ヶ月連続で、拡大傾向となっている。

(3)08年通年の経常収支34%減

 (1)2005年の輸出入合計の上位10カ国を見ると、7ヶ国はアジア諸国である。これは、90年代に中国、NIEs諸国(韓国、台湾、シンガポール)、ASEAN諸国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど)が経済成長を遂げ、これらの国々との貿易が盛んになったためである。

(2) 特に、中国からの輸入が急増しており、2002年からはアメリカを超え第一位となり、2005年の中国の輸入シェアは、21.0%である。中国向け輸出も、アメリカに次ぎ第二位である。

(3)中国の輸出入額は増加が著しく、2004年には対中国の輸出と輸入を合わせた貿易額(香港を含む)は22兆1,999億円となり、アメリカを抜き日本の最大の貿易相手国となった。05年も同様である。日本企業が賃金などコストが安い中国に生産拠点を移し、日中の国際分業化が進んだことが大きな要因である。

2 貿易相手国

(1)2005年の輸出入合計の上位10カ国を見ると、7ヶ国はアジア諸国である。これは、90年代に中国、NIEs諸国(韓国、台湾、シンガポール)、ASEAN諸国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど)が経済成長を遂げ、これらの国々との貿易が盛んになったためである。

(2)特に、中国からの輸入が急増しており、2002年からはアメリカを超え第一位となり、2005年の中国の輸入シェアは、21.0%である。中国向け輸出も、アメリカに次ぎ第二位である。

(3)中国の輸出入額は増加が著しく、2004年には対中国の輸出と輸入を合わせた貿易額(香港を含む)は22兆1,999億円となり、アメリカを抜き日本の最大の貿易相手国となった。05年も同様である。日本企業が賃金などコストが安い中国に生産拠点を移し、日中の国際分業化が進んだことが大きな要因である。

3 我が国の資本収支

(1) 経常収支黒字が拡大すると、資本の流出は増え、資本収支赤字は増加する。海 外との貿易で得た資金を、海外に投資しているのである。

(2)2003年の資本収支は、経常収支黒字が増加したにもかかわらず、8兆1,320億円の黒字(流入超過)であった。資本収支が黒字であったのは34年振りであり、海外からの我が国への株式投資(証券投資に含まれる)が、急増したことが主な要因であった。

 2004年も、資本収支は1兆4,915億円の黒字で、前年に続き黒字とな った。前年と同様に、わが国への株式投資などによる投資収支の1兆9,882億円の黒字が主な要因であった。

(3)2005年の資本収支は、一転して13兆5,870億円の大幅な赤字であった。海外からの株式投資は増加したが、アメリカの金利上昇のために海外への債券投資などが急増したためである。

(4)2006〜08年も同様であり、08年の資本収支の赤字は19兆5,560億円であった。