インフォーメーション・サービ143:2009年度対策 経済事情V(企業部門)
V 企業部門
要約:2002年からの景気回復により、鉱工業生産指数は2002年後半から前年比プラスの伸びに転じた。2003〜2007年度の上場企業の企業収益も5年連続の増収増益となった。企業設備投資も2003年第二・四半期から前年比プラスの伸びに転じ、2003~2007年は6%前後の高い伸び率であった。この背景には、雇用・設備・債務の3つの過剰問題を解消した企業の体質改善があった。しかし、08年度は、07年11月からの景気後退により、設備投資は減少している。
大型倒産や金融機関の貸し渋りなどにより、2000年の倒産企業の負債総額は戦後最悪となり、2001年の負債総額もそれに次いだ。2002〜2007年の負債総額は、大幅に減少したが、公的支援が倒産を先延ばししている側面も大きい。しかし、景気後退により、2008年の倒産企業の負債総額は前年比2.1倍増加した。
1 設備投資の動向
(1)実質民間企業設備投資は、景気拡大期には増加し、景気後退期には減少する傾向にある。
(2)2001年からの景気後退により、2001年の実質民間企業設備投資は、前年の高い伸びから前年度比1.3%増にとどまった。そして、2002年には、前年の景気後退の影響で、実質民間企業設備投資は同5.3%減であった。
(3)しかし、2003年は、後半に景気回復が確かなものとなってきたため、実質民間設備投資は同5.9%の高い伸びとなった。そして、2004年も同6.3%、2005年も同5.8%の高い伸びであった。そして、06年も同7.9%の大変高い伸びである。好調な企業業績を背景に、設備投資の高い伸びが継続したのであった。
(4)07年11月からの景気後退により、企業は設備投資を抑制している。日本経済新聞社がまとめた08年度の設備投資動向調査(1,627社)で、全産業の設備投資額は、約29兆6,615億円で、当初計画比で、1.8%減少した。世界景気の急速な冷え込みで、自動車や電機などを中心に設備投資の削減が行われている。
2 上場企業21%減益
上場企業の業績悪化が一段と鮮明になってきた。日本経済新聞社が08年4〜9月期決算を集計したところ、連結経常利益は前年同期比21%減った。世界景気の減速、急激な円高、原燃料高が企業の重しとなった。下期は減益幅がさらに広がりそうで、25%減益になる見通しだ。09年3月期通期では、23%減益が見込まれ、02年3月期以来7期ぶりの減益が確実だ。
3 企業倒産の変化
(1) 倒産企業(負債1千万円以上)の負債総額は2001年から、倒産件数は 02年から減少を続けている。
(2)01年以降倒産の減少は顕著であるが、大手銀行の不良債権処理は峠を越え、倒産はバブル処理型から本業不振による構造問題へ移行しているといえる。
(3)倒産の減少は景気回復も一因であるが、政府が中小企業向け金融支援を充実させた影響も大きく、延命策により不振企業が残存している側面もあることに注意しなければならない。
(4)東京商工リサーチによる08年の全国企業倒産状況によると、負債総額1千万円以上の倒産は、前年比11%増の1万5,646件と5年ぶりの高水準となった。上場企業の倒産は、前年比5.5倍の33社で戦 後最多であった。建設・不動産関連の企業を中心に、行き詰まる企業が増加した。
負債総額は、前年比2.1倍の12兆2,900億円と6年ぶりの規模だった。負債額が最も大きかったのは、リーマン・ブラザーズの日本法人で3兆4千億円だ。関連3社を含めると約4兆7,000億円と全体の4割を占めたが、この4社を除いても32%増えた。
倒産全体を原因別に見ると、最も多いのが販売不振で11.5%増の1万196件だ。運転資金の欠乏も33.7%増の994件で98年以降で最多となった。金融機関の貸し渋りで、倒産に追い込まれる企業が急増している。
倒産した企業の正社員数は、前年比24%増の15万2,574人と5年ぶりに15万人を超 えた。
今年に入っても、既に2社の上場企業が倒産するなど、倒産の増加傾向は続いている。中小企業向け 融資の緊急保証制度などの効果で、今年前半の倒産件数はやや落ち着くとみられるが、業績回復が見込めなければ年後半には再び増勢に転じると見られる。