インフォーメーション・サービ142:2009年度対策 経済事情U


U 家計支出

 要約: 2003年秋から、景気回復により雇用環境が改善し個人消費は緩やかな増加を続けている。また、高齢化の進展もサービス消費の増加に寄与している。しかし、07年11月からの景気後退入りにより、消費は横ばいとなり、08年秋からは消費は腰折れを示し始めた。

 住宅建設は、所得・雇用環境の改善や低水準の金利により、03年から堅調に増加し、05年後半からは年率換算で120万戸台が定着した。しかし、改正建築基準法や景気後退入りにより、07年半ばから住宅着工は低迷している。

1 個人消費の動向

景気後退下で、個人消費は、2001年度は3.4%減と急減し、景気後退の大きな要因となった。景気回復に転じた2002年度以降も、個人消費は、低迷していた。 しかし、2003年秋以降、個人消費は明らかな増加となっている。これは、2003年からの雇用リストラの一巡により、完全失業率が低下し消費者マインドが改善したことや、家計所得が03年後半に下げ止まり05年に持ち直してきたことが主な要因である。

 07年11月から景気後退入りしたが、08年末から景気は急激に悪化し、個人消費が腰折れする懸念が出てきた。政府は1月の月例経済報告で、個人消費の判断を下方修正し、約7年ぶりに「弱含んでいる」との表現を採用した。消費者心理を示す消費者態度指数は、12月に前月比2.2ポイント低下の26.2と過去最低を3ヶ月続けて更新した。先行きも悲観的な見方が強く、景気は回復の兆しすら見つけにくい状況だ。

 政府は企業部門の悪化が目立ち始めた08年以降でも「個人消費は何とか横ばいで踏ん張っている」としてきた。ガソリンの値上がりは消費者心理を冷やしたが、北京五輪でデジタル家電などの需要は増え、消費は昨夏ごろまでは横ばい圏内にあった。

 しかし、昨年末までの指標は、消費の腰折れを示し始めた。不要不急の消費を絞る動きは鮮明で、12月の新車販売台数は前年同月比22.3%減となった。全国百貨店売上高も既存店ベースで9.4%減り、年末商戦は不発に終わった。

2 消費増加による貯蓄率低下

 家計貯蓄率は、1997年度に11.5%となった後、7年連続で低下し、04年度には2.7%であった。可処分所得が97年度をピークに減少を続け、一方で、消費は緩やかに増加しているためである。特に、今回の景気回復の02年度以降、横ばい程度に留まる家計所得の下で、消費支出が回復していることが、貯蓄率低下となっている。

 最近の貯蓄率低下は、高齢者世帯が増加していることも反映していると見られる。一般に、若年のときは貯蓄を積み増し、高齢期には貯蓄を取り崩すと見られ、人口の高齢化は貯蓄率を低下(消費性向を上昇)させる方向に影響を与えると見られる。

3 住宅建設の推移

(1)2001〜2002年の新設住宅着工戸数は、減少に転じた。税額控除額が最高50万円に縮小されたことや、景気後退感が強まるなか、住宅購入に慎重な姿勢が強まったことも大きな要因である。

(2)2003年は、住宅ローン減税の延長(期限の2003年末から2008年末への延長)が決まっていない段階での駆け込み需要や住宅ローン金利の先高観などにより、前年比0.8%増の約116万戸であった。

 2004年も、景気回復を反映し、118万9,049戸と前年比2.5%増加した。

(3)05年の住宅着工戸数は124.8万戸と、97年度以来の高水準となり、06年もさらに増加した。3年連続で増加した。さらに、貸家と分譲マンションが高い伸びとなった。

 貸家や分譲マンションが高い伸びを示しているのは、所得環境の改善や低金利により、住宅取得意欲や貸家への投資意欲が向上しているためである。さらに、都市部の継続的地価下落により、利便性の高い都市部の物件の需要が増加したことや、団塊ジュニア層が一次取得年齢になってきているためもあると考えられる。

 以上のように、住宅着工は好調であり、住宅着工戸数は年率換算で05年度後半から120万戸台がほぼ定着している。日銀のゼロ金利解除により、住宅ローンの金利先高観が強まっている現状では、個人に前倒しでマイホーム購入を促す駆け込み需要が見込まれ、住宅着工は堅調に推移するとの見方が多く、長期の景気回復の支え役となった。

(4) 07年後半に改正建築基準法施行の影響で、住宅着工戸数は大きく落ち込み、これもGDP成長率を押し下げる要因となった。いわゆる、耐震偽装問題の再発を防止するため、建築確認・検査の厳格化を柱とする改正が行われた。しかし、改正内容の周知が必ずしも十分ではなかったため、改正法の施行後、建築確認手続きの現場が混乱し、建築着工が大幅に減少した。改正法が施行された後の7月から減少し、9月には年率換算で73万個、前年同月比でー44%まで減少した。しかし、住宅着工は08年1月には改正法施工前の水準となった。一方で、景気後退入りのため、08年は年率換算で100万台前後の水準で推移し、低迷している。