インフォーメーション・サービ140:良質かつ頻出問題の研究 第十二弾


 過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。


[GDP] GDP(国内総生産)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか(平成18年度 国家U種)。


1 GDPは、国内のあらゆる生産高(売上高)を各種統計から推計し、これらを合計したものである。例えば、農家が小麦を生産してこれを1億円で製造業者に販売し、製造業者がこれを材料にパンを製造して3億円で消費者に販売すれば、これらの取引でのGDPは4億円となる。

2 GDPは「国内」での経済活動を示すものであるのに対し、GNI(国民総所得)は「国民」の経済活動を示すものである。GDPでは消費、投資、政府支出等の国内需要が集計され、輸出、輸入は考慮されないのに対して、GNIはGDPに輸出を加え、輸入を控除したものとして算出される。

3 GDPは原則として、市場でのあらゆる取引を対象とするものであるが、中古品の売買は新たな富の増加ではないから、仲介手数料も含めてGDPには計上されない。一方、株式会社が新規に株式を発行したような場合にはその株式の時価総額がGDPに計上される。

4 GDPに対してNDP(国内純生産)という概念がある。市場で取引される価格には間接税を含み補助金が控除されているので、GDPが、間接税を含み補助金を除いた価格で推計した総生産高であるのに対し、NDPはGDPに補助金を加えて間接税を控除したものとして推計される。

5 市場取引のない活動は原則としてGDPには計上されない。例えば、家の掃除を業者に有償で頼めばその取引はGDPに計上されるが、家族の誰かが無償で掃除をしてもGDPには関係しない。ただし、持ち家については、同様の借家に住んでいるものとして計算上の家賃をGDPに計上している。

[解説]

1.農家の生産に中間財が投入されていないならば、農家の粗付加価値は1億円である。製造業者の粗付加価値は、3億円−1億円=2億円である。これらの粗付加価値総額=GDPは、1億円+2億円=3億円である。

2.GDPの支出面である国内総支出は、輸出−輸入の項も含まれる。GDPには、輸出品も含まれ、輸入品は控除され含まれない。そして、GNIとGDPの関係は、次式で示される。

GNI=GDP+海外からの純要素所得

3.中古品の売買において、中古品自体は生産された年のGDPには含まれ、再びGDPには計上されない。ただ、この取引に伴う仲介手数料は、サービスに伴う粗付加価値であるので、GDPに計上される。そして、新規に発行された株式は、粗付加価値が生産されておらず、GDPに計上されない。

4.GDPから固定資本減耗を控除したものが、NDPである。

5.正しい。 [補足] GDP、GNIの問題に関しては、次の各式を頭に入れておこう。

1 国内総生産(GDP)=国内総支出=民間最終消費支出+政府最終消費支出+国内総固定資本形成+在庫品増加+輸出−輸入

2 国内純生産(NDP)=GDP−固定資本減耗

3 要素費用表示の国内所得(DI)=NDP−間接税+補助金

4 国民総所得(GNI)=GDP+海外からの要素所得−海外への要素所得
          =GDP+(海外からの要素所得−海外への要素所得)
          =GDP+海外からの純要素所得

5 GNI=国民総支出=民間最終消費支出+政府最終消費支出+国内総固定資本形成
         +在庫品増加+輸出−輸入+海外からの要素所得−海外への要素所得
         =国内総支出+海外からの要素所得−海外への要素所得
         =国内総支出+海外からの純要素所得

6 国民純所得(NNI)=GNI−固定資本減耗

7 要素費用表示の国民所得(NI)=NNI−間接税+補助金

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