インフォーメーション・サービ139:良質かつ頻出問題の研究 第十一弾
過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。
[IS−LM分析] IS−LM曲線が次のように示される場合、@〜Eのうち、A,B,Cの状態に関する説明として妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか(平成18年度国家U種)。
@ Aの状態では、貨幣需要は利子率に対して無限に弾力的である。 A Aの状態では、貨幣需要は利子率に対して完全に非弾力的である。 B Bの状態では、財市場、貨幣市場ともに需要超過状態にある。 C Bの状態では、財市場、貨幣市場ともに供給超過状態にある。 D Cの状態では、投資は利子率に対して無限に弾力的である。 E Cの状態では、投資は利子率に対して完全に非弾力的である。
1 @、B、D 2 @、B、E 3 @、C、E 4 A、B、D 5 A、C、D [解説] @〜Eの正誤は、次のとおりである。
@ LM曲線の水平部分は、流動性のわなの部分であり、貨幣需要は利子率に対して無限に
弾力的である。よって、正しい。
A 貨幣需要が利子率に対して完全に非弾力的であるのは、LM曲線が垂直の場合である。
よって、誤りである。
B〜C 両曲線ともその上方部分の領域は、それぞれの市場で供給超過状態にある。よって、Bは誤りで、Cは正しい。
D〜E Cの状態では、投資が利子率の変化に対して反応せず、国民所得が一定である。つまり、投資は利子率に対して完全に非弾力的である。よって、Dは誤りであり、Eは正しい。
したがって、3が正答である。
[補足]
IS曲線上は財市場の均衡を示しており、IS曲線の上方の領域は財市場の供給超過状態であり、下方の領域は財市場の需要超過状態にある。そして、投資が利子率に対して反応しないほど、つまり非弾力的であるほど、IS曲線は垂直に近くなる。
LM曲線上は貨幣市場の均衡を示しており、LM曲線の上方の領域は貨幣市場の供給超過状態にあり、下方の領域は貨幣市場の需要超過状態にある。LM曲線の水平部分は流動性のわなの部分を反映し、水平となっている。そこでは、利子率は経験的にも超低位であり、貨幣需要は利子率に対して無限に弾力的である。一方、利子率がある程度以上にかなり高くなると、資産貨幣需要L2がゼロとなり、貨幣需要は利子率に対して完全に非弾力的となり、LM曲線は垂直となる。