インフォーメーション・サービ138:良質かつ頻出問題の研究 第十弾



 過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。

[金融理論] ある市中銀行が8,000万円の預金を受け入れた場合、この預金をもとに市中銀行全体で派生的に信用創造される預金額として、正しいのはどれか。ただし、すべての市中銀行の預金準備率は20%とし、預金は途中で市中銀行以外に漏れることはないものする(平成19年度地方上級)。

  1,600万円
  9,600万円
1億4,400万円
3億2,000万円
4億円

[解説] 信用創造の問題である。当問題では、市中銀行により貸し付けられた貨幣は、すべて市中銀行に預金され、(明示はされていないが)準備預金以外の預金はすべて貸し付けられるという仮定が置かれている。この場合、最初の預金(当問題では8,000万円)を本源的預金Rとし、預金準備率をrとすると、預金総額Dは、

D=R/r

となる。R=8,000万円、r=0.2を代入すると、

D=8,000万円/0.2=4億円

となる。

 派生的に信用創造される預金額、すなわち、信用創造額は、最初の預金以外の預金額であり、最初の預金を含まない。よって、

信用創造額=4億円−8,000万円=3億2,000万円

となる。正答は、肢4である。

[補足] 市中銀行により貸し付けられた貨幣は、すべて銀行へ還流し預金され、準備預金以外の貨幣はすべて貸し付けられるという仮定の下で、信用創造に関する公式は、次のものがある。ただし、本源的預金をR、預金準備率をrとする。

預金総額=R/r

貸付総額={(1−r)/r}・R

準備預金総額=R

信用創造額=(R/r)−R

 結果的に、貸付総額と信用創造額は同額となる。

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