インフォーメーション・サービ137:良質かつ頻出問題の研究 第九弾
過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。
[国民所得の決定] マクロ経済モデルが次式で示されているとき、政府支出乗数として正しいのはどれか。ただし、民間投資と政府支出は外生的に決定されるものとする(平成19年度地方上級)。
Y=C+I+G Y:国民所得(GDP) C:民間消費支出 C=20+0.8(Y−T) I:民間投資支出 G:政府移出 T:租税 T=30+0.25Y
1 1.5 2 2.5 3 4.0 4 5.0 5 10.0
[解説] 政府部門を導入した比例所得税のモデルである。第二式と第三式を、需給均衡式である第一式に代入する。
Y=20+0.8{Y−(30+0.25Y)}+I+G
Yについて整理して、
(1−0.8+0.8×0.25)Y=20−24+I+GY=(1/0.4)・(I+G−4)
Y=2.5(I+G−4)
となる。よって、次式が成立する。
凾x=2.5凾f
つまり、政府支出Gが1単位増加すると、国民所得は2.5増えるのである。よって、2.5が政府支出乗数である。正答は、肢2である。
[補足] cを限界消費性向、tを限界税率とすると、政府支出乗数は、次式で示される。
政府支出乗数=1/(1−c+ct)
当問題は、この公式に、c=0.8、t=0.25を代入して求めてもよい。
限界税率がなく、定額税のマクロ経済モデルの場合は、政府支出乗数は、次式で示され る。この相違を認識していただきたい。
政府支出乗数=1/(1−c)