インフォーメーション・サービ134:良質かつ頻出問題の研究 第六弾



 過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。

[貿易と関税] 下図のように、ある小国におけるZ財の需要曲線と供給曲線とがあり、自由貿易におけるZ財の国際価格がOPoである場合、PoP1の輸入関税が課されたときの輸入量と経済厚生の減少分との組み合わせとして、正しいのはどれか。ただし、輸入関税による収入は国民に分配されるものとする(平成19年地方上級)。

図1

輸入量 経済厚生の減少分
OX1 P1PoDB+ABC
OX1 P1PoDB+BEFC
OX1 P1PoGC
XoX1 BDE+CFG  
XoX1 BEFC

[解説] 自由貿易下では、国際価格がOPoであるので、国内価格がこれ以上では、輸入業者がもっと安い輸入品を輸入するため、国内生産者のZ財は売れず、価格はOPoまで低下し、価格OPoで消費されることになる。逆に、国内価格がOPo未満では輸入品が輸入されず、需要量が満たされず価格が上昇し、やがて価格OPoで輸入が行われ、需要量が満たされ消費されることになる。よって、国内価格も国際価格と同じOPoとなる。

 国際価格OPoでは、国内生産者の生産量はPoDであり、輸入量はDGとなる。このとき、消費者余剰は三角形PoGHとなり、生産者余剰は三角形PoDIとなる。よって、自由貿易下の経済厚生である余剰は、次のとおりである。

 余剰=三角形PoGH+三角形PoDI・・・(1)

 さて、関税がPoP1だけ課されると、輸入品の価格はOP1となる。上記と同様の理由により、国内価格もOP1となる。この場合、国内生産者の生産量はOXoで、輸入量はXoX1なる。それゆえ、正答は肢4か5である。

 輸入量は変化するが、この国は小国であるので、国際価格に影響を与えない。 このとき、消費者余剰は三角形P1CHであり、生産者余剰は三角形P1BIである。そして、関税収入はPoP1×XoX1=長方形BCFEである。関税収入は国民に分配されるので、余剰に含める。よって、この関税が課されたときの経済厚生である余剰は、次のとおりである。

 余剰=三角形P1CH+三角形P1BI+長方形BCFE・・・(2)

 自由貿易下に比べ、関税が課されたときどれだけ余剰が減少するかは、(2)式から(1)式を引くことにより求められる。すなわち、三角形BDE+三角形CFGだけ減少する。

 よって、答えは、肢4である。

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