インフォーメーション・サービ133:良質かつ頻出問題の研究 第五弾
過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。
[外部不経済](平成17年度地方上級)
次の文は、外部不経済が生じている市場の余剰に関する記述であるが、文中のア〜エに該当する語句の組合せとして、妥当なものはどれか。
下の図は、縦軸に価格、横軸に数量をとり、右下がりの需要曲線、右上がりの社会的限界費用曲線と私的限界費用曲線を描いたものである。
この図において、外部不経済は市場を( ア )ので、市場メカニズムに任せると均衡数量は社会的な取引量を( イ )。そこで、政府が社会的最適な取引量を実現するために、( ウ )だけ課税すると、社会的余剰の大きさは( エ )の面積だけ大きくなる。
ア | イ | ウ | エ | |
1 | 経由する | 上回る | FC | 四角形PePfFC |
2 | 経由する | 上回る | HE | 四角形PePfFC |
3 | 経由する | 下回る | HE | 三角形HEF |
4 | 経由しない | 上回る | HE | 三角形HEF |
5 | 経由しない | 下回る | FC | 四角形PePfFC |
[解説] 公害などの外部不経済による費用を考慮した限界費用曲線が、社会的限界費用曲線である。それを考慮しない限界費用曲線が、私的限界費用曲線である。したがって、図の2つの右上がりの曲線のうち、上方に位置する曲線が社会的限界費用曲線であり、下方にある曲線が私的限界費用曲線である。よって、前者は外部不経済を考慮した供給曲線といえ、後者は外部不経済を考慮しない供給曲線である。
外部不経済による費用などは、企業は費用として算入しない。したがって、外部不経済は、市場を経由しないのである。
そのため、企業は私的限界費用曲線を供給曲線として行動するため、市場メカニズムに任せるとE点の生産量となる。しかし、余剰は、社会的に要している費用で測定する。それゆえ、社会的最適な取引量は、F点の取引量となる。ここで、余剰最大化が達成されているのである。市場に任せたE点の取引量では、社会的最適量を上回るのである。
政府が社会的最適量を実現するためには、単位あたりHEだけ課税することにより、私的限界費用曲線をシフトさせ社会的限界費用曲線に一致させる必要がある。一致させると取引量は社会的最適量となるが、どれだけ、社会的余剰が増加するのだろうか。
課税前に、市場に任せた場合の余剰は、E点の取引量となるため、三角形PdPbF−三角形HEFとなる。課税により、余剰は三角形PdPbFと余剰最大化となる。
したがって、課税により、余剰は三角形HEFだけ大きくなる。
以上により、正答は、肢4である。
[補足] 外部不経済も考慮した、単位あたりの余剰、すなわち、限界余剰が社会的にプラスであるのは、点Fの生産量までである。点Fまでの限界余剰の合計、すなわち、三角形PdPbFが最大余剰となる。それゆえ、点Fの取引量が、社会的最適となる。
しかし、点Fの生産量を超えると、社会的に限界余剰はマイナスとなる。点Fを越えて生産すればするほど、余剰は減少していき、社会的最適な取引量から離れていく。
よって、課税により、点Fの取引量を実現させる必要がある。