インフォーメーション・サービ132:良質かつ頻出問題の研究 第四弾
過去に公務員試験で出題された問題の中で、その分野の理解に役立ち、今後の出題にも応用できると考えられる良質かつ頻出の問題の研究は、必須のものである。当欄では、このような視点から良質の問題を取り上げ、解説する。読者が、それぞれの分野、問題の理解に寄与して頂ければ幸いである。
[損益分岐点と操業停止点](平成19年度国家U種)
完全競争市場における、ある企業の総費用関数TC(x)が次のように与えられている。
TC(x)=x3−2x2+5x+8
ここでxは生産量を示す(x>0)。このとき、損益分岐点と操業停止点における価格の組み合わせとして正しいのはどれか。
損益分岐点の価格 操業停止点の価格 1 5 1 2 5 2 3 9 3 4 9 4 5 12 4
[解説] 上記の総費用関数では、8が固定費用となる。これを除いたものが、可変費用関数VC(x)となる。つまり、
VC(x)=x3−2x2+5x
よって、平均費用関数AVC(x)は、
AVC(x)=VC(x)/x=x2−2x+5
となる。この式は、次のように示せる。
AVC(x)=(x−1)2+4
つまり、AVCは、x=1で最低となり、その最低値は4となる。AVCの最低点は操業停止点であり、操業停止点の価格は4となる。よって、正答は肢4か5である。 損益分岐点は、平均費用の最低点である。上記の総費用関数のもとで、平均費用関数AC(x)、限界費用関数MC(x)は次式で示される。
AC(x)=TC(x)/x=x2−2x+5+8/xMC(x)=d(TC)/dx=3x2−4x+5
この両関数は、曲線にすると、損益分岐点で交わる。よって、そのときの生産量を求める。AC(x)=MC(x)より、
x2−2x+5+8/x=3x2−4x+52x2−2x−8/x=0
両辺にxをかけると、
2x3−2x2−8=0(x−2)(2x2+2x+4)=0
x>0であるので、x=2のときに、AC(x)=MC(x)となる。x=2を平均費用関数AC(x)に代入する。
AC(2)=22−2×2+5+8/2=9
9は、損益分岐点の高さであり、損益分岐点の価格でもある。
よって、正答は肢4である。
[補足] 平均費用関数、平均可変費用関数、限界費用関数をそれぞれ、縦軸に価格、横軸に生産量をとる図上に描くと、いずれもU字型であり、平均費用曲線、平均可変費用曲線の二者の最低点を、限界費用曲線が通過していくことに注意しなければならない。また、平均費用曲線の最低点が損益分岐点であり、可変費用曲線の最低点が操業停止点である。当問題を解くには、以上のことが理解されていなければならない。