インフォーメーション・サービ128:2009年度経済事情年頭所見
原山広之先生(明治大学行政研究所講師(1985〜2003年)) 2009年度経済事情年頭所見
2008年度末近くから、戦後有数の経済危機とも、100年に一度の経済危機とも言われる激動の経済情勢となっている。先進国は軒並み、四半期ベースでGDPがマイナス成長となり、失業率が上昇し、銀行の不良債権が増え、大手銀行への資本注入が行われている。このような未曾有の事態は、なぜもたらされたのであろうか。
やはり、07年末から問題となっていた、アメリカでの低所得者への住宅ローンであるサブプライムローン問題が発端といえよう。低所得者への住宅ローンであるため、当初は金利を低くし、ある期間が経つと金利が高くなるという条件でのローンであった。そして、このローンが設定された02年度当時は、住宅価格の上昇が継続している時期で、住宅バブルとも言われる時期であった。ローン利用者のなかには、住宅価格上昇も見込んでいたものもあったといえよう。
しかし、07年度末ごろから、このサブプライムローンの返済が滞り始めた。低所得者であるため、元来返済が困難となる可能性が高かったことや、住宅バブルの終焉と共に住宅価格が下落してきた。つまり、ローンで購入した住宅を売っても、返済が困難となってきた。そのため、この資金を提供していた金融機関、資金の供給源である債券保有者に、元本が返済されない状況となってきたのである。この可能性がある資金は、100兆円を超えるとも言われている。
従来から、アメリカは、過剰消費の国であり、住宅投資を始め投資の資金は、日欧の先進国を中心として、新興のBRICsなど世界中から供給されているという状況であった。この資金の出し手である各国の金融機関や投資家に、サブプライムローン向けの出資金が戻らなくなっているのである。このような事態は、金融機関の貸し出しの減少や、投資家の消極的な出資となり、各国の国民の消費を低迷させる要因となっているのである。
これに対する対策として、財政出動、中央銀行による政策金利の引き下げ、大手金融機関への資本注入、サブプラムローンに関連する証券や、連動して価格が低迷する証券を各国中央銀行が買い入れることなどが世界的に行われている。
今回の世界的景気後退は、アメリカが引き金となっており、やはりアメリカは世界経済の中心であることが再認識された。その意味で、世界経済の回復もアメリカ経済の回復が最重要事項であるといえる。80兆円ともいう財政出動、FRBのゼロ金利政策・量的緩和政策などは、アメリカ政府や金融当局による必至の経済立て直し策である。当面は、この政策効果を注視しよう。