インフォーメーション・サービ125:2008年度対策 経済事情 連載 第七回


「アメリカ経済」

要約:

 1991年4月からのアメリカの景気拡大は、約10年にわたり戦後最長の景気拡大であった。しかし、2000年後半から景気は減速し2001年3月から景気後退となった。世界経済に占める比率の高いアメリカの後退は、世界経済に大きな影響を及ぼしたのであった。

 しかし、2002年からは、アメリカの景気は回復基調となり、イラク情勢による緊迫化もあったが、2003年後半から2006年にかけ、力強い回復となった。しかし、2007年後半からのサブプライムローン問題が、景気動向に大きな影をもらしている。

1.1991年4月からの約10年の最長の景気拡大

近年は、IT関連製品が成長を押し上げた。また、民間投資と個人消費の伸びによるところも大きかった。

2.2000年後半からの景気減速と回復

(1)IT関連製品の需要の減退により、2000年後半からの減速は世界景気の減速を誘発するものであった。(2)2001年に入り、アメリカ経済は3四半期連続マイナス成長となり、10年ぶりの景気後退となった。2001年の実質GDP成長率は、0.8%と大きく落ち込んだ。そして、失業率も4.8%へと急上昇した。

(3)2001年9月の同時多発テロによりさらに落ち込んだ景気は、アフガニスタンの軍事行動が早く収束したこと、財政金融政策の効果、そして原油価格の安定などにより、2001年10〜12月期には早くも回復へと向かった。

(4)イラク情勢による緊迫化により、2003年前半まで回復力は弱まったが、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げや原油価格の下落、イラクの大規模戦争の終結により、2003年後半には、戦争などによる下押し圧力はほぼなくなった。5月からの減税が個人消費を伸ばし、設備投資、住宅投資も増加し、力強い回復となり、2003年の実質GDP成長率は3.0%となった。一方、失業率は2003年6月には6.3%まで上昇したが、景気回復を背景に、同年後半からは下落傾向にある。

(5)2004年は、前年の景気拡大が続き、実質GDP成長率は前年比4.2%増となり、99年の4.5%以来の5年ぶりの高い成長率であった。2005年に入っても堅調に成長を続け、3.5%の成長率であった。失業率が前年の5.5%から5.1%へ低下し、雇用・所得環境が良好であったこともあり、個人消費が3.6%増加し、景気拡大は続いている。 このような拡大を背景に、FRBは、04年6月から06年5月まで、16回連続の利上げを実施した。景気過熱やインフレを抑えるためであった。また、05年は原油価格が過去最高を更新する形で高止まりし、物価上昇への影響が懸念されたが、消費者物価の上昇は落ち着いており、景気への下押し圧力は限られたものとなっている。

(6)この景気拡大過程の中で、懸念されたのが住宅市場の過熱である。ITバブル崩壊時にも、住宅投資は拡大しており、02年以降一貫して増加してきた。それとともに、住宅価格も大幅に上昇し、04〜05年には二ケタの上昇率であった。しかし、金利の上昇により、05年半ば以降住宅価格上昇率の鈍化が見られ、住宅市場はピークを過ぎた兆しを見せている。

(7)2007年の成長率は、06年の2.9%成長から減速する見込みである。1〜3月期は、住宅建設の減少に加え、設備投資も弱い動きとなったため、前期比年率0.6%の成長となた。その後も住宅建設の減少が続いたが、設備投資の伸びが回復したことや、ドル安による輸出の増加など外需の寄与が大きかったことなどから、4〜6月期が同3.8%、7〜9月期には同4.9%と高い成長になった。しかし、サブプライムローン問題により,景気の下振れリスクが高まったとして、07年後半から政策金利の引き上げが行われ、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)金融引き締め政策へと転換した。、

3.財政収支の状況

(1)80年代に、アメリカの財政赤字は一貫して増加してきた。

(2)98年度には、景気拡大による税収の大幅増と政府支出抑制により、29年振りに約692億ドルの黒字に転じた。99〜2001年度も1,000億ドルを超える黒字が続き、特に、2000年度は約2,370億ドルの大幅な黒字であった。

(3)2001年6月に、ブッシュ大統領は、財政黒字を家計に還元する大型減税を決定した。また、9月の同時多発テロのための緊急歳出や国防費の膨張、航空業界への支援策、そして税収の減少もあり、2002年度には財政収支は1,578億ドルの赤字になった。97年度以来の財政赤字であった。

(4)2003年度の財政赤字は、当初800億ドルと見込まれていたが、イラク戦費の累増により、3,742億ドルに膨れ上がった。2004年度も、イラク戦争の出費により過去最大の4,123億ドル(GDP比3.6%)を超える財政赤字となった。しかし、景気拡大の持続による税収増により、04年2月時点での見通しである5,210億ドルをかなり下回った。05年度の財政赤字は、3,187億ドルと、税収増加のため、前年よりかなり減少した。

(5)2005〜07年度まで、3年連続で赤字幅は縮小した。07年度の財政収支は、前年度比854億ドルの大幅な赤字減の1628億ドルの赤字となった。予想を上回る税収の増加が赤字減に寄与した。歳入の増加を下回るものの、歳出についても拡大している。イラクの軍事費や、メディケアなどの社会保障費の増加が大きい。

4.経常収支赤字

(1)2001年は景気後退により減少したが、前年の2000年の経常収支赤字は4,447億ドルと過去最大であった。貿易赤字が主な要因で、輸入が輸出以上に増加したためである。輸入の増加は、好景気による。

(2)2002年〜2006年の経常収支赤字は、景気回復による輸入の増加により拡大し、05年までは4年連続で過去最大となった。2006年の経常収支は、8,115億ドルであった。経常収支赤字の約9割は、対中国、対日本などの貿易赤字が占める。輸出が伸び悩む一方で、過剰な個人消費や原油高で輸入が増えているためである。

(3)巨額の経常収支赤字は、世界からのアメリカ国債などの証券投資によりファイナンスされていて、その結果、長期金利は低水準で安定し、住宅投資や個人消費の伸びを支え、経済成長を支えている。もし、海外マネーの流入が止まれば、景気の減速は必至であり、財政赤字とともに経常収支赤字は減少させねばならない。

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